英雄伝説~黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達~
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第28話
~黒龍城塞・最奥~
「リィンの”鬼の力”や”女神の力”を解放した姿、いや―――――」
「それすらも比較にならないとんでもない姿になったようだね……」
「アーロン……さん……?」
「下がりなさい、アニエス!その者はもはや”人”ではなく、”魔人”です!」
「その通りだ。人を超えし存在――――――煌都に君臨する魔人”大君”だ。」
魔人―――――”大君”を目にしたクロウとアンゼリカは厳しい表情で呟き、呆けた様子で大君を見つめるアニエスにメイヴィスレインが警告し、アレクサンドルが宣言した。
「ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲッッ!!!」
「うあっ……!」
「ッ……!」
「この威圧、下手をしたら”魔神”に迫るかもしれません……!」
咆哮を上げると共に凄まじい威圧を放った大君の威圧にアニエスとフェリは本能的に圧され、リタは真剣な表情で分析した。
「あはは、イカスねぇ!”聞いていた”以上じゃないか―――――!」
「……主目的の一、クリアだな。後は”彼”がラングポートを――――――東方人街を破壊するのに任せるのみ。」
「……!」
「それが”次”のシナリオか!」
一方大君の降臨にヴィオーラは笑い、アレクサンドルが口にした言葉を聞いた仲間達がそれぞれ血相を変えている中フェリは目を見開き、ヴァンは厳しい表情で声を上げた。
「そうさ、40年前にあった”大君”黒月たちとの死闘の再現!ゲネシスとやらがソイツの元にあれば殺した相手を屍鬼に変え支配下に置ける!いかに今の黒月の規模でも相当手こずるのは間違いないだろうさ!」
「そこまで至ればギルドに警察、海軍、そしてメンフィル帝国の”本国”からの正規軍すら出張ってくるだろうが――――いずれにせよその混乱に乗じて俺達は黒月の長老どもを仕留める。」
「そ、そこまで狙って……!?」
「クソが……!よくできてるじゃねえか!」
「しかも死者達をも利用しようとするなんて……許せない。」
「”結社”の連中ですらも、数年前のエレボニアの内戦やヨルムンガンド戦役もそうだが、”クロスベル異変”や”リベールの異変”ですら”そこまで”しなかったってのに、それを平然とやろうとするとかもはや”結社”の連中以上にヤバイ連中じゃねぇか!」
「そうだね。メンフィル帝国もそうだけど、クロスベル帝国もたかが一マフィアの撲滅の為に”あれ程の戦力”を集めた事も決して戦力過剰では無かったようだね。」
ヴィオーラとアレクサンドルが語った計画を知ったアニエスは驚き、ヴァンは厳しい表情で声を上げ、リタは静かな怒りを纏って呟き、厳しい表情で声を上げたクロウの言葉に同意したアンゼリカは真剣な表情で呟いた。
「ヲヲヲヲヲッ………」
するとその時唸り声を上げた大君がヴィオーラとアレクサンドルに攻撃を仕掛け、大君の攻撃を二人はそれぞれ回避した。
「!危ない危ない……」
「……どうやら俺達への怒りもまだ持ち合わせているようだな。前世と今生の想念と魂が渾然一体となっているようだ。」
「クク、ちょうどいいじゃないか。良い火種になってくれそうだ。滅ぼされた”先代”の恨みと融合して文字通り煌都を紅蓮に包むくらいのね。」
大君の様子を目にした二人は跳躍して屋根に着地した。
「―――――これが最後だ。このまま煌都から離れるがいい。」
「アハハ、尻尾巻いて逃げさえすればアンタたちだけでも助かるかもしれないよ!?」
ヴァン達に忠告をした二人はその場から撤収した。すると大君は攻撃目標をヴァン達へと変えた。
「―――――だ、そうだが?」
「退けません……!」
「”ゲネシス”もですが――――――何よりアーロンさんをあのままには!」
「契約者であるアニエスの意志もそうですが、”天使”であるこの私が大勢の人々を傷つけようとすることが明らかな”魔人”を放置するとでも?」
