リュカ伝の外伝
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ディスカウント
(グランバニア王都:南西地区・魔道車運転免許取得学校)
ジージョSIDE
「はい、お疲れ様です。これにて第2段階の“教習”は終了です。後は“学科”を終わらせて、第2段階の“試験”に合格すれば、ジージョさんも免許を取得出来ますね」
「うん。ありがとうライデン……待ち遠しいね」
俺の名前は『ジージョ・クラウスター』……実家はグランバニア王国より東にある孤島で、独立貴族をしている『クラウスター伯爵』だ。
領民が50人にも満たない小さな貴族……
だから皆とは家族と言っても差し支えない。
互いに幼い頃からの知り合い……
先程俺に免許の指導をして合格をくれたのは『ライデン・イエステイ』と言い、俺と同じ故郷の幼馴染み……と言うよりも年下なので、弟みたいな存在だ。
彼は本年度から国土運輸省に入って働いている。
だから……と言うのは変ではあるが、魔道車の免許を優先的(強制的にでもある)に取得させられて、適性があると判断されれば教える側になり、魔道車を購入するであろう人々を世界中に増やしまくっている。
俺は残念ながら外務省に入省してしまってるから、他人様に運転をレクチャー出来る立場にはなれませんでした。
まぁ取り敢えず今日は帰宅しよう。
現在この国では超絶発明品である魔道車を世界中に広めようと、世界中に広めようとしている。
だけどそれは当然である……何せ魔道車はこの国の王様であるリュケイロム陛下が発案して作らせたのだから、直ぐにでも世界中に認知されるべきなのである!
俺もあと少しで免許を取得出来る……と思ってる。
そして免許が取れれば必要となるのは……そう魔道車!
これを入手するが為に頑張って教習所に通っているんだ。
だが先程言った様に、俺はあと少しで免許取得出来そうだ。
数日の違いでしか無いのだが、やっぱり免許を手に入れて直ぐに魔道車乗り回したいモノだ。
なので教習中にも話してたのだが、今日この後に買いに行こうかと考えていた。
ライデンも免許こそ持っているが、金銭的都合で魔道車まで購入出来てない状態だったらしい……
ある程度お金も貯金出来て、購入の目処が立ったらしいので一緒に見に行こうって結論になった。
そんなに急ぐモノでも無いが、最近ライデンに彼女が出来……その娘に良いとこを見せたいのだろう。
如何な女性かは知らないけど、同僚だと言う事で俺も既に会った事はあるかもしれない。
(グランバニア王都:中央西地区・フォンザ(株)店)
ライデンの仕事が全て終わるまで2時間程あったが、それを近くの喫茶店で待ち合流する。
お互いに狙っている魔道車が既にあり、それを目当てにフォンザ(株)店に乗り込んだ!
一応だが実家が伯爵家なんだけど、そんなに裕福では無いので値切れるだけ値切る意気込みである!
店内に入り周囲を見回すとビシッとスーツを着た男性……多分30代と推測が近付いてきて俺とライデンを店内の席に案内する。
俺達の事を2人で一組だと考えたんだろう。
だが俺はビシッと言いました。
「す、すいません……お、俺達友人ではあるんですけど、今回は別々での購入を……」
うん。それはもうビシッと言ってやりましたよ(笑)
「そうでしたか。申し訳ございません……今別の担当を連れて参ります。直ぐではありますが、お客様(視線で俺の事を指定)はこちらのテーブルにてお待ち頂けますか?」
そう言ってライデンが座ってる隣のテーブルに通された。
一瞬だけ男性店員は裏(お店のスタッフとかが在中している方)に顔を出して新規の客(俺の事で間違いないだろう)の事を告げて、再度ライデンの席へと戻ってきた。
金銭的な都合からってのが一番大きな理由ではあるのだが、もう一つの理由に『彼女がこの魔道車可愛い』って言ったって事ってのがある。
だから余程の事が無い限りライデンは他の魔道車に興味を向けないだろう。
しかし売り上げが欲しい男性店員は、各種多様な魔道車のカタログを持ってテーブルに着いた。
暫くすると俺の目の前にも店員が……相手は女性だった。
やはり同じ様にレディーススーツをビシッと着熟し、手には数冊のカタログを持っている。
ライデンの男性店員とはどことなく違う感じを窺える。
「初めまして、先程の店員に代わりまして新たにお客様を担当させて頂く『セナ・アイルティン』と申します」
そう言ってセナさんは名刺を手渡してくれる。
マナーとして受け取った名刺は直ぐにしまわず、これから商談をするテーブルの俺側の端に見やすく置いた。
見やすかったので、更に彼女の名刺を観察。
すると彼女はこの店の副店長である事が判明。
先程の男性店員はどれほどの役職かが気になり、チラリとライデンのテーブルに視線を動かす。
だが『デイビット・シューバッハ』って名前しか書いてない。
つまりは平社員だ。
他に担当出来る人材が居なかったのか、俺には偉い人が付いた。
だけど負けない。俺には既に『ACCORDN』って名前のセダン車を買うと!
