八条学園騒動記
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第七百四十八話 球種は三つだけその三
「シュートも投げたそうだが」
「ストレートとカーブだけだったの」
「そのカーブ、ドロップだったそうだが」
この時代では落ちるカーブとも呼ばれるものだ。
「滝から落ちる様とも三段曲がったともな」
「言われていたの」
「そう言われている、そしてストレートはな」
この球種はというと。
「かなりのノビで一六〇はだ」
「出ていたの」
「そう言われている」
「だから皆打てなかったのね」
「そうだった、そして金田正一さんもな」
次にこの投手の名前を挙げた。
「カーブはスローカーブもあったらしいが」
「やっぱりストレートとカーブだけあったの」
「最盛期はな」
「それで勝ってたのね」
「四〇〇勝な」
長い間日本記録であった。
「三振数も桁外れだった」
「やっぱりストレートとカーブだけね」
「現役時代晩年はスライダーやシュートも投げたそうだが」
そして技巧で勝っていたのだ。
「剛速球とカーブでな」
「四百勝いったのね」
「確かにな」
こう前置きしてだ、タムタムはあらためて話した。
「昔と今は違う」
「野球もね」
「連投もなければな」
先発投手のというのだ。
「技術もだ」
「違うわね」
「そうなっている」
「そうよね」
「しかしな」
それでもというのだ。
「やっぱり球種が少なくてもな」
「そのどれもが凄かったら」
「勝てる」
タムタムは断言した。
「それでな」
「そういうものね」
「そうだ、武器になる球種が二つあれば」
例え球種は少なくともというのだ。
「勝てる、金田さんはスローカーブも入れて三つだったが」
「普通のカーブとストレートと」
「この三つでな」
「勝てるのね」
「しかも緩急も出来る」
これがかなり武器であることはこの時代でも変わらない、速いボールに馴れてからのスローボールは非常に大きな武器になるのだ。
「それならな」
「余計にいいわね」
「だからな」
それでというのだ。
「金田さんは四百勝出来た」
「そうだったのね」
「そしてコーファックスさんもな」
彼もというのだ。
「同じだ」
「その三つで勝てたのね」
「三つしかなくてもな」
またこう言うのだった。
「三つ全部が凄いとな」
「勝てるのね」
「実際そうだ」
フランツも話した。
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