リュカ伝の外伝
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投げキッスは決意表明!?
(グランバニア王都:GEOビル)
ピパンSIDE
外側から眺めていた事は何度もあるけど、ここがプリ・ピーの事務所兼スタジオのプービルことGEOかぁ……
俺は父さんと共に建物内に入って興奮している。
リュカ様に……いや、リュカ様経由で口利きをしてくれた(と言う体裁)民間人のプーサン社長が、今日はここで魔道車の自慢し合いをすると聞きつけて、時間が空いていた(無理にでも開ける所存!)の俺等親子を招いてくれた。
でも流石はリュカ様……違う! この間違いは、この国では本当に珍しい不敬罪になるから、心底気を付けないと!!
改めて……プーサン社長は我々の事を解ってらっしゃるのだ。
と言うのも今日は、ルディーさんと……そのご友人のザルツさんが勝手に開始した勝負事。
親しい周囲の者等も、ある程度内容を聞いていたとしても、別にここに集まる必要なんて無いのだけど、プーサン社長はエミヘンさんとアーノさんに声をかけて知らせておいてくれたそうなんだ。
勿論……お二人にだけでは無く、プリ・ピーのメンバー全員に声をかけたそうです。
しかし今日お時間が空いていた(開ける事が出来、気を遣ってくれたのだろう)のが、正にエミヘンさんとアーノさんだけだった。
でも俺等親子にしてみれば、この上ない幸せ状況だ。
今日の主役と呼ぶべきルディーさんとザルツさんは、勿体振ってなのかまだ来てないし……正直お二人の車に今は興味ないし……俺は父さんと一緒に2階の練習も出来るスタジオへ上がり、お二人(エミヘンさんとアーノさん)と自身の楽器を弾いて談笑して楽しんでおります。
難しい曲だと中々指の運びが上手くいかず、まだまだ素人感丸出しの俺に優しく教えてくれるエミヘンさん……
「初めてまだ数ヶ月でしょ? 困るわよぅ……そんなスピードで上達されちゃぁ! 私の立場が無くなっちゃうわぁ(笑)」
そんなお世辞に照れながら……
「その点、私は安泰だな!」
父さんにドラムを教えているアーノさんからは、俺への評価とは違い評価が……
まぁ大して上手くも無いんだろう事は理解出来る。
「大臣閣下が私の代わりにこの国のドラマーの頂点に輝かれた暁には、私はその愛人として悠々自適な人生を歩ませてもらえば良いだけ! 未来の超天才ドラマー様……いえ、私の愛しきダーリン様! 不束者ですが末永く養って下さいまし。チュッ♥」
教わってる通りにドラムを叩いていた父に、ご自身の左手を使い投げキッスするアーノさん。
「ちょ……む、息子の前で……や、止めて下さいよぉ(汗)」
仕事時の様(特に戦闘中とか)堂々としてれば体裁も取れるのに、見えもしない母さんの影に恐れて若い美女からの冗談でしか無いアタックにたじろぐ父さん。ここだけは反面教師だな。
「あら失礼……でも息子さんだって男ですもの。解って下さるわ。ねぇ……ピパン君♡」
「さぁ……そう言われましても、俺って恋愛においては一筋な男ですからねぇ……父さんの様に浮気して愛人を作るって発想が……もう全然湧いてこないや!(笑)」
「や、止めろよぅ! と、父さんだって母さん一筋だぞぅ!」
「えぇ! そうだという事は知ってますし、現に今ちゃんと証明してもらってますよ……チュッ♥……ってね!(大笑)」
ワザとな父さんの情けない姿に、俺もアーノさんの様に投げキッスで返答してやった。
そんなタイミングで……
「ピパンはデイジー一筋だもんな(笑)」
と、スタジオの入り口から社長が奥様と入ってきて爆弾発言!
「デ、デイジーって誰だ!? お、俺は聞いてないぞ、ピパン!?」
「な、何で知ってるんですかリュカ様!?」
思わず“社長”と言うのを忘れてしまう!
勿論プーサン社長は許してくれているが、そんな事より何で既にリュカ様が知っているんだ!?
「しゃ、社長……何で知ってるんですか!? ってか、俺等まだ正式にお付き合いしてるってワケじゃぁ無いですし……って言うか、本当に何で既に知ってんですかぁ!!」
「あのなぁ……デイジーが誰なのか考えてみれば、僕の耳にどの位のスピードで情報が入ってくるなんて、考えるまでも無いだろ(笑)」
「そ、そう言われれば……そうなんでしょうけど……ですが酷いですよ! 親には当人を目の前にして紹介したかったですし、先程も言いましたが俺はまだ正式に告白をしてない上、当然その返答も貰ってないんですから、既成事実だけが一人歩きしてるじゃないですか! 困りますよ!!」
「悪かったって……でもピピンも既に対面してたし、別に良いかなって思っちゃった(テヘペロ)」
「もぉ~う……勘弁して下さいよぉ!」
一応父さんの顔色を伺いながらプーサン社長に苦言を……
「も、もしかして……俺が出会っているデイジーって……サ、サラボナの……??」
「そうだよピピン。凄げー美人だったろ? あれだけの美少女なんだから、父親として息子の彼女には申し分ないだろう」
「それは……そうですけど……付き合うにあたり俺は彼氏側の親として、彼女側の親(母親)と渡り合える自身が無いですよ」
「あの女と渡り合える自身を持ってる奴なんて居ないよ……大丈夫。気になる点はアイツの我が儘だけだろ? 無視して良いよ……出来なきゃ僕に言って。僕も二人を応援してるんだから、その邪魔を排除する事に吝かじゃぁ無いよ」
「そ、それは大変心強いですが……」
「物理的にの排除は当然出来ないけども、精神的に邪魔させない様にすれば問題ないんだ。それよりも……お前等親子に言っておくよ」
流れで、あの厄介な母親の事を話してたリュカ様が、凄く真面目な表情になり俺と父さんに視線を向かわせる。
「あの母親も……あの祖父(ルドマン)も、ピパンとデイジーの恋仲には全然影響ないし、存在して我が儘を言ってきても何の問題も及ぼさない。一切気にしなくて良い! まぁ大人として好きな相手の家族って感じで接してれば問題ないよ」
まぁ当然だろう。リュカ様は何を気にしてるのだろうか?
