夏祭りの後
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第三章
「学生時代からね」
「持ってるものなんだ」
「もうずっと着てなかったわ」
「学生時代から」
「そうだったの」
こう話すのだった。
「実はね」
「そうだったんだね」
「それでもね」
「今夜は」
「着てみたけれど」
「いいよ、これからもこうしたね」
夫は妻にうっとりとした顔で話した。
「夏祭りの時は」
「浴衣ね」
「着てくれるかな」
「ええ、あなたがそう言うなら」
妻は微笑んで応えた。
「そうさせてもらうわ。そんなに似合ってるのね」
「似合ってるよ、それに普段と違う君も見られて」
このこともあってというのだ。
「凄くいいし」
「それでなのね」
「これからもね」
是非というのだ。
「夏祭りの時は」
「この浴衣着るわね」
「そうしてね」
夫婦で笑顔で話した、そしてだった。
祭りが終わると共にマンションに帰った、帰ると玲はそのまま服を脱いで浴衣を畳んでからだった。
シャワーを浴びた、彼女が服を脱いで畳む間に夫は先にシャワーを浴びてくつろいでいた、そしてシャワーを浴びた後の妻を見て言った。
「半ズボンとシャツの」
「もう寝るだけだから」
ラフなその服装で言うのだった。
「だからね」
「その恰好だね」
「浴衣の方がいい?」
「いや、旅館の浴衣とか結構暑いよね」
「元々お風呂の後の汗吸わせる服だったそうよ」
浴衣はというのだ。
「どうもね」
「そうだったんだ」
「じゃあ寝る時の浴衣今度買う?」
「そこまではいいよ」
夫は妻に笑って応えた。
「奥さんがそうしたいならいいけれど」
「私もこの格好の方がいいけれど」
「じゃあそのままでね、夏祭りなんて特別な時だから」
「浴衣ね」
「それに相応しい服ってあるから」
それでというのだ。
「普段は普段着で」
「夏祭りの時は浴衣ね」
「それでいこう、じゃあ寝ようか」
「ええ、お祭りの時ご飯食べたしお酒も飲んだし」
「後は歯を磨いて」
「寝ましょう」
夫婦で笑顔で話した、夏祭りが終わった後の二人は日常に戻っていた。もう浴衣はしまわれていた。だがこれからの夏祭りの約束はした、そのうえで共に同じベッドで寝たのだった。夫婦の日常は夏祭りの後も普通通りの穏やかで幸せなものだった。
夏祭りの後 完
2023・10・15
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