二人が去った後ヴァンはアニエス達に確認したが、三人は予想通りの答えを返した。
「ったく、予想通りのお返事だ。”エースキラー”の連中もそうだが、リタの共闘の続行は期待していいんだよな?」
「へっ、当然だろ!」
「ったく、こんな化物とやり合うなんて想定外過ぎだが………故郷の独立の為にも、北の猟兵はメンフィル帝国への積極的な協力を示さなければならないからな……!」
「死者達の安らぎの為にも、私もここで退くことはできません……!」
アニエス達の意志を確認したヴァンはクロウ達に確認し、ヴァンの確認に対してクロウとマーティン、リタがそれぞれ答えた。
「フェリ、メイヴィスレイン!”北”の二人とリタと協力して何とか時間を稼ぐぞ!アニエスはエレインと黒月、アンゼリカはクレア少佐に通信を、クロウはお前さんの”相棒”を――――――」
全員が大君と戦う意志を確認したヴァンがアニエス達にそれぞれ指示を出したその時大君の目が怪しく光った。
「っ!?」
「させませんっ!」
「チッ!下がれっ!!」
大君の様子に逸早く気づいたヴァンはシャードによる防護結界、メイヴィスレインは片手で簡易結界を瞬時に展開したが大君が繰り出した強烈な一撃によってすぐに破壊されて吹き飛ばされ、クロウ達は間一髪のタイミングで回避に成功した。
「あうっ……!」
「万全でないとはいえ、まさか私の結界が易々と破壊されるとは……!」
「アニエスさん!」
吹き飛ばされて地面に叩きつけられたアニエスは呻き声を上げ、メイヴィスレインは表情を歪めて呟き、フェリはアニエスを心配して声を上げた。するとその時大君はアニエスに狙いをつけたが
「させるかよっ!らああっ!!」
大君の注意を自分へと逸らす為にヴァンが大君に攻撃を仕掛けたが連続攻撃の後に放った最後の一撃が回避された。
「!!?ッ」
ヴァンの攻撃を回避した大君は反撃に強烈な一撃をヴァンに叩き込んだ!
「カハッ……!」
「ヴァンさん……!」
「クソッ、間に合うか!?来な、オル――――――」
「アニエスさん、ゲネシスが……!」
強烈な一撃を叩き込まれた壁に叩きつけられたヴァンは呻き声を上げ、ヴァンを心配したアニエスは声を上げ、厳しい表情で呟いたクロウが何かを呼ぼうとしたその時アニエスが常に携帯しているゲネシスが光を放ち、光に気づいたフェリが声を上げた。
「……デタラメ……過ぎんだろ……」
「あーあ、また無茶してるわねぇ。」
自分に近づいてきた大君を睨んだヴァンが呟いたその時聞き覚えのある声が聞こえるとその場の空間が停止した。
「これは……」
「大君――――――いえ、”この場が停止している”………?」
「おいおい、一体何が起こっていやがるんだ……!?」
空間が停止した事にアンゼリカやタリオン、クロウがそれぞれ驚いたその時メアがヴァンの傍に現れ
「”妖精”………?」
「いや……ホログラムか………?」
メアの登場にリタは不思議そうな表情を浮かべ、マーティンは真剣な表情で推測を口にした。
「ッ……したくてしてるわけじゃねぇっつの……!」
一方ヴァンはメアに反論し
「また出た……!」
「メアちゃん……!」
「やはり彼女が具現化するには、何らかの条件が必要なようですね………」
メアの登場にフェリとアニエスはそれぞれ声を上げ、メイヴィスレインは真剣な表情で呟いた。
「えっと、それこそ悪夢みたいなヤツがいるけど……どうするの?」
大君に気づいたメアはヴァンに問いかけ
「言うまでもねえ――――――行くぞメア公!」
「りょーかい、アタシに――――――って今なんて言った!?」
ヴァンの答えを聞くとグレンデル化を始めようとしたがヴァンが自分に向けたある言葉を聞くとヴァンを睨んだ。
「メアちゃん……私にも手伝わせてください!」
「ってまさかの加勢!?ああもう、諸々やってやるわよ!シャード解放――――――悪夢を纏え(テイクザグレンデル)!」
更にアニエスの申し出に驚いたメアだったがすぐに気を取り直してヴァンを”グレンデル”へと変身させた!
