ほじくり出される過去
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第三章
「だったらな」
「意に介することはない」
「むしろ誇るべきですね」
「あの時の武勲を」
「ナチの攻撃に怯まずに攻撃したんだぞ」
ナチス=ドイツが率いるドイツ軍のそれにというのだ。
「自ら戦車に乗ってな」
「そして勝った」
「ファシストを打倒した」
「その英雄だからですね」
「あの戦争で恥ずべきことがあるか」
胸を張ったまま言うのだった。
「だったらな」
「このままですね」
「選挙活動を続けますね」
「政策を宣伝し続けますね」
「そうしていくぞ」
本当に全く意に介していなかった、そしてだった。
彼は言った通りに選挙活動を続けていた、だが。
数日後急にだ、マスコミの者達が彼の事務所に殺到した。そのうえで彼に対して聞いてきたのだった。
「あの、二次大戦の時ですが」
「日系人の拘留と人権弾圧を支持されていたのですか」
「そして死んでもいいと言われたそうで」
「ジャップという差別用語を用いて」
「それがどうしたんだ」
ミッチェルは彼等にも悪いと思わず答えた。
「全部事実だ、戦争だぞ」
「戦争なら何をしてもいいのですか」
「人種差別を行っても」
「そして人権弾圧を行ってもいいのですか」
「そう言われますか」
「何を言ってるんだ、俺は戦争に勝ったんだ」
記者達に逆に言い返した。
「武勲を挙げてな、ジャップはファシストに協力してただろ」
「だからですか」
「嫌疑がかかっただけで、ですか」
「人権を侵害してもいいのですね」
「協力していると思えば」
「戦争だからな、大体あいつ等はイエローだぞ」
平然と差別用語を出した。
「汚いイエローに何をしてもいいだろ」
「わかりました」
「では今回の取材は報道させてもらいます」
「そうさせてもらいます」
見ればテレビ局からも取材が来ていた、彼等はしっかりと録画していた。しかも生放送の局もあった。
まさに瞬時にだ、大騒動になった。
「こんな奴が市長候補か!」
「あの街はどうなってるんだ!」
「レイスストか!」
「人権を何だと思っている!」
「白人至上主義か!」
「ナチとどう違うんだ!」
報道が出た瞬間にだった、ミッチェルの発言を知った者の多くが激怒した。そのうえで口々に叫んだ。
「レイシストを許すな!」
「汚らしい元軍人を叩き潰せ!」
「あんな奴を市長にするな!」
「天罰を与えろ!」
「絶対に当選させるな!」
ここで彼が過去に黒人差別を堂々と行っていたこともわかった、すると。
余計に批判が上がった、彼はアメリカの英雄からアメリカの敵になった。
それを対立候補達が次々に批判し。
彼の支持率は底を打った、そして落選した。
「何でこうなったんだ」
「あの、どう見てもです」
「人種的なことです」
「それ以外にないです」
「この落選は」
スタッフ達は落選を知って激怒しているミッチェルに話した。
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