ハッピークローバー
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第百三十二話 餓鬼にならないならその六
「もうそれはね」
「絶対に見えないわね」
「何もしてこなくて何も持ってなくて」
「誰からも嫌われて」
「そんな人生はね」
それこそというのだ。
「論外よね」
「反面教師になるだけね」
「死んだ時に」
一華はさらに言った。
「どう思うかで人生決まるって言うけれど」
「そんな人生だと」
「大抵の人はあれでしょ」
かな恵に対して言った。
「最低だったってね」
「思うわね」
「何もしてこなくて誰からもよく思われなかった」
「そんな人生だとね」
「もう最低だったってね」
「思って死ぬわね」
「反省する人ならね、まあこの人は」
一華はその人柄について考えてから述べた。
「反省しないから」
「そう思わないかもね」
「死ぬ時もね」
「何でか」
根拠は不明だがというのだ。
「自分は一番偉いと思ったままね」
「死ぬのね」
「周りに誰もいなくて」
そうした有様でというのだ。
「孤独死でもね」
「ふんぞり返ったままで」
「死ぬかもね」
「自分に気付かないまま」
「どんな人間でどんな一生だったか」
こうしたことについてというのだ。
「気付かないままね」
「死ぬのね」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「死んで本物のね」
「餓鬼になるのね」
「そうでしょ、しかし本気でそうはなりたくないわね」
一華は恐怖すら感じた、人間はあまりにも酷い人格の持ち主になってしまうと思うと恐怖を覚えることもあるのだ。
「碌な人生にならないし」
「そんな酷い人になるって思うと」
「そうはなりたくないわ」
「そうよね」
かな恵もまさにと頷いた。
「絶対にね。しかしね」
「しかし?」
「いや、その人幾つでそうだったのか」
かな恵は首を傾げさせて言った。
「気になるわね、自分がこの世で一番偉いとか」
「子供なら思うわね」
「けれど生きていると色々あって」
そこで自分の小ささも知るものであるのだ。
「そう思わなくなるけれどね」
「ああ、何でも五十位でもね」
富美子が言ってきた。
「そうだったらしいわ」
「働からかないで図々しくて恩知らずで」
「尊大でね」
そうであってというのだ。
「この世で一番偉いってね」
「五十位で思っていたの」
「そうみたいよ」
「五十でそれは」
かな恵はそのことを聞いて流石にという顔で述べた。
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