「クレイユの時の……!」
「”鬼”……いえ、”悪魔”………?」
「ったく、味方まで化物になるとかもう完全に滅茶苦茶だろ……」
「何にしても事情を知っていそうな助手の方々の様子からして、今の変貌した彼は”味方”と判断して良さそうですね。」
「ハハ、まさかヴァンさんまでリィン君のようになるとはね。」
「いや、ヴァンのアレはリィンの”アレ”と比べたら完全に別物だろ……」
グレンデルの登場にフェリは真剣な表情で声を上げ、リタは首を傾げ。マーティンは疲れた表情で呟き、タリオンは真剣な表情で呟き、苦笑しながら呟いたアンゼリカにクロウが呆れた表情で指摘した。
「これが、”ゲネシス”を通したヴァンさんとの共鳴……」
「”共鳴”……そういえば以前のフェリを加えた時の戦闘では新たな技を使っていたようですが……まさか―――――!」
光を放ち続けているゲネシスを感じていたアニエスの言葉を聞いてある事に気づいたメイヴィスレインは血相を変えた。
「シャアアアアアアアアッッ!!!!」
「ヲヲヲヲヲヲンンンンッ!!!」
グレンデルの登場に大君は咆哮を上げ、対するグレンデルも咆哮を上げた後アニエス達と共に大君との戦闘を開始した!
「―――――♪」
「コォォォォォ……ハアッ!!」
「おし――――――あげていくぜっ!」
戦闘が始まるとフェリがクラフト―――――焔の謠で仲間達に様々な加護を付与し、アンゼリカは気功のクラフト―――――ドラゴンブースト、クロウは蒼き闘気を爆発させて潜在能力を高めるクラフト―――――デスティニーブルーを発動してそれぞれ自己強化した。
「ハッ!フンッ!オオッ、貫けッ!!」
「潰れろ―――――エリアル・レイド!!」
「行くぜ―――――バヨネットチャージ!!」
「滅びよ!!」
大君に接近したグレンデルは拳、蹴り、突き刺しの三連撃、タリオンは跳躍からの強烈な蹴りの一撃を、マーティンはブレードライフルによる回転斬りを大君に叩きつけてダメージを与えたが大君は全身から凄まじい闘気を爆発させてグレンデル達にダメージを与え
「ザイファ駆動―――――セイントアロー!!」
「光よ、炸裂せよ――――――爆裂光弾!!」
「まさに必殺!白露の鎌撃!!」
「ぬっ!?」
アニエスとメイヴィスレインはSCLMで互いのアーツや魔術の威力を強化して大君に放ってダメージを与え、リタは遠距離から地を這う斬撃を放ってダメージを与えると共に怯ませ
「そこですっ!ヒートエッジ!!」
「フフ、これはどうかな?―――――ハアッ!!」
「続くぜ―――――ハアァァァッ……!喰らいやがれ!!」
大君が怯むとフェリがクラフト―――――ヒートエッジ、アンゼリカがクラフト―――――ゼロ・インパクトで追撃し、更にアンゼリカとSCLMを組んでいるクロウがアンゼリカの攻撃が終わると双刃剣の力を解放し、敵を一閃するクラフト―――――アークスラッシュを叩き込んで更なるダメージを与えた。
「懺悔せよ……」
対する大君は何と分け身を作って二人になり
「チッ、”分け身”も使えるのかよ!?」