「問題なのはルディーだ」
「……? えっ……ルディーさんですか!?」
彼は俺等の仲を進展させたいって言ってたけどなぁ?
「アイツは切れ者だ。気を抜くとこの国を侵食していく。勿論サラボナ通商連合と共に発展していく……もしくは共存共栄していくってのが基本方針だけど、可能であれば立場は自分が上に来る様な構図を考えてるだろうし、現在の友好的な関係を崩そうとは微塵も考えてない。まぁ現状は凄く良いバランスで各国が運営されているからな」
「そうですね……軍務大臣という立場からすると、かの国の存在は補給面等で重要ですからね」
「うん。本当は全部内需で賄えれば最強なんだけど、これからの時代はグローバル化だから、そんなナンセンスな考え方は危険だよね」
「リュカ様が推し進めておりますからね」
現在のここに、リュカ様とプーサン社長が別人である事を理解してない者は居ないけど、話題の内容の為プーサン社長を“リュカ様”と言う事に抵抗があったらしく、結構緊張しながら発言している父さん。
「だから気を付けてもらいたいんだ……僕が死んだ後の時代に付いてさ」
「……か、考えたくはありませんが、この国に限らず王様とかは不死じゃぁ無いですからねその点は留意して歴史の動きを感じなければ……」
「でも……この会話の流れからすると、ルディーさんって要警戒人物なんですか?」
「アイツ……本当に大物になるよ! 僕の希望としては、ピパンにはデイジーをガッチリと確保しておいてもらって、お前はあの家庭の養子には入らずに、グランバニア人として少しでも高い地位の軍の要職へと上り詰めてもらいたいんだ。最高なのはお前が軍務大臣になる事だけどね」
「が、頑張ります……」
「あぁ……そんなに力むなよ。別にプレッシャーを掛けたいワケじゃ無いんだから。軍務大臣なんて、その時の王様が最も信頼している様な奴がやるモノなんだから、お前ならティミーの信頼を既に得ているし、問題は無いって(笑)」
剣術の腕前だけでは大臣になるには足らないからなぁ……
「まぁ兎も角さ、僕が今言いたいのは……お前が誰と付き合おうが、誰と結婚しようが、誰と浮気しようが……全然構わないけど、グランバニア人である事を止めるなよって事(笑)」
「その点は大丈夫です。100%のお約束が出来ます……特に“浮気”の件は、俺は絶対にしないですし、祖父という悪い見本が居ますから、注意だけは怠っておりません。お陰で彼女が出来ませんでしたからね(笑)」
「あははははははっ!! 孫のお前が言ってやるなよ!! あはははははっ!! 面白……意外にピパンはユーモアセンスがある! あぁ……面白!!」
如何やらプーサン社長の笑いのツボに入ったらしく、蹲りお腹を抱えて笑ってらっしゃる。
そんなプーサン社長を隣で奥様が困った顔で眺めている。
「笑い事じゃ無かったのに……困った人ねぇ」
と、呟いてしまう。
聞いてしまっているエミヘンさんやアーノさんは、もう少し詳しい内容を聞きたいのだろうなぁ……
女性って、この手のゴシップ(って言うの?)が好きみたいだからなぁ……
お爺ちゃんも可哀想に(笑)
「知ってると思うけど、コイツの爺様って、前の国務大臣……オジロンなんだけど、あのジジィ……自分の娘よりも若いメイドに手を出しちゃってさ(笑) 別にどっちも当時は独身だったから、浮気でも何でも無いんだけどさ(笑) メイドの方が家庭の都合で故郷に帰る事になって、手放したくないオジロンが騒いじゃって(笑) 娘に叱られてたっけなぁ(大笑)」
お爺ちゃんはその時は確かに落ち込んでたけど、今は未練とか無くなったのかな?
「そう考えると……オジロンさんも浮気はしてないわね。真面目な家庭ね。関心だわ! 彼の甥は、至る所に愛人が居るってのに!」
奥様からの苦言に似た物言いに苦笑いするのはプーサン社長……
「で、でも……この家庭が真面目ってワケじゃぁ無いかもじゃん!」
「ど、如何言う……!」
父さんを見ながらの反論に思わず反応する父。
「今のコイツは、人生の岐路に立っているんだぜぇ!」
「お、俺がですか!?」
何処がだろう?
「1年後にはもしかしたら……アーノちゃんのお腹の中から新たなる命が誕生するかもしれないじゃん!?(笑)」
突然名前を出されて驚いたアーノさんだが、ノリが良い(流石はドラマー)彼女はすかさず隣に立ってた父さんの腕に抱き付き「将来安泰ですわ♥」とか言っちゃう。
それを見たプーサン社長が、またお腹を抱えて笑い出す。
父さんの言い訳(?)は掻き消されるのであった。
ピパンSIDE END
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