ヒダン×ノ×アリア
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第3話 感謝とはじまり
前書き
いろいろとグダグダなんですが楽しんで頂けたら嬉しいです。
クルトが誘拐犯を全て気絶させた後、手錠を掛けられていたアリアを解放した。その後、誘拐犯を全員倉庫にあったロープで縛り、警察に連絡し、事件は解決した。
そしてクルトは今、アリアと一緒にオープンカフェにいた。
事件の事情聴取は、ホームズ家という事もあり後日に回され、クルトも、アリアの力で後日という事になった。その事に疑問を抱いていると、アリアがいきなり「付いて来なさい」と言いいだし、そして付いて行った結果こうなったというわけである。
「で、俺になんの用があるんだ?もしかし俺を殺し屋として捕まえようとしてるとか?」
クルトは冗談半分のような口調で言ったが、本音を言えば、多少ビクビクしていた。もしこれでアリアが「ええ、そうよ」と言ったら逃げるしか方法は無くなる。そしてクルトとしてはそんな別れ方は嫌だった。
(あれ?というか何で俺はアリアを殺すっていう選択肢が無いんだ?)
そんな事を考えていると、アリアが口を開いた。
「別にあんたを捕まえる気はないわよ。それにあたしじゃあんたを捕まえる事は出来ないしね」
そこまで言って、アリアの顔が一気に真っ赤になる。
「あ、あああたしが言いたかったのは…そ、そにょ…た、助けてくれて…あ、ありがとって…ことで…」
最後に行けば行くほど小さくなっていくが、クルトの耳がその声をしっかりと聞き取った。
それと同時にクルトの顔も赤く染まっていく。
二人の間に微妙な空気が漂う。
未だ10歳という年齢の二人だが、醸し出している雰囲気は10歳にはあまり似つかわしくない。
そんな中、アリアが急に真面目な顔をする。顔は少しだけ赤いが、それでも真剣さはクルトに伝わった。
「クルト、あんた暗殺者辞めなさい」
その言葉を聞いて、クルトは少しだけ笑う。
暗殺者を辞めろと言われた事よりも、アリアに下の名前を呼ばれた事の方が強烈に心に響いた。そして嬉しかったのだ。
そしてそう思う時点でクルトの心は決まっていた。
「―――そうだな」
「え、そんな簡単に決めちゃうの?」
まさかあっさりとそう言ってくるとは思ってなかったアリアは目を丸くする。
その反応は、クルトとしても予想内のものだったので、思わず苦笑する。
「お前が言った事だろうが」
ぶっきら棒な口調で言いながら、クルトの顔は非常に晴れやかだ。
まるで憑き物が落ちたかのような、そんな顔をしていた。
クルトは最初から気付いていた。いや、気付きながらも目を背けてきた。自分が殺し屋という職業をしたくないという感情から。
(だけど俺はその思いに向き合う事から逃げ続けてきた)
それは単に居場所を失わない為だった。
ゾルディック家は最強の暗殺一家。すなわち、ゾルディック家に必要なのは殺しの技術だけ。それ以外は全て不要。それが教育理念だ。だからクルトは無意識下に恐れていた。殺し屋を辞めれば自分の居場所は何処にもなくなってしまう、と。
(けど、それは違ってたみたいだな。居場所は与えられるものじゃない。自分で掴み取るもんだ。それに、自由に生きられない人生なんて死んでるも同じだ)
短い間だが、アリアの気丈にも、真っ直ぐに正義に生きる姿を見て、理子の自由を掴み取ろうとする覚悟に触れて、クルトは気付いた。傍からみればなんの事はない小さな触れあいの中で、クルトは大切な事に気づけたのだ。
「ほ、ほんとに暗殺者辞めるのね?」
確認するようにアリアが尋ねる。
「ああ、今日をもって俺の殺し屋家業は終了だ。ま、色々面倒な事はこれからも起きるだろうが何とかするさ」
「そ。それなら―――」
「その前に礼を言わせてくれ」
言うやいなやクルトは立ち上がった。
「ありがとうアリア。お前のおかげで、俺はやっと俺を始められそうだ」
「な、なによいきなり。は、恥ずかしいじゃない!」
顔を真っ赤にしてそういうアリアを見て、クルトは思わず声に出して笑う。
「あはは、そんな顔すると思った」
「んなっ!!?あたしの事からかったの!?やっぱあんたは逮捕よ逮捕!!というか風穴よ風穴ッ!!」