「一人でも相当な強さなのに、二人になって連携させたら不味いね。―――――一体は私達”エースキラー”で対処するから、残り一体は君達で対処してくれ!リタ君はアニエス君達の方の加勢を!」
「はい!」
「了解!」
「わかりました……!」
分け身を使った事にクロウは舌打ちをして厳しい表情を浮かべ、手分けして対処するべきと判断したアンゼリカはアニエス達に呼びかけ、アンゼリカの言葉にアニエスとフェリ、リタはそれぞれ答えた後二手に分かれて大君の対処を始めた。
「ヌウゥンッ!!」
「!お返しだよ――――――セイッ!!」
「っと!そらぁっ!!」
大君がアンゼリカとクロウに蹴りと共に衝撃波を繰り出すクラフト―――――煌龍気を放つと二人は左右に散開して回避した後アンゼリカはクラフト―――――レイザーバレット、クロウはダブルセイバーをブーメランのように回転させながら投擲して攻撃を叩き込むクラフト―――――ブレードスローで反撃を叩き込んでダメージを与え
「ザイファ駆動―――――エアリアルダスト!!」
「ヌウッ!?」
マーティンは竜巻を発生させるアーツで追撃すると共に竜巻を直撃させる事で大君の足を止めた。
「吹っ飛べ――――――バースト・タックル!!」
そこにタリオンが突進のクラフトで闘気を纏った全身を大君に叩きつけて更なるダメージを与えたが
「オオォォォ……ッ!死ネッ!!」
「な―――――グアッ!?」
大君は反撃に掌に発生させたエネルギー球を叩きこむクラフト―――――剛覇極星撃をタリオンに叩き込んでダメージを与えると共に吹っ飛ばした。
「フフ、これは見切れるかな?ハァァァァァァ…………ッ!!」
「オオオオォォッ……!ヌゥンッ!!」
「……!く……っ!?」
側面から距離を詰めたアンゼリカは風を斬る勢いで怒涛の拳を叩きつけるクラフト―――――ソニックシュートで大君にダメージを与えたが大君が反撃に放った華麗な動きと共に連続で体術を繰り出すクラフト―――――暴爪絢舞でダメージを受けるとダメージを一旦仕切り直す為に後ろに跳躍して大君との距離を取った。
「こいつで凍えなっ!!」
アンゼリカが大君との距離を取ると同時に武器を双銃に変えたクロウが凍気の魔法弾丸を放つクラフト―――――フリーズバレットを放って大君の足元を凍結させ
「ザイファ駆動―――――ロストメビウス!!」
「小癪ナ……ッ!?」
更にマーティンが空間ごと圧縮して攻撃する空属性のアーツを発動させて追撃し、足元が凍結した事に加えて全方位からの圧縮攻撃によって大君は身動きが取れなくなった。
「フフ、これで決めさせてもらうよ!セイッ!ハアッ!ハァァァァァァ…………ッ!」
「この一撃で決める!うおおおおおぉぉぉ……ッ!」
動きが封じられた大君を目にして好機と判断しそれぞれSクラフトを発動したアンゼリカは大君目掛けて蹴りと共に放つ衝撃波を二連続で放った後拳に闘気を溜め込みながら大君との距離を詰め、タリオンは全身に炎の闘気を纏って跳躍し
「ドラゴニックブロー―――――ッ!!」
「骨まで焼き尽くせ―――――スピキュール―――――ッ!!」
アンゼリカは竜気を纏ったアッパーを、タリオンは全身に纏った炎の闘気を叩き込むと共に爆発を起こした!
