リュカ伝の外伝
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たまには役得があっても良いと思う
(グランバニア王都:南西地区)
ピエッサSIDE
ここはグランバニア王都でも最も南西に位置している場所だ。
ここより更に西は頂上付近に村が存在する『チゾット連峰』が聳えており、人工の建築物は建てる事が出来ない。
南側も殆ど何も無く、『グランバニアの洞窟』と呼ばれるチゾット村へ行きやすくなる様に掘った洞窟がある程度……
現在では陛下が列車を開通させたので、それすらも使用されなくなってきている。
私は詳しくないので細かい説明は出来ないが、チゾット連峰の山肌にジグザグになる様に線路を敷いて、その上を列車がゆっくりとだが通行して上へと登っていくスイッチバック方式と呼ばれる方法であの高く険しい山々を移動してるとレッ君が教えてくれました。
そんな王都の南西の端に、私は何で来ているかと言えば……
先日完成させた魔道車を人々が乗り熟す様に教習訓練をする施設……つまり教習所を建設されており、私もそこを利用して免許を取得する為に来ております。
彼氏のレッ君は、ああ見えて軍の高官だから民間人より遙か先に免許を取得して(させられて?)おり、後は魔道車を個人的に購入するだけ状態になっている。
当然ながら当人は直ぐにでも魔道車を買いたいらしいのだが、高価な物だから簡単には買う事が出来ず、販売されてる各車のカタログを眺めて、購入計画を妄想して居ります。
当たり前だが上司であらせられるピピン元帥も免許は取得されて在る為、休憩時間が重なるとレッ君と共にカタログを眺めて、同じように購入計画の妄想を語り合っています。
って言うか、職場で仕事に関係ない魔道車のカタログを広げるなよ……
勿論ですが私も魔道車の免許には興味があります。
尤も免許自体にでは無く、その先の魔道車に興味がある訳ですが……
男性二人と違って、私は見た目が可愛い魔道車を選びたいですね。
そんな風に城内のカフェで休憩しながらウィンドウショッピングならぬカタログショッピングをしてると、私の上司が現れる。
『魔道車購入の相談か? ピピン大臣もレクも、高給取りなんだから少し無理をすれば買えるだろ?』
その少しの無理が出来ないのが一般庶民であることに気付かないのだろうか?
それとも通常運行である嫌味混じりの発言なのだろうか?
……考えるのも億劫だから如何でもいいですよね。
各々が何時もの事……的な態度で居ると、そのこと自体には全く気にしない宰相閣下が、私にだけ話題を振ってきた。
『ピエッサさんはもう免許は取得たの?』
『嫌味ですか? 相変わらずですね』
『な、何でだよ!? 普通に質問しただけだろ! まだだったのならそう言えよ。一度でも調べてりゃ俺は忘れないけど、今まで微塵も関心が無かったんだから純粋に知らなかったんだよ!』
『成る程……そうでしたか。それは失礼しました。宰相閣下の仰る通り、私はまだ取得してませんし、教習所にも通えておりません』
『それなら丁度よかった』
最近サラボナから留学に来ているルドマン氏のお孫さんと仲良くされているのだが、彼影響なのか、今更好青年路線を目指し始めたのか、柔和な表情をする様になってきた様な気がする……かもしれない……って、思い違いかも?
『実はさ……リュカさんや各企業と軽い話題としてだけされてる企画なんだけど、リュカさんの……いや違った、プーサン社長って一般人がプロポーズ音楽グループが魔道車と一緒に世間に向けて活動をして、双方の名前を広めてるから……それを“タイアップ”と言うんだけど、俺の子飼いのマリピエもタイアップに協力出来れば売り上げ面も上がりマリーを静かにさせる事が出来ると思うんだよ』
『静かに……と言うか、絶対に利益だけを得ようと騒ぎますからね』
『うん。だからピエッサさんに免許を取得ってもらい、何処かの企業の製品とタイアップして双方の知名度を上げようって話が出てるんだ……主にリュカさんから』
『へ、陛下から……でしたか! 道理で……』
こんな気の利いた提案がこの男から出てくるワケ無いわよね。
納得だわ。
そんな事情があり、なんと私は免許取得費用を殆ど経費で賄える事となった。
何ともラッキーな状態である。
経費と言っても当然だが私は民間人だから税金では無い。
直接的には宰相閣下のポケットマネーから出して貰ってるのだが、宰相閣下主導で友好国に魔道車の製造・開発・販売等を推し進める活動をしてる(と言う事になっている)資金から、捻出している様に見せている。何だか凄くややこしいですが、税金が一度宰相閣下の懐に入って、その金で私が免許を取りに行っている様に見せているのです。
悪い事してる様に見えますが、しっかり調べても悪い事にはならないそうです。
元々タイアップとかに使用すれば問題ない資金なのです。
それに本当は陛下からのお金ですから。
そんなこんなでほぼ毎日私は教習所へ通い詰めております。
アイリは既に魔道車の発売前から、密かに免許を取得っており、既に運転は出来る様子。
でもあの娘は魔力が無いから、自分の事務所の魔道車を動かせられないそうです。
何か色々、魔道車はそう言う仕様になっているみたいですが、私は詳しく解りません。
私が魔道車を買う時は、私でも動かせる物を買うつもりです。
レッ君が詳しそうだから、買う時にはアドバイスを貰おうと考えてます。
序購入資金も出して貰えないかなぁ?
