大阪のしゃんしゃん火
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第四章
「同じだよ」
「そうなのね」
「だから出るとしたら」
「落ち武者とかかしら」
「何か言うと出るらしいけれどね」
夜の十二時にというのだ。
「そうじゃないかな」
「そうなのね」
「何か呼ぶと出て来るのなら」
茉由はそれならとだ、二人に話した。乗っている自転車を引きながら二人と一緒にいてそうしてきた。
「心当たりあるわ」
「そうなんですか」
「ええ、だからお寺に入ったら」
それならと松岡に話した。
「私が言ってみるわ」
「そうされるんですか」
「それで出て来るものもね」
このことについてもというのだ。
「察しがついてきたわ」
「妖怪ですか?出るの」
「ええ、ただ出て来ても」
光にも話した。
「別にね」
「怖くないですか」
「取って食べたりしてこないから」
そうした妖怪ではないというのだ。
「だからね」
「安心していいですか」
「ええ」
そうだというのだ。
「私が思う妖怪ならね」
「それならですか」
「そうよ、だからね」
それでというのだ。
「安心してね、大体お寺に出て来る妖怪なら」
「大丈夫ですか」
「お寺は仏様のいる場所でしょ」
「それならですね」
「悪い妖怪は近寄らないわよ、中にいることなんてね」
「ないですか」
「そうよ、だからね」
そうであるからだというのだ。
「安心してね」
「呼べばいいんですね」
「そうよ」
まさにというのだ。
「私が呼ぶから」
「そうしてくれますか」
「お寺に入ったらね」
「じゃあお願いします」
それならとだ、松岡も応えた。そうしてだった。
三人は松岡の案内で寺の前に来た、茉由はそこに自転車を置いて鍵も抜いた。そのうえで寺の境内に入ると。
茉由は真っ暗闇の中で十二時になったことを自分ノスマートフォンで確認するとこう言ったのだった。
「しゃんしゃん」
「そう言うとですか」
「妖怪が出て来ますか」
「そうよ、もう言ったから」
一緒にいる松岡と光に話した。
「これでね」
「出ますか」
「妖怪が」
「そうなるんですね」
「いよいよ」
「ええ、けれどね」
茉由は緊張する二人にリラックした態度で答えた。
「別によ」
「怖がることはないんですよね」
「そうですよね」
「そうよ」
あっさりとした口調で答えた。
「別にね」
「岩崎さんがそう言うなら」
松岡はそれならと頷いた。
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