リュカ伝の外伝
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まず見せる事からが重要
(グランバニア王都:中央地区・中央公園)
ザルツSIDE
さて……時間は既にお昼時。
入手したばかりの魔道車の運転に夢中になり、すっかり忘れていた空腹感をメリーに指摘され気付く。
私自身はまだ空腹感を我慢出来、写真を撮影したいのですが……
そんな我が儘にメリーを付き合わせるワケにいかないので……
「そうだね……何を食べる?」
とメリーに決めてもらう。
すると即答で、「カレー食べよ」との事。
魔道車を駐車した付近にあるチェーン展開されているカレー専門店……『ここんイチ』と言う名前のお店に入る。
最近GEO社長のプーサンの所為で、チェーン展開しているお店が何処の国の資本なのか気になる様に……
この『ここんイチ』は“ホザック”と言う国出身の奴隷であった“ココン・クドシン”と言う名前の方が国王陛下にレシピを教わり我が国で広めた事が発端らしい。
当時の大臣達が無償で共同出資して展開されてる為、一応グランバニア資本と言う事になっている。
なお、この方は我が国に奴隷として売られにきた時に、国王陛下の巧みなる話術でその時に売られにきていた複数奴隷等と共に1Gで買い取ったグループの元奴隷という……
異論なんて無いし、味の保証は完璧だし、メリーの食べたいカレー店へと入店。
私の奢りなのだから、少し値段の張る隣の『それなりステーキ』と言う名のステーキ店でも、私は文句を言わないのだけれど……偶然なのかグランバニア資本の『ここんイチ』での食事となった。
店内に入るとカレーのスパイシーな香りに包み込まれる。
一番混んでいる昼飯時ではあったのだが、奥のテーブル席が運良く空いており、そこに着席させてもらう。注文が決まったら呼ぶシステム……当たり前ですがね。
匂いに刺激されて私も空腹で腹が鳴る。
メリーにも聞こえた様で、クスクス笑われた(恥)
こんなタイミングでこんなことを思うのも変な事だが、何故か今日の彼女は可愛く見える。
偶然下着が見えてしまった時も、どことなく可愛さみたいのを感じたし、今も腹の音を聞かれ笑われる事に対しても、何故だか抱き締めたくなる様な感覚が私の中で心を刺激する。この感情が何なのかは、全然解らない。嫌では無いのだけれど……
少し互いに笑い合って、頼む物を決めてキッチン(の方)に居る店員さんに手を挙げて合図を送る。
ほぼ間髪を入れず店員の女性がオーダーを取りに……
笑い合ってる所をずっと見られていたのだろうか……?
ちょっと恥ずかしい。
私は“ビーフカレー”のトッピングにコロッケが付いてくるのを……メリーは“ほうれん草カレー”と言う品に更なる野菜(ジャガイモ・ニンジン・タマネギ・インゲン等)をトッピングとして追加したカレーを注文。
全然お肉が無いので、物足りなくないのかを訊いた。
すると「いやぁ……ザルツの肉を今夜ゲットしようと考えてるから、そんなに欲張っては申し訳ないと思いましてぇ(笑)」と、イマイチ解らない事を言われる。
私の頼んだトッピングのコロッケは“ジャガイモコロッケ”だし、“ビーフカレー”だとしても、分ける程ビーフが入ってるとは思えない。
メリー独特のユーモアなのかもしれないが、今日(と言うか最近)は本当に理解不能な事を沢山言ってくる。
彼女の職場の影響でか、最近知り合ったGEOの社長と、仕事終わり等に遭遇する事が多くなったらしい。
その影響で、メリーだけがGEOの事務所に遊びに行く事が増えてるのだが……
その事が最近のメリーの言動に多分に影響されていると思われる。
あそこの社長は凄い人物である事は私も認めるが、女性贔屓(所謂女好き)で在る事を認識させられる。それが駄目な方向に作用して、最近のメリーの言動に繋がっていなければ良いのだが……
私はメリーを信じているが、如何しても不安になってしまう。
今度ルディー君に相談してみようかな……
彼は友達が多いから、我が国でも彼の故郷でも、そういったお付き合いをした経験が豊富そうだ。
些細ではあるが不安を残しつつも、彼女と楽しくランチを終える。
一旦車内に置いてきたカメラを取りに自身がAstlerを駐めたスペースへと戻る。
隣に停車されていた高級魔道車のM・Hは既に移動しており、私のAstlerだけがそこに佇んでいる。
そりゃぁ永遠に駐まってるワケも無いのだから当然なのだ。
でも失敗した……
あんな高級魔道車はそうそうに巡り会えないワケだし、写真の一枚でも撮っておけば良かった。
とは言え後の祭り……
気分を取り直して当初よりの計画を!
まぁ自身の魔道車の写真を撮るってだけですけどね。
冬の中央公園を背景に、自慢の新車であるマイカーの写真を……
最近何故だか色っぽ可愛いメリーと一緒に!
