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帝国兵となってしまった。

作者:連邦士官
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19


 イスパニアの空の下、飛び上がるはずの日はもう低く、夕方に突入部隊を用意した。爆撃機の一部には搭載量いっぱいにレーダーや無線装備を無理やり詰め込んだ空を飛ぶ司令部とも言えるほどの装備だ。

 爆弾槽に斜めにつけた機銃が見えている。そして、別の戦闘機にはベニアなどを合わせて作った増加槽を付けて航続距離を確保した。空を飛ぶ準備は万端だ。

 「回せー!」
 一気にエンジンが暖まる。そして回りだし轟音が響き渡る。首都マドリッドーリ強襲部隊はすかさず乗り込む。この部隊は降下部隊は魔導師20人とオルトーの部下の空挺兵10人からなる小規模部隊だ。まぁ、チャンスは一回だ。

 「中佐、大丈夫ですか?これは楽しいフライトになりそうでさぁ。」
 俺が乗る機体の機長のオステルカルプ少佐が余裕綽々とばかりに飛び立つ、フワフワと全然不安も何もない慣れたように飛ばす。横を見ると僚機のメルダーツ機も一切の乱れもなくロッテを構成してる。さらにもう一個指定したようにロッテが合わさり、シュヴァルムを組んでいる。

 「楽しいフライトかそれは良いことだ。機体に砂糖と脱脂粉乳を混ぜてくくりつけておけ、帰る頃にはアイスクリームができる。イスパニア首相をアイスクリームで出迎えてやろう。アイスクリームは旨いからな、イスパニア首相がアイスクリーム目当てにこちらに投降してくれるかもしれんさ。」
 それにオステルカルプが笑い声を上げてゴーグルをつけるとこちらに振り向いて彼は機体が出す轟音に負けないように叫んで伝える。

 「皆!ジュシカ中佐からの命令だ!機体に缶と砂糖と脱脂粉乳をくくりつけておけ!アイスクリームができてそれが溶ける前に対象をエスコートできるそうだ!我らが中佐殿は大使館に何年もいただけはあるのだ!外交がなにか知ってる!総員、アイスクリームの缶は落とすなよ!機体を落とされるバカがいたらアイスクリームが食えなくなるぞ!それに中佐はエスコートするそうだから、大使館が大好きなワインやウィスキーぐらい奢ってくれるはずだ!落ちたら野郎どもの取り分が増えるぞ!女ならともかく、むさっ苦しい野郎に酒を奢るんじゃないぞ!出撃用意!中佐、なにか言うことはありますか!」
 なかなか、煽って場を作ってくれる。まぁ、酒はあまり飲まない主義だからそこそこ備蓄はある。何だかんだ気がいい奴らだな。

 「オステルカルプ少佐から聞いたな!こちらの財布をイスパニア共同体のように破綻させるつもりなら、誰一人落ちるなよ!これから死地に入る!空の上では誰でも平等だ!そして、イスパニア共同体にも我々は平等だ!平等に死を与える死の司祭だ!この部隊には今は名声もない戦績もない!しかし、これは今日までだ!今あるのは目の前に広がる星のような夜空だ!空にある宝石の様な星は伸ばせば手が届く範囲にある。間違いなくこれは上手くいくだろう!私には夢がある諸君ら全員と中央参謀本部の不味い食堂で料理を食べるという夢が!」
 各機から「勘弁してくれ!パン種とタマゴをくれたら俺が作りますよ!」「食材の墓だ!」「おうちで食べたほうがうまいぞ!」「おもひでにしかならないボロだ!」などと笑い声があがる。

「君たちの昇格は耳をすませば聞こえてくるだろう。隣だ!我々は千にも満たない集団で風の谷にいる。一人ひとりが戦記の主人公だ。イスパニアは崖の上にある。諸君らの宅配により、崖の坂からイスパニアを救い出せる。すべての共産主義の赤い豚を天空に動く城にいると思ってる奴らを地に落とす!風が立っている!君たちはどう生きるか?帝国に、いや故郷に実家にあの畑や石畳に山で川で草原で全てにおいて思い出があるだろう!その恩返しのときは今だ!イスパニアは土台が腐った納屋だ!ルーシーの威光を借りて暮らしている借りぐらしにしか過ぎない。星は買えないあの静かな空の上の星を!街という金色の穂波が作る人々の営みの星の海は君たちの腕にかかっている!星は我々とともにある!イスパニア共同体が囲い込んでいる人間には素晴らしき才能を持つ人間がいるかもしれないがそれを阻害しているのがイスパニア共同体だ!これは人の尊厳の戦いなのだ!最後に言う、国や軍に忠を尽くせとは言わない。我々が人間であるために人間としてヒトを‥‥そう、ヒトを救うのだ!これはヒトによるヒトのための戦いである!最後に言う!人の世は人で決めるべきなのだなら、やるべきことはわかっているはずだ!以上!」
 俺が座席に着くと加速をして機体が風を登り、気流の風の谷を通り、上昇する機体は雲の海を抜けてミルキーな雲を隠れ蓑にして、マドリッドーリを目指す。

