ハッピークローバー
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第百三十一話 悪魔がいないその七
「人を襲ったのよね」
「真っ先にね」
「これ狼の習性じゃないわよね」
「どうもね」
「しかも他にも狼の習性とは思えないことが多くて」
「あの野獣が狼か」
「絶対違うわね、そもそもね」
富美子はさらに言った。
「狼って群れるわよね」
「それで動く生きものよね」
「狩りだってね」
これもというのだ。
「群れでやるし」
「けれどあの野獣は」
「群れてないで」
狼だとするとおかしいことにだ。
「一匹でだし」
「おかしいわね」
「その時点でね」
最早というのだ。
「本当にね」
「そこまで考えたら」
「狼じゃないわね」
「あの野獣はね」
「あそこまで殺したし」
百人を優に超える犠牲者を出した、この野獣も。
「妙よね」
「狼じゃないとしたら何?」
「まさか狼人?」
「そうしたこと言う人いるしね」
「実際にね」
「それであの野獣は」
留奈も言った。
「実はってね」
「そう言う人いるしね」
「うちの学園でも」
「絶対狼じゃないって言って」
「実はそうだったってね」
「それも真顔で」
「そうじゃないかしら」
こうかな恵に話した。
「中にはね」
「そういえば人間みたいな動きしたとか」
かな恵も言われてこう返した。
「そんなこと言ってた娘いたら」
「フランス人でね」
「おかしなことに」
「だからね」
「野獣は実は人狼だった」
「これなら説明つくわよ」
真剣な顔での言葉だった。
「あの野獣がどうして人を襲ったか」
「狼は襲わないけれど人狼はね」
この生きものはというのだ。
「時としてね」
「とんでもない人狼がいてね」
「襲うから」
「殺人鬼と同じね」
「そう、いい妖怪と悪い妖怪がいて」
そうしてというのだ、人間と同じく妖怪にもそれぞれの性格や行動が存在しているということであるのだ。
「悪い妖怪だとね」
「そうしたことするわね」
「連続殺人とかね、しかも人狼なら」
この妖怪ならというのだ。
「人間にも狼にもなれて」
「その中間にもなれるわね」
「私達が想像する姿にね」
人間の身体に狼の頭で全身が毛に覆われたそれにというのだ。
「どれにもなれて」
「移動も攻撃も楽ね」
「それでよ」
「殺人鬼の人狼が野獣でも」
「おかしくないでしょ」
「ちょっとベルギーの子に聞いたけど」
理虹が言って来た。
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