インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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ドイツ代表候補生の暴挙
デュノア女説が強くなって2日が経った。
「そ、それは本当ですの!?」
「う、ウソついてないでしょうね!?」
早めに教室に着いた俺は―――寝ようとして騒音に起こされた。
「本当だってば! この噂、学園中で持ちきりなのよ? 月末の学年別トーナメントで優勝したら織斑君と交際でき―――」
「俺がどうしたって?」
「「「きゃああっ!?」」」
一夏の乱入で女子たちが悲鳴をあげる。正直言ってうるさい。
「で、何の話だったんだ? 俺の名前が出ていたみたいだけど」
「う、うん? そうだっけ?」
「さ、さあ、どうだったかしら?」
凰とオルコットが取り乱しているみたいだが、また一波乱が起きそうだな。
「それにしても、このクラスって飽きないよなぁ。そんな眉唾もんを信じるなんて」
「え? 祐人は何か知っているのか?」
「ああ」
「だったら教えてくれ」
「今度の学年別―――」
「―――風宮君、ちょっといいかな?」
声がした方を見ると、そこには谷本をはじめとする女子軍団が揃っていた。
「? 何だ?」
俺は席から離れてそっちに行くと、女子の集団に囲まれた。教室の隅で女子に囲まれる男って―――傍から見たら羨ましいかもしれないが、正直怖いな。
「ちょっと、黙っててくれるかな? 本音を好きにしていいからさ」
「いや。地味にクラスメイトを売るのはどうかと。お前も嫌だよな、ほん……ね……」
俺はちょっと落胆した。何故なら裏切られていたからだ。――――チョコレートを口の周りに付けて。
俺はティッシュを出して口の周りを拭いてあげる。いい加減に俺から巣立って欲しいものだ。
そんなことを思いながら俺は本音の口の周りを拭くのだった。
■■■
「そういえば、この距離を一夏はしんどいと言っていたな」
ふと思い出していると、2人の気配を感知した。
「なぜこんなところで教師など!」
「やれやれ………」
どうやら、ボーデヴィッヒと織斑先生みたいだな。
「何度も言わせるな。私には私の役目がある。それだけだ」
「このような極東の地で何の役目があるというのですか!」
………一夏を守るため? もしくは弾性操縦者2名を守るためとか?
大体、ボーデヴィッヒを少し調べたら軍人で織斑先生の教え子って関係だけで、口出しする権利はないだろうに……。
「お願いです、教官。我がドイツで再びご指導を。ここではあなたの能力は半分も生かされません」
「ほう」
まぁ、操縦者としての能力はあまり発揮されていないだろうな。記憶がもう少し戻ってくれればISを造れるかもなのに。武器の方に気を取られてしまう。
「大体、この学園の生徒など教官が教えるにたる人間ではありません」
「なぜだ?」
「意識が甘く、危機感に疎く、ISをファッションかなにかと勘違いしている。そのような程度の低い者たちに教官が時間を―――」
―――プチンッ
「―――だが少なくとも、お前よりかは常識を持っているぞ。まぁ、少しばかり逸脱している部分もあるがな」
俺はつい口を挟んでしまった。
「貴様……」
「それとも何か? お前も自分だけがすごいとか思っているイカレ人間なのか?」
「貴様ァッ!!」
ボーデヴィッヒが飛びかかると同時に俺も構えようとすると、
「そこまでにしろ。そしてさっさと教室に戻れ」
織斑先生の言葉にまだボーデヴィッヒはまだ何か言おうとしていたが、睨まれて渋々教室に戻っていく。
「……風宮。お前は何者だ?」
「ISを動かせる特異な存在ですが。どこかおかしいですか?」
「いや……。とにかくお前も教室に戻れ」
「了解」
■■■
そして放課後になり、俺は第三アリーナに向かっていた。………本音を連れて。
「いい加減に俺から離れろ」
「い~や~」
何故か本音は俺にしがみついて離れようとしない。まるで犬と遊んで来いと言っているのに怖がって離れない子供みたいだ。
仕方なくそのまま予約しておいた第三アリーナに向かっていると、
「慌ただしいな」
「そうだね~」
ちょうどその隣を鷹月が通ろうとしたので肩を掴む。
「え? 何―――」
「悪い鷹月。一体何が起こっているんだ?」
「さっき聞いた話だけど、代表候補生が戦っているって―――」
「悪い」
鷹月をお姫様抱っこをすると同時に本音が背中に飛び乗り、俺たちは第三アリーナに向かった。
少し近いところでディアンルグのハイパーセンサーを起動して中で戦っている映像をカメラ越しに見ると、
「オルコットと凰、そしてボーデヴィッヒか。―――って、アイツら最終安全装置を外してやがる!?」
俺の声に2人の空気が変わった。
『最終安全装置』というのは基本的には外さない安全装置で、外すなら戦争をする時ぐらいだろう。それを今ここでやるってことは―――
「本当に、どこも腐ってるな………」
ピットにたどり着くと同時に俺は鷹月を降ろす。
「悪かったな。こんなところに連れてきて」
「ううん。こっちの方が見やすいし、それに風宮君は止めるんでしょう?」
「ああ。何があったか知らないが―――さすがにこれは不味いからな」
下手すればトーナメント出場停止もありえる。
だがタイミングもある。3人がちょうど離れたところに撃ち込まないと、
―――ドガァァァァンッ!!
何事かと思って音がしたフィールドの方に向くと、煙の中から凰とオルコットが現れた。
『無茶するわね、アンタ……』
『苦情は後で。けれど、これなら確実にダメージが―――』
オルコットが途中で言葉を切る。その理由は煙が晴れてほぼ無傷のボーデヴィッヒが宙に浮いていたからだ。
俺はすぐに3機のダメージを調べる。甲龍とブルー・ティアーズはダメージレベルB。それにもうそろそろCに行くのに対してボーデヴィッヒのシュバルツェア・レーゲンはダメージレベルA。それにほとんど無傷。
ちなみにダメージレベルとは、人間でいう怪我の具合だ。Aなら擦り傷、Bなら捻挫、C以上は重傷だ。
「終わりか? ならば―――!?」
俺は咄嗟に右腕を《迅光》ごと部分展開して撃った。それに反応したボーデヴィッヒは言葉を切り、俺の方を見る。
「何の真似だ?」
「普通の模擬戦ぐらいなら容認しようとは思ったが、最終安全装置を外しているんだ。それと、単なる仏心ってやつだ」
そう言うと同時に個人間秘匿通信で2人に通信を送る。
『お前ら、ここは引け』
『何言ってんのよ! こっちはまだ―――』
『2対1でその体たらくだろ。このまま続けていたら最悪の場合は学年別トーナメントに出れなくなるぞ』
そう伝えると、渋々だが2人は納得して下がろうとした―――が、
「ならば、今度は貴様を潰す」
「遠慮させてもらう」
「なら、あの時のように戦えないようにしてやる」
そう言ってレールカノンである場所に向けて撃った。
その場所は―――本音たちがいるAピットだった。
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