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金木犀の許嫁

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第二十五話 赤い自動車その四

「お客さん数えられたんですね」
「百数十人ということもです」
「あったんですね」
「発表では三千人とあっても」 
 その実はというのだ。
「そんなものでした」
「そうだったんですね」
「今の巨人はいつも百人もいません」
 人気がないうえに嫌いな者が極めて多いからだ。巨人はただ人気がないだけでなく徹底的に忌み嫌われているのだ。
「そうなってしまいました」
「巨人が若し本当に魅力あるチームなら」
「そうはなりませんね」
「そうですね」
「阪神も弱い時はお客さんが減りました」
 暗黒時代では時折あったことだ。
「ですがとてもです」
「今の巨人程じゃなかったですか」
「そうでした」
「そこまで巨人は不人気なんですね」
「今や」
 まさにというのだ。
「そうなっています、所詮は誇大広告によるものでした」
「巨人の人気は」
「サブリミナルの様にです」
 この工作の様にというのだ。
「漫画、テレビ、広告で」
「巨人ばかりなら」
「自然とです」
「巨人ファンばかりになりますね」
「共産主義と同じです」
 巨人の体質自体がそうであったと言えるだろう。
「常に洗脳せんとです」
「プロパガンダをしていると」
「ファンが増えます」
「マスコミの力ですね」
「戦後日本はマスコミの力が強かったです」
 幸雄はこのことを顔を曇らせて話した。
「それも非常に」
「マスコミ絶対ですか」
「マスコミが白と言えば白で」
 そうなっていてというのだ。
「黒と言えば黒でした」
「巨人についてもですね」
「悪の限りを尽くしていても」
「マスコミが正義と言ったので」
「正義でした、あの北朝鮮がです」
 悪名高き子の国がというのだ。
「地上の楽園とです」
「マスコミが言ったので」
「そうなっていたのですから」
「あんな国がですね」
「あの国がどんな国か」
 幸雄は夜空に顔を曇らせて話した。
「言うまでもないですね」
「最悪の独裁国家ですよね」
「そんな国がです」
「地上の楽園ですね」
「そう言われていてです」 
 日本のマスコミにおいてだ、そしてその言葉を鵜呑みにしてあの国に渡り二度と帰ってこなかった人が多くいるのだ。
「信じた人も多いのです」
「とんでもないことですね」
「それが戦後日本であり」
「日本のマスコミですね」
「そうです」
 まさにというのだ。 
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