神々の塔
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第六十二話 緑の迷宮その六
「一番平和や、精神病への偏見はあかんが」
「それでもやな」
「迷惑なキチガイはな」
「そうせんとあかんな」
「そや、ノストラダムスやエドガー=ケイシーの本を読んでも罪にならんが」
そうした者達の予言を紹介した本にしてもだ。
「しかしな」
「人類滅亡を喚き散らすと」
「もうそれでおかしいんちゃうかってな」
「思うことやな」
「それで精神鑑定受けさせて」
そうしてというのだ。
「実際にや」
「おかしいとやな」
「入院させる」
「それで治療やな」
「治らんでもな」
一生そうであってもというのだ。
「世に出たらな」
「害になるな」
「そやからな」
「病院送りやな」
「ああ、というかキチガイを世に出すのもな」
「害になるな」
「喚き散らされたり暴れられたら困るわ」
リーは強い声で言った。
「周りそして世の中がな」
「そこ個性とちゃうんよね」
綾乃も難しい顔で言った。
「個性いうんは人に迷惑かけんもんで」
「そんな喚き散らしたり暴れたりはな」
「ほんま迷惑やしね」
「そやからな」
「そうした人はそうせんとね」
「ほんま箸が転がっても。挙句街を歩いていてもな」
ただそれだけでだ。
「頭の中で人類滅亡の序曲となってな」
「喚き散らされたら」
「迷惑以外の何者でもなくてな」
そうであってというのだ。
「困るんはな」
「周りやね」
「そや」
まさにというのだ。
「そして世の中や」
「個性と侠気は取り違えたァあかんね」
「末期の芥川龍之介さんも個性か」
この作家もというのだ。
「果たして」
「或阿呆の一生とか歯車とか書いてた頃やね」
「あれはあの時の芥川さんの個性か」
「狂気やね」
綾乃もこう答えた。
「どう見ても」
「そや、そやからああなるとな」
「病院に診てもらった方がええね」
「実際自殺したしな」
夏の暑い日にそうした、そしてその没日が河童忌と名付けられている。その芥川の末期の作品の一つの名前が付けられているのだ。
「そうやさかいな」
「狂気に陥っている人は」
「診てもらってな」
精神科にというのだ。
「時としてな」
「入院してもらうことやね」
「そして治療を受けることや」
「人類滅亡を喚く人も」
「そうしてもらってな」
そうしてというのだ。
「一生治らんと思うが」
「治療を受けて」
「治してもらうことや」
「そういうことやね」
「病気は実際にあって」
この世界でも起きた世界でもだ。
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