ギャーギャー叫ぶアリアを見ながら、クルトは楽しそうに笑う。
その顔はとても楽しそうで、そしてとても嬉しそうだった。
* * *
「まさかお主があのゾルディック家の者とはなあ…」
老人がそう言う。
老人の名前はレズリー=ウィリス。ロンドン武偵局の局員だ。齢六十を超えているが、未だ現役バリバリの武偵で、ランクはS。しかしその戦闘能力はSランク数人が束になっても敵わない程で、ロンドン武偵局ではかなり尊敬されている人物である。
そんな凄腕のレズリーの前に座っている少年…というかクルトは、レズリーを観察し、即座にある確信を抱く。
(このジジィ念能力者か)
まさかゾルディック家以外のまともな念能力者にこんなにもすぐに出会えるとは思ってなかったクルトは、少々驚いた。
(まあ、シャーロックの奴も恐らく使えるんだろうけど、あの時は確信する程じゃなかったしな)
ところで、何故クルトがこんな所にいるのかと言うと、あの後、アリアに暗殺者を辞める宣言をした後、ケジメの一つとして、自首し、今までの罪を償うのはどうかという提案をされた。
それを二つ返事で了承したクルトは、早速警察に行こうとしたが、ここにきて自分が世界最強の暗殺一家であるゾルディック家である事に気づき、急遽ロンドン武偵局に向かった。
そして受付のお姉さんに、「すいません。ゾルディック家の者なんですが、自首しに来ました」と言い放った。だが当然そんな話は信じられるわけもなく、笑われたので、全力で殺気を撒き散らし、その後多少のパニックを経てなんだかんだで今に至る。
「えっと、俺って逮捕されるんですか?」
クルトはとりあえず一番気になっている事を聞いた。
今までクルトは、家の仕来りとはいえ、かなりの数の人を殺してきた。殺してきたのは全員が凶悪な犯罪者や、裏で違法な事をしている政治家や医者等といった者達ばかりだったが、それでも殺人は殺人だ。
「それは実をいうと無理なんじゃよ。普通の暗殺者なら逮捕できるんじゃが、ゾルディック家となるとのう…」
ゾルディック家の理念の一つとして、「金を積まれればどんな依頼を受ける」としているが、その依頼料はとんでもなく、最低でも二十億は下らない。
そしてそれ以上に、ゾルディック家が暮らしている島は、現在世界各国の国の圧力によって地図から姿を消している。
ゾルディック家の圧倒的な戦闘力に目を付けた世界中の政府がその力を自分達の為だけに使おうと考えた為だ。その結果、現在ゾルディック家に依頼を出来るのは、各国の政府と、極限られた秘密組織ぐらいなのである。
そんなゾルディック家の子息、しかも歴代最高の才能を持つといわれる存在を捕まえ、その活動、成長を阻害する事など依頼主達が黙っている訳がない。
「…改めて実感したけどとんでもない家に産まれちゃったな俺」
「かかか!そうじゃのう!」
クルトに言葉におかしそうに笑うレズリーは、直後に表情を「おかしそう」から、「楽しい事を思いついた」ものに変えた。
その表情の変化を敏感に感じ取ったクルトは、嫌な予感が背中を伝う。
祖父であるゼノの時もそうだったが、こういう掴み所のない好々爺が何かを企むと碌な事がない事を、十歳ながらも経験でクルトは知っていた。
「のうクルト。お主、武偵になってみんか?」
その言葉は魅力的…というかクルトには願ってもないものだった。
アリアと出会い、自らの思いに気付いたクルトは、既に武偵になりたいと思っていたからだ。
だからクルトはこの提案に即座に首を縦に振った。
「そうか。なら日本に行ってある人物に教えを請え」
「ある人物…ですか?」
「ああ、その男は元帝国海軍少尉で零戦のパイロット。そしてそのゼロ戦が撃墜された後、旧日本領のブレスク島に泳いで辿りつき、その翌々日に現れた米陸軍300人を1人で食い止めた伝説を持ち、アメリカからは今なお警戒され、〈ダイハード〉と呼ばれておる。名を―――」
―――遠山鐵(まがね)。
後書き
キャラの精神年齢が明らかに10歳ではなくなってます。
申し訳ありません。
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