| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

富士の樹海は出る

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二章

「あの人が何かわかるな」
「ああ、俺もな」
「だからだ、いいな」
「それじゃあな」
 文字通りそそくさとだった。
 二人はその場を後にした、そしてその人からかなり離れてからだった。衣川は橘に対して強い声で話した。
「ここは遭難するところでな」
「それだけじゃないよな」
「自殺の名所でな」
 そうでもあってというのだ。
「こっそりと殺した人の亡骸をな」
「捨てたりするらしいな」
「そうした場所でもあるからな」
 あからだというのだ。
「ああした人もいるんだよ」
「幽霊か」
「何でも自衛隊の人が入るとな」
「訓練でか」
「結構見るらしいな」
 衣川は何を見るかも話した。
「仏さんを」
「自殺したり捨てられた人か」
「あの人がどうしてあそこにいたかは知らないがな」
「それでもか」
「どっちにしてもいい死に方をしていない」
「怨霊か」
「だからこっちを凄い顔で見てたな」
「怨めしそうな」
「若し近寄ったりしたらな」 
 その時はというと。
「何されるかわからないぞ」
「祟られるか」
「それか連れて行かれるかだ」
「あっちの世界にか」
「ああ、ああした人もいるからな」
 それ故にというのだ。
「ここはな」
「注意して行かないと駄目か」
「若し一人で迂闊に入れば」
 樹海の道以外の場所にというのだ。
「本当にな」
「よくないな」
「ああ、変なことになりたくなかったらな」
「遭難だけじゃないな」
「連れて行かれたくないならな」
 このことも言うのだった。
「本当にな」
「迂闊に樹海に入らないことだな」
「ああ、じゃあ帰ったらお祓いしてもらうか」
「怨念受けたかも知れないからか」
「そうだ、何か一番怖いか」
 衣川は真剣な顔で話した。
「俺は怨念だって思ってるんだよ」
「樹海以上にか」
「ああ、樹海も怖いがな」
「そこにある怨念はか」
「もっと怖いしそれを見たからな」
 こちらに明らかに向けられているそれをというのだ。
「だからな」
「ここはか」
「帰ったらな」
 そうしたらというのだ。
「もうな」
「お祓い受けないと駄目だな」
「さもないとな」
 そうしなければというのだ。
「怖いぞ」
「これからどうなるか」
「怨念は馬鹿に出来ないんだ」
 こう話して二人は実際にだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