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話しても無駄

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第一章

                話しても無駄
 そのサイトでは最近悪質な書き込みが続いていた、それでだった。
 管理人の柳町悟、本職はサラリーマンで面長の顔で切れ長の目と薄い唇に茶色がかったショートヘアの彼は自宅でぼやいた。
「最近サイト酷いな」
「あなたが管理してる?」
「うん、阪神の応援サイトだけれど」
 妻でOLの真礼小柄で黒髪をロングにしていて優しい感じの垂れ目でスタイルのいい彼女に対して答えた。
「最近マナーの悪い人が多くて」
「そうした書き込みしてるの」
「そうなんだ」   
 妻に現状を話した。
「これがね」
「そうなのね」
「もうチームに何かあれば」 
 その時はというのだ。
「口汚く書いたりして」
「掲示板とかで?」
「それを他の人達に咎められても」
 そうされてもというのだ。
「管理人の僕にもね」
「それでもなのね」
「かえってそうした人達にね」
「あなたにもなのね」
「暴言言うんだ」
「そうなのね」
「それで最近サイト全体の雰囲気が」
 それがというのだ。
「荒れてるんだ」
「それで何とかしたいのね」
「マナーあらためてくれないかな」 
 そうした利用者達はというのだ。
「注意してるけれど」
「いや、無駄でしょ」
 妻は困った顔の夫に素っ気なく答えた。
「もうね」
「駄目かな」
「あの、あなたサイトのルールとか決めてる?」
「常識の範囲内って書いてるよ」
 こう妻に答えた。
「そうね」
「いや、それだとね」
「駄目かな」
「それだけだとね」94
 これが妻の返事だった。
「おおまか過ぎて」
「それでなんだ」
「駄目だから細かくね」
「ルール決めないと駄目なんだ」
「サイトのね、それでね」 
 妻は夫にさらに話した。
「それにあんまりにも従わないなら」
「それならなんだ」
「もう書き込みと科禁止にしてね」
 そうしてというのだ。
「サイトから追い出すしかないわ」
「そうなんだ」
「さもないとね」
 そうしなければというのだ。
「解決しないわよ」
「そうなんだね」
「話せばわかるって思ってるでしょ」
 妻の言葉は真剣なものだった。
「そうでしょ」
「うん」
 妻にその通りだと答えた。
「そうだけれど」
「だったらルールをちゃんと作って見せて」
 サイトのそれを利用者達にというのだ。 
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