 機体の機銃を確認するために各機が曳光弾を混ぜた弾を撃ち、銃弾が作る光線がまるで、雲を部隊にしたライブスタジオのライトのように彩る。だとするならばここからマドリッドーリ辺りにつくと降下するのだから、ステージの奈落に向かって沈んでいく集団か。奈落は奈落でも、その先にあるのはどちらの奈落なのかイスパニア共同体の奈落なのか、それともこちらの奈落なのか。

 雲を見ながら考えていた。こんなにも空は穏やかで、下は大地の風が吹く。月光が機体を優しくも艶めかしく、妖しく照らす。その光を頼りに全機いるのを確認する。今はこの光こそがこちらを導く救いの手なのだ。神の導きよりも苦難に満ちた闇夜の月光の中で考える常世への抗いから生まれる決断のほうが尊いのだ。何も知らない人のほうが全知の神の決断より意味がある。人が星なら神は何だ?太陽か、この月か?それとも大地か?いや違うだろう。神はこの世界には居ない、神が居るのならばなぜ人は争う?いや、神も子離れするべきだ。我々には我々の道理がある。神にも神の道理があるのかもしれないが、我々には関係ない。もう、神話は終わったのだ。

 英雄が時代を作るのはもうない。一般人の俺は分からないのだ。英雄になれるとしたら、英雄になるべきだとしたらやはりターニャ達だろう。俺は単なる一般人にすぎないのだから。

 濃紺の夜空が青く見える、瞬く星々が何かを伝えるためのモールス信号のように光を放ち、まるで体が穿たれた様に金縛りのような感覚が一瞬したが無視をする。なんの意味も持たない感傷ならばただまぶたを閉じてゆっくりと息を吐いて肺を空にして流し込む、空気が薄い場所はこうしたほうが素早く吸える。そうかなるほど、寒さで頭が冴え渡る。大統領府と奴らの本部があると思われる地下鉄に部隊を分ける。星の輝きが俺に力をくれたならば、星から与えられたものは星でなくては奪えないだろう。

 あれは流れ星か彗星か。どちらにせよ、やることは一緒さ。死ぬときは死ぬのだから不条理に理不尽に死ぬこともあるかもしれないがそれは人の手で、人のやり方で人は死なねばならない。人の世は人でやれる!死ぬ原因は自然と人で十分だ神が入り込む余地はない。

 雲の海に浮かぶ夜空の航海はそろそろ終わろうとしている。機器が示す場所はそろそろイスパニア首都ということだ。つまりは始まりだ。そして、これは失敗するだろうから終わりでもある。


 「オットーはリーデル達と共に大統領府に行ってくれ。小官は敵の拠点になっているだろう地下鉄に向かう。総員、戦闘開始!信じたいもののために戦え!終わりに出るであろう小官の財布を破産させるための酒のためにとかな!」
 冗談を言うとまず市民に逃げる暇を与えるために魔力による宣言を開始した。

 「これより、ダキア義勇軍はマドリッドーリに爆撃を開始する!15分後に爆撃をする!非戦闘員は退避されたし!非戦闘員は退避されたし!15分を過ぎていた場合は戦闘員とみなされる危険性がある!諸君らを傷つけたくはない!」
 言うとすぐさまに逆さ吊りのように深く深く空に沈んでいく、対空砲や機関銃は全く動きを見せない。何が起きてるのかわからないのだろう。
 
 サーチライトが空を照らし出すが高度があってないのか右往左往している。こちらが潜入している間に爆撃を始めるだろう。そうすれば対空陣地が丸裸だ。そこに爆弾を叩きつけるのを命じてあるからやれるはずだ。

 僚機になった魔導師で何故か全身黒く染めてるやばめなやつのエドワードと他3名と共に駅前の教会の鐘があったであろう入り込むと鐘楼のはしごを通り、全員下に降りた。そして、もっている小銃からステンガンもどきとC96もどきに皆、持ち替えた。そして、街へ出る。

