金木犀の許嫁
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第二十四話 たこ焼きその八
「やっぱり禁止されていたけれど」
「食べていたの」
「こっちは緩やかだったのよ」
「幕府が言わなかったの」
「だって町人の街で」
大坂はというのだ。
「奉行所があってもね」
「緩やかだったの」
「そう、江戸よりずっとね」
「幕府の取り締まりも穏やかだったの」
「お侍さん数百人位しかいなくて」
町人は多い時で五十万はいたらしい。
「一生お侍さん見たことない人もね」
「いたのね」
「そうした街だったからね」
それ故にというのだ。
「河豚を食べる位は」
「緩やかだったの」
「まああたって死んでもね」
それでもというのだ。
「自己責任だったのよ」
「そうだったのね」
「だからね」
それでというのだ。
「大阪は河豚もね」
「名物だったのね」
「その一つだったのよ」
「蛸だけじゃなくて」
「そうなの、お好み焼きや焼きそばも名物で」
こうしたものもというのだ。
「串カツ、豚まん、アイスキャンデーにね」
「きつねうどんもよね」
「それにね」
さらにというのだ。
「土手鍋、ハリハリ鍋に」
「ハリハリ鍋は鯨よね」
「鯨大丈夫?」
「食べたことないけれど食べてもいいでしょ」
これがオーストラリアの娘の返事だった。
「別に」
「そう言ってくれて何よりよ、それで河豚はね」
「このお魚もなの」
「そう、名物で」
あらためて河豚の話をしたのだった。
「毒があってもね」
「食べるのね」
「そう、けれどね」
それでもというのだ。
「ヒョウモンダコはね」
「食べていないわね」
「聞かないわ」
どうにもというのだ。
「本当にね、数も凄く少ないし」
「見たら騒ぎになる位にね」
「だからね」
それでというのだ。
「尚更ね」
「あの蛸は食べないわね」
「蛸イコール食べものでも」
日本人の感覚ではというのだ。
「それでもね」
「あの蛸は食べないのね」
「そうみたいね」
「そうなのね」
「いや、蛸はかなり食べて」
そうしてというのだ。
「河豚を食べても」
「そうした国でも」
「それでもね」
どうにもというのだ。
「食べないとなると」
「相当ね」
「ええ、しかしね」
夜空はこうも言った。
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