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金木犀の許嫁

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第二十四話 たこ焼きその十二

「二人でね」
「今夜は飲むんだね」
「夫婦でお酒飲むってね」
 夜空は微笑んで話した。
「いいわよね」
「そうだね」
 佐京もまさにと頷いた。
「俺もそう思うよ」
「お酒飲むだけじゃなくて」
 夜空はさらに言った。
「他の色々なこともね」
「二人でだね」
「楽しく」
 そうしてというのだ。
「そのうえでね」
「暮らすといいね」
「そうよね」
「俺も思うよ」
「そう思うのね」
「うん」
 まさにというのだ。
「本当にね」
「私も。ただね」
「ただ?」
「それはいいことについてで」
 そう言うべきことにおいてというのだ。
「悪いことだとね」
「したら駄目だね」
「若し私がしそうなら」
 夜空はそれならと言った。
「佐京君が止めてね」
「悪いことをしない様に」
「ええ」
 まさにというのだ。
「そうしてね」
「夜空さんがするかな」
「私も人間だから」
 それでというのだ。
「やっぱりね」
「悪いことするんだ」
「自覚してるわ」
 こう答えた。
「私もね」
「それは」
 夜空の今の言葉を聞いてだ、佐京は言った。
「悪人正機説かな」
「あっ、そうね」 
 夜空も言われて気付いた。
「そうなるわね」
「悪人とは何か」
「自分が悪いことをした、しているって自覚している人よね」
「善人は自覚していない人だね」
「人は誰でもね」
 それこそ生きているだけでというのだ。
「歩いていて虫を踏んだりものを食べて」
「命をいただくからね」
「お野菜だってそうだしね」
「だから生きている限り」
 まさにそれだけでというのだ。
「罪を犯すから」
「それを自覚していると悪人ね」
「そして善人が救われるなら」
「悪人も救われるべきね」
「仏様のお力は物凄く大きいから」
「そうした意味でも悪人は救われるわね」
「それで夜空さんも」
 佐京はその夜空に微笑んで話した。
「悪いことしているって自覚しているから」
「救われるのね」
「そうだね、悪人正機説だね」
「親鸞さんの」
「素晴らしい教えだよね」
 佐京は微笑んでこうも言った。 
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