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昭和で止まった男

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第四章

「雨の日にグラウンドを走らせたんだ」
「選手全員をですか」
「連帯責任だ」
「古い考えですね」
「昭和のな」
 その頃のというのだ。
「これは立派な体罰でな」
「古臭い理不尽なことですね」
「連帯責任のな」
「どっちも絶対にやったら駄目ですね」
「怒るならちゃんとそいつだけに言え」
「体罰は駄目ですね」
「以ての外だ」
 それこそというのだ。
「こんなことはな」
「そうですね」
「しかも選手にそうさせている間だ」
 雨の日にグラウンドで走らせてというのだ。
「自分は球場の中の食堂にいたんだ」
「自分は、ですか」
「暖かい場所で飯を食ってな」
 そうしてというのだ。
「マスコミと楽しく話していたんだ」
「選手の人達怒ったでしょうね」
「選手にそうさせるならな」
 それならというのだ。
「理不尽で馬鹿なことでもな」
「やらせるならですか」
「自分も外に出て走れ」
「そうしないと駄目ですね」
「言った本人もだ」
 選手達だけでなくというのだ。
「やらないとだ」
「駄目ですか」
「それで示しがつくか、それで自称番長の選手が怒ってな」 
 そうしてというのだ。
「ロッカーで暴れたんだ」
「それもよくないですね」
「ああ、ものは大事にだ」
「しないといけないですね」
「だからな」
「それも駄目ですね」
「そんな奴は後片付けもしないしな」
 暴れた後のというのだ。
「当然その後で別の選手が何も言わずロッカーを整理したが」
「その選手は立派ですね」
「バントや守備の上手な選手でな」
 こうしたことで有名でというのだ。
「今も評判だ」
「そうですか」
「しかしな」  
 それでもというのだ。
「それを見たあいつはな」
「自分は食堂にいて」
「その選手がロッカーを荒らしたと思ってな」
 そう勘違いしてというのだ。
「話も聞かずいきなり後ろからだ」
「まさか殴ったんですか」
「飛び蹴りだ」
「殴るよりきついですね」
「そこから何度も殴ったんだ」
「暴力ですか」
「一発や二発それも正面からじゃないぞ」
 只の暴力ではなくというのだ。
「話も聞かないで後ろからだ」
「飛び蹴りをして殴ったんですね」
「そうしたんだ、五十位でね」
「そんな歳で、ですか」
「最低だな」
「最低過ぎますよ」
 重原達は思わずこう言った。
「暴力なんて」
「それも酷い暴力ですね」
「しかも何度も振るうなんて」
「話も聞かず」
「昔暴力を振るう先生はいた」
 監督はこの事実を否定しなかった。 
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