本心を言うともっと噴水に近付けての撮影をしたかったのだが、当然と言えば当然の如く……公園内(この中央公園。他の公園は解らない。各々違うのかな?)には進入禁止となっているので、それは我慢。
その代わり、少し風の出てきた昼下がりの中央公園で私の自慢の彼女をモデルに、何枚も撮影をしました。
ちょっとだけ狙ったお色気シーンも撮る事が出来、大満足な結果であります。
ある程度の満足を得られた個人的撮影会を終わらせ、彼女と一緒に中央公園内のベンチでくつろぐ事に……
リアカーという手押し(手引き?)式の貨物車で売り歩いている『焼きイモ』と呼ばれるスイーツを購入。
この『焼きイモ』はサツマイモと言う名の品種を使った料理で、甘くて温かくて美味しい。
勿論だが中央公園内での販売は禁止されており、この『焼きイモ』も公園の外を巡回している。
(グランバニア王都:西中央地区)
中央公園での幸せな一時を寒さという冬の係官が登場。
時計を見れば既に3時半を示しており、本日はお開きにしようという事になったのですが、メリーがショッピング(と言うよりウィンドーショッピング)をしたいと言いだし、王都の“西中央地区”に……
彼女の指示でこの辺りに魔道車を向かわせたのだが、私の記憶では若い女性が楽しめる様な店は無かったと……
なにせ王都の西側(西南地区や西中央地区)は工業地帯と呼ばれる様な場所になっているのですよ。
しかし王都の西側へ行くグランバニア大運河を渡ってる時にメリーが直接、呟いた事で理解する……
「私も免許を欲しいし、出来れば自分の魔道車も欲しい……まだ全然先の話だけど、今のうちに如何な魔道車があるのかを見ておきたい」
との事だ。
確かにあの辺り(西中央地区)には多数の工場が建ち並び、当然その中には魔道車の工場も多数存在する。
工場と販売店が離れている企業が無いワケでは無いけれど、素人目で見れば近い方がリスクもコストも小さいだろうし、若い女性が瞳を輝かせて行く様なウィンドーショッピングにはならないだろうが、ある程度の販売促進にはなると思う。
そして到着したる最初の販売店は……
ニットサン(株)だ。
別に他意は無いのだが、道順的に一番最初に……そして一番入りやすい店舗のこことなった。
もう既に私の魔道車での来店である事から、これ以上魔道車を購入する気は無い冷やかし客だと捉えてしまったらしく、販売員の接客態度は良くは無い。
だが実際に現状で魔道車を買う事は出来ないから、こちらとしても文句は言えない。
でも気にしてない彼女は私に訊いてくる。
「ザルツは何を基準に魔道車購入したの?」
と……有り触れた質問である。
だから私も正直に理由を伝える。
「ルディー君との勝負(お遊びの見栄張り合戦)に勝ちたいから、少しでも見栄えで勝負した……って感じかも(笑)」
とまぁ冗談半分の事実を言ってみせる。
本心は値段と性能のバランスだ。
私のAstlerではアウトドアはほぼ出来ないだろうし、王都内限定にしたって大量ショッピングには適さない大きさの魔道車だし、今日の様な地味なデートしか出来ない。
だからルディー君にはその点だけをアピールして勝負する予定だ。
自分の彼女をアクセサリーの様に使おうとしてる事は口にしなかった……彼女がそれを理解して尊重していてくれてるからだが……
「じゃぁ彼には勝ち目が無いわね。アイツは金を持っては居るけど、買い物センスは壊滅的に無い。どうせまだ購入店にすら行けてないだろうし、今頃は勝手に悔しがっているはずよ。お金だけは持ってるのにねぇ……」
そう言って店舗内に展示してある魔道車を眺めながら、私の方へと戻ってくる。
それを訊いていた販売員が、気持ちの悪い笑顔を顔に嵌め込んで、私が興味なく眺めているボックスバンタイプの近くの席へ誘ってくる。
「面白そうな勝負をされてますね」
勝手に聞いてても口を出してくるなよ!
「勝負の行方は解りきってますけどね」
でも応えたのは彼女……
「ですが勝負を成立させる為に、その彼にここを紹介してあげてもらえませんかね? 彼女さんの仰る通り勝負の行方は明白でも、その彼を少しくらい満足させる事が出来ますから(笑)」
あははははっ、本当に不愉快な販売員だ。
社員教育の必要性を痛感しながら、私は彼女と店を出る。
この販売員への不愉快さを表さない様に努力しながら、私は彼女と頷き合う。
未だに私の方が美的センスは上だとの自覚は存在するし、その旨は彼に表明してるが、それでもあんな男に貶される人物ではない!
しかし考えてしまう……
私も彼と初対面(正式な初対面ではなく、あのパーティー会場での初対面の事)の時は、先程の販売員の様な最低の人間になっていたのだろうか?
思い出せば、あの場には彼の故郷のご両親が居た。
そのご両親に自分の作品を見てもらっているのに、私は自身のプライドの為だけに会話へ割り込み、剰え彼の絵を否定してしまっている。
私という男が最低のクズ過ぎて涙が出てきた。
既に先程の店舗からは発進して時間が経過していた為、帳の降りた西中央地区の名も知らぬ小さな公園に魔道車を停車させ、ひたすら落ち込む。
そんな情けない彼氏を気遣ってくれる優しい彼女……
助手席から手を伸ばし、私の頭を優しく抱き締める。
彼女の感触と香りを堪能していると、体勢を変えない様に私の顔を上に引き上げ、そのまま視線を合わせながら口吻をされる。
突如の口吻に戸惑いもあったが、彼女の方から……
「この先にある……お店……に、行きましょ……ねっ♡」
と言われ彼女が指さす方向に視線を向ける。
何か有名なお店があったか思い出せず、言われるがままに魔道車を発進させる。
少し近付くと、その独特なネオン看板が見えてきた。
そう……ここは所謂………………(恥)
ザルツSIDE END
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