リュカ伝の外伝
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友達の幼なじみ
(グランバニア城内:ルディー宅)
ルディーSIDE
プリ・ピー推活会(仮名)に新たな仲間が増えました。
土曜日の今日も親友でカメラ係の“ザルツ・ブールグ”君を筆頭に、カップルでファンに陥ってしまった“ホール・ギルバード”君と彼の彼氏の“ジョルトン・イェン”君。
そして数週間前に開催されて知り合った軍務大臣親子……お父さんの“ピピン・ハンター”閣下と息子さんの“ピパン・ハンター”君。
ピピン閣下がド嵌まりしてしまい、ドラムセットとMGセットを同時に購入して、休日には親子で『タマシイレボリューション』を練習しているとか……
上司である王様(リュカ様)の伝手で、プリ・ピーのドラム担当とMG担当にティーチングを受けたと自慢された。
羨ましすぎるでしょ!
まぁ、それはさておき……
我らプリ・ピー推活会(仮名)にも、紅一点と言える女の子メンバーが増えた。
と言っても、彼女はザルツ君の彼女で幼なじみだ。
両家の親も認めている仲らしく、二人とも仲が良い。
ラブラブ……と言う様なイチャつきではないが、幼なじみである事を伺わせる仲の良さを見せつけてくる。
失礼な言い方ではあるのだが、僕からしたら容姿的には興味の対象外だ。
実家でも、このグランバニアでも、美人に囲まれて生活している所為なのか、容姿へのハードルは無駄に高いと意識している。あまり良い事ではないよね。
そんな僕から見たら彼女……因みに名前は“メリーアン・モルト”さん……は、少し鼻が低いかな?
瞳も二重まぶただったらなぁ……
と、他人様の容姿に文句を付けられない男の呟きです。
一時間程前までプリ・ピーのコンサートが2階の城内カフェで開催されてた。
当然僕等は全員参加で心の底から充実感で満たされる土曜日の夜。
カフェ向かいのPONYにて、本日演奏分のCCを購入し、この感動を語り合うために恒例の如く僕の部屋へ。
流石に大人なピピン閣下は「俺は流石に帰るよ……若者の体力にはか敵わないからなぁ(笑)」と言ってピパン君にお小遣いを手渡して同じ城内1階のご自宅へと帰っていく。
流石大臣閣下だけ有って、僕の部屋なんかより豪邸だ。
飲食代は僕が出すのに、流石に大人は律儀である。
そんなわけでピパン君と折半する事で、城内に設けられている“元道具屋”の今は“コンビニ”と呼ばれているのだが、そこで食べ物や飲み物を購入。因みに店名は『ミニ・スタンプ』だ。命名者はリュカ様らしいけど……また何かのパクりなんだろうな。
ピパン君だけはまだ義務教育課程の未成年(この国では16歳から成人扱い)なので彼だけはサンタローズ産のアップルサイダーだが、僕等は初めての飲酒を試す事になった。勿論、未成年がいる手前無茶な飲み方をするつもりは無く、ソフトドリンクも多めに購入してる。
何故に今日が初飲酒なのかというと、数日前に丁度メリーちゃんが16歳になったそうだ。
彼女は彼氏のザルツ君とは違い、既に自宅近くの中小企業の事務員として働いており、会社の飲み会にも参加した事がある様で、僕等にも今日やってみようと誘ってきたのだ。
当初は大臣閣下もいたし、完全に閣下の財布目当ての提案だったみたいだが、『ピパンには飲ませない事と、箍が外れた様な無茶な飲み方をしない事』を条件に、僕の部屋での開催となった。ピピン大臣閣下もリュカ様等とは違った大人の格好良さを醸し出しているなぁ。
飲み物と食べ物と……そして今日のプリ・ピーのコンサート!
それだけでも燃料は事足りるのだが、僕個人だけが体験したGEO関連の出来事などを皆と共有する事で、我々(プリ・ピー推活会(仮名))として大いに盛り上がる!
