神々の塔
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第七十三話 狼の遠吠えその一
第七十三話 狼の遠吠え
芥川はふとだった。
狼の遠吠えを聞いてだ、仲間達に言った。
「来るな、これは」
「狼が敵としてやね」
綾乃が応えた。
「来るんやね」
「ああ、まさにや」
芥川は今度は今自分達がいる階を見回した、北欧のモミの木の森であり雪によって真っ白に化粧されている。
「こうした場所にな」
「相応しいね」
「そやな、しかしな」
芥川はここでこうも言った。
「狼やとな」
「芥川君怖がらへんね」
「敵としては強うてもな」
そうであるがというのだ。
「群れで来るしな、そやけどな
「生きものとしては好きやね」
「そや」
綾乃に微笑んで答えた。
「こうした場所やないと基本人は襲わんしな」
「野生の狼はそやね」
「相当餓えてへんとや」
そうでなければというのだ。
「ほんまな」
「人を襲わへんね」
「家畜は襲うけどな」
そうであるがというのだ。
「そやけどな」
「人は襲わんから好きやねんね」
「むしろ畑を荒らす獣を食べてくれる」
「有り難い生きものやね」
「十星連合は農業が産業の中心の一つや」
この産業が百三十億の民の胃袋を満たしていることは言うまでもない。
「それでや」
「畑をどないして守るか」
「このことはな」
何と言ってもというのだ。
「重要や」
「その通りやね」
綾乃もまさにと頷いた。
「もっと言えば田んぼや果樹園も」
「守らんとあかん」
「農作物を」
「狼はその畑を荒らす鹿だのを食べてくれる」
「有り難い生きものやね」
「家畜は注意してたらな」
「襲わへんね」
「それこそな」
まさにというのだ。
「大きな神様や」
「それで«おおかみ』やね」
「そや、有り難い生きものや」
「それで好きやね」
「こっちの世界でも獣害があって」
農作物に対するそれがだ。
「ほんまな」
「深刻な問題やね」
「そうなってるさかいな」
だからだというのだ。
「その獣害をどないするか」
「政の重要な問題や」
シェリルも言って来た。
「農業においてな」
「正直馬鹿にならんからな」
「お米や麦でもな」
即ち穀物を栽培してもというのだ。
「虫が就いて鳥も寄って来る」
「それをどないするかやな」
「しかもそこで下手に鳥を退治するとな」
「それ果物でもやからな」
芥川は周囲に狼達が来ているのを感じつつ話した。
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