金木犀の許嫁
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第二十五話 赤い自動車その十
「言えますね」
「そうですか」
「はい」
そしてというのだ。
「歴史を見ますと」
「義の家でも」
「変わり身はです」
「凄いですか」
「生き残る為に」
真田家がというのだ。
「そうしたことをしてきました」
「そうですね、ですが」
ここで真昼はこう言った。
「勝頼さんをですね」
「最後まで、です」
「お護りするつもりでしたね」
「そう考えていたからです」
「勝頼さんが織田家に攻められて」
「いよいよです」
一九八二年のことだ、武田家は本能寺の乱の直前と言っていい三月に織田家に滅ぼされたのである。
「危うい時にです」
「上田城にお誘いしましたね」
「落ち延びる様に」
「それは忠義があったからですね」
「そして必ずです」
幸雄はさらに言った。
「勝頼様をお護り出来ると」
「自信がありましたね」
「そうでした」
「そうした忠義もですね」
「持っていて義はです」
これはというのだ。
「確かに変わり身は早くとも」
「忘れないお家ですね」
「それが真田家です」
「左様ですね」
「それは幸村公も同じで」
「絶対に義を違えない方でしたね」
「何があろうとも。受けた恩義もです」
これもというのだ。
「決してです」
「忘れない方でしたね」
「そうでした、島津家に匿われ」
大坂の陣の後そうなってというのだ。
「維新までお仕えし」
「忠義を以てですね」
「そうされていました」
「長かったですね」
佐京がその仕えていた時間の話をした。
「大坂の陣から幕末までは」
「そうでした、ですが」
「その間ですね」
「姓を隠したうえで」
「忠義一徹だったんですね」
「文字通り。槍一筋で」
それで以てというのだ。
「お仕えしていました」
「そうでしたか」
「槍の指南役として」
「真田家は槍ですね」
「そして兵法もです」
こちらもというのだ。
「指南してきました」
「幕末まで」
「そしてその下にです」
薩摩藩に仕える幸村の家のというのだ。
「十勇士の方々がです」
「おられて」
「やはり幕末までです」
「お仕えしていましたか」
「忠義だけでなく友情もです」
十勇士達との間のというのだ。
「そして義兄弟でもあったので」
「兄弟の愛情もですね」
「生涯忘れずまた代々です」
「義を守って」
「生きてきた家です、間違っても国や主を売るなぞ」
「しなかったですね」
「そうでした、戦後日本は残念なことに」
ここで幸雄は悲しい目になりこうも言った。
「ソ連や北朝鮮になびき」
「共産主義ですね」
「北朝鮮に至ってはそうとすら言えないですが」
「世襲でしかも階級もあるので」
「ですが」
それでもと佐京に話した。
「共産主義になびき」
「そうしてですね」
「日本を共産主義国にしようと考え」
「そうした国々にですね」
「一方的にです」
それこそというのだ。
「なびきそして」
「日本をですか」
「売る様な」
そうしたというのだ。
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