因みに私が目を付けてる魔道車は、『(株)ツヅキ』の『Lapun』丸っこくてカラーバリエーションが色々あって可愛い魔道車だ。
上手い具合に(株)ツヅキとタイアップ出来れば……貰えないまでも、お安く譲ってくれないものかしらねぇ……
因みに、我らマリピエにも正式にオフィスが与えられました。
と言っても何も変わりません。
グランバニア城の3階王家プライベートエリア内の娯楽室……
つまり現状で使用している場所を、そのままマリピエのオフィスとして正式に登録しただけです。
勿論マリーちゃんからの不平不満が大爆発。
マリーちゃん的には王都の一等地に大きなビルを建てて、その中に事務所やスタジオを盛り込んでパラダイスみたいな職場を期待していたらしいです。
夢見る少女は可愛いですよね(失笑)
録音機器(M・R)とCCを作る機械(CC・R)を購入しただけで、もう予算がカツカツになったそうです。
多分、我が儘を言わせない為にお金が無い事にしてる気もします。
練習環境は問題ないですし、何らかの不便が生じているワケでも無いのですから、無意味に事務所を作る必要性は無いのです。
どうせ練習に来ないのだから……
でもマリーちゃんなりに何かは考えているらしく、人数が増えたら狭くなるって事を頻りに訴えてました。
多分、何も考えずサポートバンド(もしくはバックバンド)を雇おうとか考えているのかも?
それはそれで、また予算が膨らむって事を解っているのかいないのか。
マリーちゃんが狙っているっぽいのがMGとMBだ……
まだ発売されたばかりだから、演奏人口は少なく中央公園に出没するストリートミュージシャンもそんなに居ないが、彼女なりの価値観で選んでる(物色してる)みたいだ。
何となくだが……見た目重視に見える……凄く不安である。
だから私の方でも何人か、芸高校出身者(もしくは現役)にそれと無くは話しかけている。
下手に期待を持たせると採用できなかったときに申し訳ないし、嫌だったけど今回は素直に宰相閣下のお知恵を拝借させてもらいました。
でも正直アイリが羨ましい。
彼女の方は気心の知れた仲間(同じ趣味を持つ者って意味)と共に、最新の楽器や設備を使え歌を披露出来てる……
方やこちらは……目立ちたいだけの小娘の面倒を見させられている感が溢れている。
そう以前に陛下へ愚痴を言ってしまった事がある。
一生の不覚だ! とんでもない不敬罪だ! 私は現状に不満は無いのに……
だがそれが私の本心である事を解っている陛下は、その場は『本当に苦労をかけるね。ゴメンね』と……違うんです! 本当はそんな事を言うつもりは無かったんです!
だがそれは後の祭り。
後日……陛下自ら私の部屋に訪れて、お詫びの品って言ってとんでもない物をくれたのだ!
それは何と……発明した手のM・Pだった!?
ピアノ(以後は普通のピアノはA・Pと呼ぶ)の鍵盤部分だけで、色んなスイッチ等が音とかを管理している代物。
M・P1台だけで、複数台の働きが出来(でも切り替えながらの演奏は無理なので、複数台での演奏をしたいのなら、素直に複数台使うしかない)る便利なマジカル楽器。
音は最高級なグランドピアノにも引けを取らない音質で、それを3台も私にプレゼントして頂きました。
ただ弾くだけならば私にも出来そうだけど、色々な機能を熟知してから活用しないと、宝の持ち腐れになってしまう。気を付けて練習に励みグランバニアでのNo.1奏者になるわ!
陛下はマリーちゃんにかなり手を焼いており、その愛娘のお相手をしている私にかなりの便宜を図ってくれている。
ありがたい事だが、陛下が骨を折る事でもない気がするわ。
私がもっとしっかりしていれば……
そんな風に別の事を考えながら教習訓練を受けていると、“キッ!”と高音と共に急停車する私の教習魔道車……信号無視をする所だったわ。
気を付けないと大事故を巻き起こしてからでは拙いのよ。
教習のテキストに『魔道運搬車に轢かれたミニデーモンの死骸の絵』は強烈だった。
人間は当然だが動物もモンスターも轢くワケにはいかない。
魔道車の免許を取得するって事は、それだけで責任重大なのだ。軽い気持ちで取得してはならない!
ピエッサSIDE END
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