「オノレ………」
二人のSクラフトに耐えられなかった大君の分け身は地面に崩れ落ちると共に消滅した。
「ヌウゥンッ!!」
「サセルカッ!」
大君がアニエスにクラフト―――――煌龍気を放つとアニエスを庇う為にグレンデルが大君が放ったクラフトの射線上に飛び込んで防御態勢で受け止めて最小限のダメージを受けると共にアニエスを庇い
「鬱陶シイ!死ネッ!オオオオォォ……ッ!」
「グ……ッ!?」
大君はアニエスへの攻撃を庇ったグレンデルとの距離を詰めて追撃にクラフト―――――剛覇極星撃、暴爪絢舞を連続で叩き込んでグレンデルに更なるダメージを与え続けた。
「ヴァンさん!癒しを――――――ホワイトヒール!!」
自分を庇って集中攻撃を受け続けているグレンデルを心配したアニエスは導力杖から回復フィールドを展開するクラフトを発動してグレンデルが受けたダメージを回復し
「焼き尽くせ!!」
大君の側面へと回ったフェリは炎の弾丸を連射するクラフト―――――エイミングヒートで大君に攻撃すると共に大君のグレンデルへの集中攻撃を中断させようとした。
「狙いはそこっ!」
「ガアッ!?」
そこにリタが槍を念動で操って凄まじい一撃を叩きつけるクラフト―――――死角の投槍で大君にダメージを与えると共に怯ませ
「薙ぎ払え!―――――ハアッ!!」
「セイッ!ハアッ!オオオオォォォッ!!」
大君との距離を詰めたメイヴィスレインが大君の側面からクラフト―――――疾風薙ぎ払いを叩き込んで追撃し、グレンデルも続くように蹴り、掌底、咆哮の三連続攻撃を大君に叩き込んだ。
「虫ケラ共ガアッ!ブルアアアアアアア―――――ッ!!」
グレンデル達の攻撃によってダメージが蓄積した大君は紅昏きオーラを纏って回復と共に自己を強化するクラフト―――――武帝功を発動してダメージを回復すると共に自身を強化し
「滅ビヨッ!!」
「「!!」」
自身の一番近くにいるグレンデルとメイヴィスレインには全身から闘気を炸裂させて攻撃し、大君の攻撃に対して二人はそれぞれ後ろに跳躍して回避した。
「ヌウゥンッ!!」
「!たぁっ!」
続けてフェリにはクラフト―――――煌龍気を放ち、攻撃に気づいたフェリは大君への攻撃を中断して回避に専念し
「死ノ裁キを!」
「ふふ、残念ながら”私は既に死んでいますよ?”魂をも凍えさせてあげる――――――氷垢螺の絶対凍結!!」
「オオオオオオオオ…………ッ!!??」
リタには指から急所を貫く紅い光線―――――死点穴を放ったが霊体であるリタには意味がなく、紅い光線はリタの霊体をすり抜け、反撃に放ったリタの絶対零度の猛吹雪を発生させる魔術を受けてダメージを受けると共に怯んだ。
「そこですっ!斬!!」
「輝け、星の光よ―――――エトワールレイ!!」
大君が怯むとフェリは大君に炎の斬撃を叩き込み、アニエスは導力干渉波の光線を発射して追撃し
「神よ、邪悪なる者に裁きの光を――――――天界光!!」
「ガアアアアアアアア……ッ!?」
魔術の詠唱を終えたメイヴィスレインがあらゆる穢れをも消滅させる程の強烈な裁きの光で包み込む最高位の神聖魔術を放つと大君は悲鳴を上げながら怯んでいた。
「ソコダァッ!ダアアアアアアアアアアァァ――――――ッ!ラアッ!!」
大君の様子を目にして好機と判断したグレンデルは全身に蒼き炎を纏って乱舞攻撃を叩き込んで大君を吹っ飛ばし
「オオオオオォォォッ―――――決マリダ―――――ッ!!」
吹っ飛ばした大君目掛けて助走からの強烈な蹴りを叩き込むと同時に蹴りを叩き込んだ。すると大君ごと呑みこむ蒼き炎を発生し、大君の背後まで炎が貫いた。
「ナ……ン……ダト……ッ!?」
グレンデルが放ったSクラフト―――――レイガル・ストライクによる大ダメージに耐えられなかった大君は地面に崩れ落ち、膝をついた!
「ああ……っ!」
「やりました!」
大君の様子を目にしたアニエスとフェリは明るい表情を浮かべて声を上げ
「はぁ……はぁ……何とか……抑え込んだな……」
グレンデル化を解いたヴァンは疲労した様子で大君を見つめた。
「お疲れ様です……ヴァンさん。」
「これでアーロンさんもラングポートも大丈夫ですね……?」
「ああ、後は―――――」
大君の無力化にヴァン達が安心して今後の事を考えようとしたその時大君に再び紅昏きオーラが集束した後何と大君は立ち上がった!