 頭が冴える。
 
 「曲がり角から中隊規模が来る。グレネードを使うぞ。」
 手榴弾を3つ、投げると曲がり角から曲がりきらずに敵が木っ端微塵になる。

 「なぜ、中佐わかったんですか?」
 そんなものは知らない、昔からこうだっただけなのに理由を聞かれても‥‥。

 「さぁな。単純に勘がいいだけさ。音で気がついたのかやってくるぞ、こっちだ!」
 大してきたことはないが勘が告げるままに下水道に入ると思い出した。それは‥‥。

 「ここら辺に前は駅への道があったはずだ。まだ瑞々しいはずだ。叩いて音を聞いたらわかる。」
 持っていた銃をしまい、壁を触る。新しい壁や奥が空洞の壁は音が違う。だから簡単だな。これでもコンクリート診断士だって持っていたしな。そういえば俺は資格コレクターだったな。

 目星をつけて耳を当てて叩くと魔力で殴り、壁をぶち抜いた。線路が見える。当たっていたようだ。

 「なんと!これで敵まで一直線だ。」「これはいい。」「敵はすぐそこだな。」「オートミールぐらいするすると入れるな。」
 それより、早く準備したらどうだろうか?事は一刻を争う。

 「これより本格的な作戦を開始する。気を抜くなよ防殻があるとはいえ、敵は数が多い。もしかしたら、自爆するぐらいイスパニア共和国に忠誠を誓っているものもいるかも知れんさ。」
 そして、腰につけたバールと手斧を引き抜くとハンドサインで駅の構内の照明を狙わせて、同時に手榴弾を投げ込む。爆発音が聞こえ、敵の悲鳴が木霊する。知ったことか。これが戦いだ。

 手斧を投げると無線機が火花を出す、あたふたする敵を知り目に駅に上がるとバールで近くにいる敵をかち割る。そして、その死体を盾にそれが腰につけていた拳銃を引き抜くと全弾を撃つ。

 「我々はダキア軍先遣連隊である。至急、貴殿らに降伏を要求する。」
 混乱させるために降伏勧告をする。相手が戸惑う間に他の隊員が駅に登ってきたので目的は果たした。それに本当にここで彼らが降伏をしたならばこれ以上無駄な内戦は起きなくて済む。

 帝国軍と連合王国軍の監視下の元に彼らは置かれるから戦わなくていいわけだ。ならそれは平和ではなかろうか?作られた平和かもしれないが、帝国も連合王国も議会制を訴える国だ。これにより、彼らに政治的な解決をする余地ができる。選挙だって不正をそこでしないだろう。少なくても連合王国も帝国もそこまで馬鹿ではない。必要な地点さえ租借出来れば、租借関係が続く安定した国家を作ろうとするだろう。

 租借は屈辱的かもしれないが対外上、二国はイスパニアに使用料を払うだろうし、経済発展もさせるだろう。外資かもしれないが産業がアレなイスパニアに置いては市民生活の向上がなるやもしれないのだ。それに帝国と連合王国は経済的にも行き詰まるのはわかるからすぐに開放されるからこの地獄よりはマシかもしれない。

 「降伏はしない!撃て!」
 スーツの男性が叫ぶ、あれは資料にあった大統領ではなかろうか?ここに来て逃げ出しもせずに真正面から来るとは‥‥。

 防殻で弾き返す。魔術師が来るまでの時間稼ぎだろうがそうはいかん。直ぐさま、銃を引き抜くと周りの護衛を撃ち抜く、そして、大統領は護衛に押されて逃げ出したようだった。

 なかなかやるな護衛。

 「敵ながら自分の命で大統領を逃がすとは‥‥。目的は果たせなかったが仕方ない。時間も少ないから行くぞ。」
 そう言う間に部隊員はこの総司令部にあった資料などを纏めていた。

 「中佐!あそこの倉庫に戸籍や省庁のデータに思われる資料があります!持って行かせてください!」
 頷くと更にそれらも纏めた。持ちきれなかった分は爆破したがもしや、軍服を着てはいたがここにいたこいつらは省庁の上の方の役人と兵站係の軍政家ばかりなのか?とすると一気に高級官僚と兵站管理者が60人ばかりいなくなったことになるが大丈夫か?

 「もうそろそろ時間だ。行くぞ!エドワード、何をしている?」
 黒ずくめのエドワードがゴソゴソと何かをしていた。黒ずくめというと異様な格好をして男二人でジェットコースターに乗るガバガバを思い出すな。

 「武器庫を見つけたので少し仕掛けを。」
 まぁ、なんでもいいから行こうか。

 「作戦は失敗した。爆撃が始まる前に退く。総員退却!」

 こうして入ってきた下水道から、地上からは対空砲火が空からは爆弾が降る中を上昇し、全員が無事に作戦は失敗をして、予備役に入るための帰還をしたはずだった。

 「オルトー!なにを!」
 基地についたオルトーからの報告を聞くまでは。 
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