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金木犀の許嫁

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第十六話 節度のある人その九

「そうもね」
「思っていて」
「相手の人が出てくれたら」
「恋愛もしたいのね」
「ええ、ただ酷い恋愛になるかって思ったら」
「ああ、遠井さんのお話ね」
 夜空もこの話は知っていて頷いた。
「あれはね」
「洒落になっていないでしょ」
「あんな目に遭う必要あったの?」
「ないわよ」
 真昼は一言で答えた。
「何あれっていう位ね」
「酷いお話よね」
「私あんな目に遭ったら」
 真っ青になってだ、真昼は妹に話した。
「立ち直れないわよ」
「精神的ダメージで」
「ええ」
 そうなっていたというのだ。
「本当にね」
「私もね、もう誰も信じらなくなるわ」
「そうよね、失恋してね」
 そうしてというのだ。
「地獄見るなんてね」
「立ち直れないわね」
「どれだけトラウマ受けるか」
「わからないわね」
「あんな目に遭うと思ったら」
 それこそとだ、、真昼は言うのだった。
「恋愛は最初からね」
「したくないわね」
「ハイリスクでね」 
 そうであってというのだ。
「ノーリターンだってね」
「それ最悪よね」
「それじゃあね」
「最初からしない方がいい」
「そうした考えもあるわ」
 自分の中にとだ、真昼は答えた。
「どうもね」
「そうなの」
「極端な例だと思うけれど」
 それでもというのだ。
「あんまりなお話だから」
「思うのね」
「ええ」
 そうだというのだ。
「生き地獄なんて誰も味わいたくないわよ」
「お姉ちゃんでも」
「苦労は金を出しても買えっていうけれど」
 若い時のそれはだ、それがその人の成長につながるからだ。
「これは苦労どころかね」
「生き地獄だから」
「生き地獄なんて味わったら」
 その場合はというのだ。
「トラウマになるわよ」
「苦労して成長するんじゃなくて」
「トラウマ受けてね」
「心が歪むわね」
「そうなるから」
 だからだというのだ。
「本当にね」
「生き地獄は味わうものじゃないわね」
「苦労位はいいけれど」
「苦労の上にあるの、生き地獄」
「そうじゃないの?」
 妹に対して言った。
「トラウマになる位だと」
「そうね」
「お姉ちゃんも思うわね」
「酷いお話だしね」
「酷過ぎるわよね」
「だから今も言ってるし」
 それにというのだ。
「聞いただけでね」
「忘れられないわね」
「ええ」 
 妹に答えた。
「本当にね」
「恋愛ってね」
 夜空はさらに言った。 
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