「オオオオオオオオンンンン!!!!!」
「立ち上がった!?」
「クソッ、まさか不死身なのかよ!?」
「いえ、どうやらこの城砦に巣食う怨念が彼に力を与え続けているようです……!」
「そんな………それでは打つ手が……」
「どうする、ヴァン!?その様子だとさっきの化け物化はもう使えないんだろう!?さすがに状況が状況だから”俺の相棒で本気で奴を討伐せざるをえないぞ!?”」
咆哮を上げた大君を目にしたアンゼリカは驚き、厳しい表情で声を上げたマーティンの疑問に答えたリタの分析を聞いたタリオンは複雑そうな表情で呟き、クロウは厳しい表情でヴァンに非情な方法を取るかを確認した。するとその時ヴァンはアーロンの言葉を思い返した。
たまにふと、昏い穴がぽっかりとすぐ足元に開いてる気分になる事がある。根拠があるわけでもねえ……ただの気の迷いか疲れなんだろうが。そんな時、ダチどもや姉貴たちの顔、街の賑やかな明かりも霞んで見えて…………反吐が、でるような気分になっちまう。
俺は俺自身に証明する―――――ダチと共にこの街を守ることによって!俺がこの街に居てもいいんだって!―――――みんなと一緒でもいいんだって!!
あいつらが……オフクロが愛したこの街のモヤを晴らす為にも……頼む――――ヤツらをこの手で追い払うのを手伝ってくれねえか!?
アーロンの言葉を思い返したヴァンは決意の表情を浮かべてアニエス達に下がるように腕の動作で指示をした後前に出て大君を睨んで大君の中にいるアーロンに呼びかけた。
「聞こえてるか、アーロン・ウェイ!」
「ヴァンさん……!?」
「駄目です……!もう声なんて届いて―――――」
ヴァンの行動にアニエスとフェリは驚いたがヴァンは気にせずアーロンへの呼びかけを続けた。
「聞こえてるなら返事しろ!目を覚ましやがれ!」
ヴァンが呼びかけを続けていると大君の胸の部分が光を放ち始め、大君は頭を抱えて何かに耐え始めた。
「お、おれ………ハ………大君……おれハ……大君……」
「反応した……!?」
「ヴァンさんの言葉が届いているようだね……!」
「そのままアーロンさんに呼びかけ続けてください!僅かですが”大君”の中にいるアーロンさんの”魂”が目覚めかけています!」
大君の反応にタリオンは驚き、アンゼリカは明るい表情で呟き、リタは真剣な表情でヴァンに助言した。
「”大君”なんかじゃねえ!お前はアーロン・ウェイだ!”煌都の麒麟児”、”羅州の小覇王”、東方人街の申し子アーロン!散々イキりちらしてたクセに忘れてんじゃねえぞ、クソガキが!」
「戦ワネバ……導カネバ……支配……セネバ………ソレガ……我ガ使命……我ガ……宿命………」
「ッ………甘ったれるんじゃええええッッ!!!」
大君の言葉を聞いてふと自分の過去を思い出したヴァンは大君を睨んで叫んだ。
「宿命!?生まれ変わり!?んなくだらねえモンのためにてめえの人生を差し出すつもりかよ!言っただろうが!あの街に住んでた連中が好きって―――――オフクロさんが愛し、義理の姉さんと過ごすあの街をその手で守って、皆と共にいたいって!―――――なのに全部放り出して化物なんかに壊させていいのかよ!?」
「ッ………」
「アーロンさん、思い出してください!貴方を大事に思っている人は沢山います!アシェンさんにマルティーナさん、ハルさんにジャックさん……東方人街の皆さんに黒月の方々だって……!みんな貴方の帰りを待っています!」
「きっと、今はいないお友達も―――――アーロンさんには、アーロンさんのままでいて欲しいはずです!ですから……負けないでくださいっ!」
「君が私達に喧嘩を売って私が相手をした時も、私が格上である事が癪だと言っていたね。私に”勝ち逃げ”して欲しくないのなら、さっさと戻ってきて私にリベンジマッチを挑んでくるんだ……!」
ヴァンの言葉に大君が怯むとアニエス、フェリ、アンゼリカがそれぞれアーロンへの呼びかけをした。
「それでも、てめえが”大君”を、運命っつー安易な道を選ぶのなら―――――それはただの逃げだ!甘えだ!てめえの足で立てなかった証拠だろう!随分ぬるいじゃねえか、アーロン・ウェイ!!