数週間前にこの場では僕とザルツ君しか参加できなかった魔道車の展示会でのゲリラライブ……その時に舞台装置の一つとして使用してた軍用魔道車のHanmmerが、正式にプリ・ピーの専用魔道車になった事を伝える。
その際に僕が魔道車のボディーペイントを無償協力した事も伝える。
当然だがザルツ君から「また君ばかり……狡いなぁ!」と悔し文句がポロリ。
でも……言い訳じゃ無いんだけど、大した事はやってないんだよ。
「あの魔道車は正式にP・P・Hと呼ばれる事になったんだけど、正面のエンジンルームを覆ってる蓋部分(ボンネットと呼ばれる)に『GRANVANIA Entertainment Office』と地味に書いたのと、両サイドの前ドア・後ドア部分に突き通して『Princess・People・Hanmmer』と書いただけなんだ。味も色気も存在しない地味な文字だけを書いたにすぎない」
「そ、そうか……」
「あそこの社長は直ぐに物事を押しつける性格ですからねぇ……丁度側に居たルディーさんに丸投げをしたんですよ。悪い人では無いんですけども、人使いは荒いんですよ……特に男性に対しては(笑)」
「ピパン君はGEOの社長に会った事があるのかい? 何だか詳しそうだけど」
「……え~っと……あぁ、そうなんですよ。父のコネで……」
「軍務大臣閣下の?」
「せ、正確には軍務大臣閣下の上司であるリュカ陛下とのコネクション……ですかね」
上手い言い返しだ。僕やピパン君はプーサンがリュカ様だって知っているからね……
「実はそんなコネを使って、父はドラムスのアーノさんに……俺はギタリストのエミヘンさんにそれぞれ楽器のティーチングをしてもらったんだよ。もう最高だったね!」
「羨ましすぎるぅ! エミヘンさんに直接だなんて、私もMGを始めてみようかしら。でも音楽の事は全然解らないしなぁ」
紅一点のメリーちゃんが身悶えながら叫ぶ。
彼女はエミヘンさん推しだ。
皆がそうだが、普段と演奏中のギャップにやられてしまったらしい。
こんな感じで我らプリ・ピー推活会(仮名)の夜も耽っていくのだが、何度も言うが未成年が参加しており常識を疑うレベルでの夜行軍は出来るわけも無く、誰からとも無く“本日はこのくらいで……”的な雰囲気が出てくる。
勿論それが解るからピパン君も率先して、本日のお開きに移行体制を取る。
「やっぱり父さんにも参加してもらえば良かったね。そうすればオールで飲み食いプリ・ピー語りが出来たのに(笑)」
「その気持ちは解るが、この平均年齢の中でオールするのは精神的に負担だろう(笑)」
ピパン君がお父さんと同じく軍人を目指し芸術の世界には進出して来ないと解っているからなのか、ザルツ君も彼に、ほぼ初対面時の僕や僕の両親に対してみたいに高圧的な話し方はしてこない。
僕が言うのも変なのだが、ピパン君は……彼自身の家系が凄いのに、それを鼻に掛けないで会話がしやすい。
お父さんが現行の軍務大臣閣下(しかも勇者様と共に世界を平和にされた方)で、お母さんもグランバニアの御血筋(先代の王様パパス陛下の弟の娘であり、やっぱり勇者一行と共に世界を平和にされた)で、そして何よりその先の血筋がリュカ様なのだから、幾らでも大きい態度で我が儘を言えるのだろうけど、そんな素振りすら見えず落ち着いた14歳の少年だ。
そんな事を考えていると皆が後片付けを始めてくれた。
僕の部屋なのだし、最終的にちゃんと片付けるのは僕の役目になるだろう。
とは言え初の飲酒で少しだけ身体がフワッとしている。
悪酔いってワケでは無いと思うんだけど、他の皆も同じ事を言っている。
だから僕も「ある程度を纏めてくれるだけで良いよ……残りは明日の僕がやってくれるはずだから」と完全にお開きにする意向を表明。
それが解ってくれる友人方は、程良い程度で自身の帰り支度へと移行。
最初に「ありがとうルディー……今日も楽しかったよ、また誘ってね」と言って彼氏と抱き合って帰って行くホール君。
相変わらずラブラブであるなぁ……
次に帰り支度が終了したのはピパン君。
「今日は……ではなく、今日も凄く楽しかったですね。じゃぁ俺は直ぐそこの自宅に帰ります……皆さんはお酒飲まれたんですから、帰りには注意してくださいね」
と言い残して颯爽と出て行った。
軍人を目指し運動を欠かさないからか、動作が格好いい。
やっぱりグランバニア王家の血が混ざってるからだろうか?
最後に親友カップル……
二人の自宅は城前から魔道人員輸送車に乗らないと帰れない距離。
とは言えこの国は治安が良いし、彼氏君がちゃんと彼女を送り届けてくれるだろう。幼なじみって事だし、送り狼になんてならないだろうし、なっても問題は無いのだろう。
だが聞いてる話では、幼なじみ期間が長すぎて男女の関係に移行する切っ掛けを掴み欠けているらしい。
要するにキス……くらいはしてるのかな? ってかその程度らしい。
僕なんかは特定の相手も居ないから、キスすらも無いよ。(T-T)
そんな初々しい熟練カップルを見送り、先程まで準酒盛りをしていたリビングルームのソファーに腰を下ろす。
まだ少しグラスに残っていた赤ワインを飲み干す。
誰の飲み残しなのかは解らないけど……
あぁ~………………片付けるの面倒くさい!
そんな思いに蝕まれ身体を床に横たえた……
するとそこには僕の物では無いキャップが落ちていた。
これは……確か……メリーちゃんのキャップだ。
何故解るのかというと、エミヘンさんが同じキャップをしていて、それに憧れて購入したキャップらしい。
あぁ……もう魔道人員輸送車に乗っちゃったかな?
今から走って追いかければ間に合うかな?
う~ん……考えても仕方ない!
僕はキャップを手に持つと、軽く上着を羽織って玄関まで早歩きで向かう。
そして僕が玄関に到着するのとほぼ同タイミングで、玄関の扉がノックされる。
あれ……もしかして?
ルディーSIDE END
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