弟が寿司職人で
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第二章
「そうなってくれてな」
「よかったんだ」
「俺にとってな」
「そう言うならお客さんで来ればいいのに」
「サラリーマンの給料でそうそう行けるか」
兄は弟に笑って返した。
「お寿司、しかもな」
「うちは高級寿司屋だしね」
「だからな」
それでというのだ。
「流石にな」
「そうは行けないか」
「ああ」
そうだというのだ。
「本当にな」
「それでなんだ」
「行けたら行くさ」
これが兄の本音だった。
「それも家族連れて」
「お金があったら」
「それならな」
「そうだよな、寿司ってな」
弟も言った。
「どうしてもな」
「本格的な店だとな」
「うちみたいな」
「高いからな」
「家族じゃそうは行けないよな」
「ましてや一人だとな」
兄はさらに言った。
「もうな」
「お金がかかって」
「行けるものか、こうしてな」
「居酒屋で飲んで食うのが普通か」
「そうだよ、けれど接待ならな」
「行けるか」
「だからな」
それでというのだ。
「これからもな」
「接待で来てくれるんだな」
「その時宜しくな」
「ああ、わかったよ」
弟は笑って応えた。
「じゃあまた握るな」
「その時はな」
兄弟でそうした話をした、そしてだった。
二人で飲んで食べた、明るく仲のいい感じだった、だが湯浅は弟の店にプライベートでは行かなかった。もっと言えばお金の関係で行けなかったのだった。
弟が寿司職人で 完
2024・5・18
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