「……………………………」
アーロンへの呼びかけを終えたヴァンが大君を指差しすると大君は少しの間黙り込んだが
「……好キ勝手……言イヤガッテ………!おれヲ………誰だト……思ッてやガル……おれハ……!俺は……オレは……アーロン・ウェイだああああッッ!!!」
やがて口を開いた大君は胸の部分から強烈な光を放ちながら咆哮し、その瞬間どこからともなく現れた光の球が大君の体に同化した。
~???~
「コイツは……大君……いや”俺自身”の中か……ガキの頃から感じてた”昏い穴”……」
周囲が昏き炎に包まれている謎の空間で目を覚ましたアーロンは周囲を見回した後大君に視線を向けた。
「……許サヌ……我ノ使命……阻マント……黒月……銀……刻ノ…………」
「……”アンタ”も色々あったんだろうな。煌都を愛し、尽くして、それでも裏切られて……だが俺は―――――今の煌都をアンタに滅ぼさせるわけにはいかねぇ。ケリを付けようじゃねぇか、一対一でな!!」
恨み言を呟いている大君を哀れんだアーロンが決意の表情を浮かべて自身の武装である双星剣を構えたその時
「―――――意気込んでいる所悪いけどその決着、私も加わらせてもらうわよ、アーロン!!」
女性の声がその場に響いた後アーロンの傍に現れた光の球体が黒髪の女性の東方人の姿になった。
「な―――――オ、オフクロ………ッ!?一体何がどうなっていやがる……何でガキの頃に亡くなったオフクロが……”俺自身”の中に……!?」
東方人の女性――――――アーロンが幼い頃亡くなったアーロンの母、ユエファ・ウェイの登場に絶句したアーロンは信じられない表情でユエファを見つめて声を上げた。
「フフッ、貴方とマティに看取られる時にも言ったでしょう?――――――『いつまでも貴方達を見守っている』って。幼い頃から大切な息子をずっと苦しめ続けてきた大昔の怨霊には、私も貴方の母として決着をつけたい気持ちは貴方と同じよ。」
微笑みながらアーロンにウインクをして答えたユエファは自身の武装である二つの鉄扇を両手に構え
「先に言っておくけど私の事は心配無用よ。貴方も知っているように私は煌都一の役者にして踊り子よ。”大昔の怨霊の動き程度”、私からすれば止まって見える程遅すぎるわ。」
「……クク、やっぱ”母ちゃん”は最高の母親だぜ!!」
口元に笑みを浮かべて自分の事は心配無用であると告げたユエファの言葉に冷や汗をかいて表情を引き攣らせたアーロンは気を取り直すと不敵な笑みを浮かべて幼い頃に呼んでいた母への呼び方でユエファを呼んだ後全身に闘気を纏って大君を睨んだ。
「あーろん……うぇい……”我”ヲ継ギシ……当代ヨ……宿星ヲ受ケ入レ―――――煌都ニ”裁キ”ヲ――――――!!」
するとその時大君はアーロンを睨んで命令し
「サポートは私に任せて貴方は思いっきりやりなさい、アーロン!!」
「おうよっ!ッッおおおおおおおおおおッ――――――!!」
ユエファの言葉に力強く答えたアーロンは咆哮を上げながら大君へと向かい、ユエファと共に大君との決戦を開始した!