だが向こうもプロだ……更なるグレードアップをする様に仕向けるに違いない。
ライデンも覚悟を決めて、持参した『HIT』のカタログに目を通す。
だけど言ってたなぁ……『俺の彼女……赤い魔道車だったら何でも良いよ♥』って……うん。
値段に魅力を感じて、当初の予定通りは買い物をしないかも(笑)
上司から『今日はそれ程忙しくは無いのだろ? 仕事は午前中だけで、仕事を優先させてくれて良いよ』と通達されており、午後もギリギリまで仕事をしていた。
理解のある優しい上司に恵まれ俺の免許取得もゴールへと一気に近付く。
だから俺は大丈夫。事前に上司に『俺って如何な魔道車が似合いますかね!?』と。
すると殿下は、当時俺が持ち歩いていた魔道車のカタログを熟読し始め、数分の時間が経過してから『この魔道車ならジージョ君に似合うと思う』と選んでくださった!
もう俺に他の魔道車購入候補は存在しねぇ!
万が一その他の魔道車に心移りが発生するのならば、それはリュケイロム陛下が別の提案をしてくださった場合のみ!
殿下も陛下も忙しい人ばかり……
下っ端の俺になんか構っている暇なんて無い。
だから大丈夫なのさ!
そんなワケで断固たる意思の下新魔道車購入の駆け引きを続けて居ると、俺達以外にも客が来店。
そりゃぁ俺達の為だけに開店してくれてるワケじゃないのだから、来店客が現れるのは当然だ。
だが当然では無い事も……
「あら? ジージョ君……君も魔道車を買うのかしら?」
と話しかけられる。
聞き覚えのあるその美しい声……俺は慌てて立ち上がり声のする方に向き直った。
そこに居たのはリューナ嬢!
公表厳禁ではあるのだが、彼女は俺が尊敬するリュケイロム陛下の娘さんである!
美しさもさることながら、その天才っぷりに誰もが驚きを隠せない。
「君も魔道車を?」
「そうなのよ……先日ねホックワルト村に住む夫(予定)の家族にご挨拶をしたのだけど……」
と、俺と話しながらフォンザ(株)の店員に促される様に着席する。
店員も気を遣って近場のテーブル席にしてくれた。
「……って事で、私も魔道車を所有しようかなと思って。お義父さまとお義母さまのとこになら、私だけでも送迎出来ると思うから」
つまりはあまり観光出来なかった義両親の為に、何時でも会いに行ける環境を作ろうって事だね。
流石!
もう流石としか言い様がない。
美しさが優しさを纏って、その結果天才になったとしか思えない存在だ!
「リューナは既にどの車を買おうとしてるのか決まっているのか?」
今から店員と位置から交渉するのでは時間が掛かると思い、何気なく聞いただけの質問だった。
だがリューナさんも、今日は来てないけど婚約者のラッセルさんも決めてたらしく、即答で……
「『VAZEL』を購入するわ」
と即答だった。
「なんかね……夫がこのデザインに惚れちゃってね……カタログを見た途端『これが良い! これ格好いい!!』って駄々っ子みたいになっちゃって(笑)」
「へぇ~……あのラッセル君が(笑)」
何か想像出来ないなぁ……
彼もリューナさんと二人っきりの時は甘えるんだなぁ(笑)
そうこうしている内に商談は進み行く。
三人が三人とも買う車種を心に決め込んで来たいたので、メインの魔道車本体で価格をつり上げる事は出来なかった。
フォンザ(株)の店員も早々に諦めて、オプション装備等での価格アップ計画に作戦をシフト。……だが問題なのはそれなのだ。
流石に天才美女リューナ様でも、魔道車の事についてはそれ程お詳しくは無いのですが、その魔道車に装着するオプション類は、ほぼ彼女が開発している物が多く、原価から仕入れ値まで細かく頭の中に入ってるらしい。
さて……そんな強敵相手にフォンザ(株)の店員さんは何処まで食らい付けるのだろうか?
ジージョSIDE END
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