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金木犀の許嫁

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第十八話 忍の家その七

「もうね」
「敵わないとか思っていないんだ」
「お父さんもお母さんもそうした考えで」
 そうであってというのだ。
「私にそう言ってくれて」
「もう思っていないんだ」
「ええ」
 まさにというのだ。
「今はね」
「だったらいいね。人は人でね」
 佐京は夜空に微笑んで話した。
「自分は自分だよね」
「そうよね」
「人には得手不得手があるし」
「お勉強が得意だったりね」
「スポーツだったり」
「人それぞれよね」
「そう、だから」
 それでというのだ。
「夜空さんは夜空さん」
「私は私ね」
「夜空さんのお料理凄く美味しいから」
 微笑んだまま言うのだった。
「だから」
「それでなの」
「うん、いいところあるから」
 だからだというのだ。
「誰かにコンプレックス抱くことないから」
「お姉ちゃんにも」
「うん、ただ」
「ただ?」
「俺もそうした時あったから」
「誰かと自分を比べて」
「駄目だって思っていた時が」
 そうした時がというのだ。
「あったから」
「そうだったの」
「白華を見て」
 妹である彼女をというのだ。
「駄目だって」
「思ってたの」
「妹の足の速さとかジャンプ力見て」
「夜空ちゃん俊敏だしね」
「子供の頃はもう全然」
 それこそという口調での言葉だった。
「敵わなくて」
「だからなの」
「そう、だから」
 それでというのだ。
「劣等感持っていた」
「そうは見えないけれど」
「今は。ただそこで俺もそう言われたんだ」
「自分は自分って」
「お父さんとお母さんから」
 両親からというのだ。
「そう言われて」
「それでなの」
「そう」
 まさにというのだ。
「俺もわかった」
「人は人、自分は自分って」
「そうなった」
 こう言うのだった。
「それで今は思わなくなった」
「お互い同じね」
「ただ白華もそう思っていた」
「お互いにだったの」
「俺が剣術強くて手裏剣もコントロールよかったから」
 だからだというのだ。 
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