「らあああっ!百華斬!!」
「グッ!?ヌゥンッ!」
「!!」
先制攻撃に怒涛の連続攻撃を大君に叩き込んだアーロンは反撃に大君が振るった拳を側面に跳躍して回避した。
「ザイファ駆動―――――アビスフレイム!!」
「ヌウッ!?死ネッ!!」
そこにオーブメントの駆動を終えたユエファが敵の足元から赤黒い炎を燃え上がらせて攻撃するアーツを発動して追撃し、ユエファの追撃で更なるダメージを受けた大君は反撃にユエファ目掛けてクラフト―――――煌龍気を放った。
「遅いわよ――――――燃えなさいっ!!」
対するユエファは軽やかに回避した後反撃に炎を纏った扇を二連続で放つクラフト―――――双炎旋風を放って大君に更なるダメージを与え
「そらっ!鷹爪脚!!」
「ヌウッ!?」
ユエファの反撃に大君の気が取られている隙に大君の背後に回ったアーロンが大君を背後から蹴って跳躍した後大君に上空からの強烈な蹴りを叩き込み、背後からの強力な攻撃を受けた大君は思わず呻き声を上げて怯んだ。
「焼き切ってやる……!」
「炎よ、舞いなさい……!」
アーロンは続けてクラフトを放つ為に自身の武装に魔力による炎を纏わせ、ユエファは鉄扇に闘気による炎を纏わせながら大君へと向かい
「魔王炎撃波!!」
「龍炎舞!!」
アーロンが強力な炎の魔力を纏った斬撃を放つと同時にユエファは炎を纏った鉄扇を一閃した。
「ガアッ!虫ケラ共ガアッ!ブルアアアアアアア―――――ッ!!」
二人の炎の同時斬撃を受けて思わず声を上げた大君はクラフト―――――武帝功を発動して自身が受けたダメージを回復すると共に自身の能力を強化した。
「滅ビヨッ!!」
「「!!」」
自身を強化した大君は全身から紅昏いオーラを炸裂させて反撃し、大君の反撃に対して二人はそれぞれ後ろに跳躍して回避した。
「死ノ裁キヲッ!!」
「まだまだねっ!」
アーロンのサポートをするユエファを先に片づけるべきと判断した大君はユエファにクラフト―――――死点穴を放ったがユエファは襲い掛かる光線を踊りを踊るような足さばきで危なげなく回避し
「死ネッ!!」
「ハッ!!」
更にユエファとの距離を詰めた大君は続けてクラフト―――――剛覇極星撃を放ったがユエファはバク転して回避した。
「テメェの相手は俺だろうが、大君!そらっ、そらぁっ!!」
「ヌッ!?」
そこにアーロンが双剣に赤と青の霊力を宿して剣圧を放つクラフト―――――双星煌刃で遠距離から大君にダメージを与え
「飛天翔駆!!」
続けて空中へと跳躍した後双星剣を構えて大君目掛けて急降下して追撃を叩き込んだ。
「オオオォォッ!!」
「らあああっ!百華斬!!」
大君は反撃にクラフト―――――暴爪絢舞を放ち、対するアーロンもクラフト―――――百華斬を放って大君による連続攻撃によって受けるダメージを気にせず、大君をひたすら斬り続けていた。
「ザイファ駆動―――――ロストメビウス!!」
「ヌウッ!?」
そこにユエファが放った空間ごと圧縮するアーツによってダメージを受けると共に身体の動きが封じられ
「さあ!上げて行くわよ―――――ハッ!ハッ!セイッ!荒神の舞!!」
続けてSクラフトを発動したユエファは荒々しい舞を舞ってアーロンの気力を大幅に回復し、更に攻撃能力も大幅に上昇させた。
「決めなさい、アーロン!」
「おうよっ!ハッ!セイッ!でやあぁぁっ!舞い上がれ――――――鳳皇嵐舞!!」
そしてユエファの呼びかけに力強く答えたアーロンは止めのSクラフトを大君に叩き込んだ!
「ガアッ!?アリ……エ……ヌ……ッ!!??」
アーロンのSクラフトによってダメージが限界に来た大君は戦闘不能になり、地面に倒れた。
~黒龍城塞・最奥~
「オオオオオオオオオ―――――…………」
アーロンが大君を制圧した同じ頃、現実の世界では大君は断末魔を上げながら消えてアーロンの姿に戻り、更に元の姿から戻ったアーロンから光の球体が現れた後瞬時に屋根の方へと向かい、大君から元の姿に戻ったアーロンは仰向けに地面に倒れた―――――
後書き
今回登場した原作では原作が始まった時点で既に故人ののアーロンの母親のユエファが何故登場できたか等については次回判明します。そして既に察している方もいると思いますが、ザイファだけでなく独自のクラフトやSクラフトもあるユエファもこの物語ではプレイアブルキャラの一人です(ぇ)
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