ハドラーちゃんの強くてニューゲーム
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第11話
破邪の洞窟地下200階に辿り着いたハドラーちゃんとフレイザード2号。
そして、破邪の洞窟を守護するモンスター達を視て舌なめずりするハドラーちゃん。
「んもーう。そんなはしたない事しちゃダメでしょ。折角の別嬪が台無しでしょ」
フレイザード2号の百合萌え女性の同性愛発言に少しは慣れたハドラーちゃんは、フレイザード2号の言葉を無視して破邪の洞窟を守護するモンスター達を吟味する。
(ほほぉ……これは粒ぞろい!なかなかのラインナップ!魔法の筒が足りるかどうか)
それもその筈。
破邪の洞窟地下200階を守護するモンスターは、バグログ、メタルギメラ、デビルウィザード、バラモスエビル、ほうおう、てんのもんばん、ダークトロル、キングヒドラと、どれも1周目のハドラー軍にいなかった上級揃い。どれもこれも欲しくなる。
「こんな事なら、もっと魔法の筒を持って来るんだったな。やはり12本では足りん」
そうこうしている内に、バラモスエビルの内の1体がハドラーちゃんに気付いて仲間のモンスター達に指示を出す。
「って、暢気な事を言っていられないか?」
「殺せ!」
先ずはバグログが先陣を切って鞭を振り回す。
「ケケェー!」
が、ハドラーちゃんは楽々と襲い掛かる鞭を掴んでしまった。
「あ。この黄色いのはいらんな?」
「テ!?……こうなったら……くーたばれ死の呪文♪」
ハドラーちゃんの頭に薄気味悪い呪言が響き渡る。これに耐えられない場合死亡するのだが、
「小賢しいわ!爆裂呪文」
「ギッ!?きっぎゃあぁー!」
一撃で葬られるバグログ。
「アレは流石にいらん」
一方のフレイザード2号は、飛翔呪文を使って複数のメタルギメラ相手に大立ち回りをしていた。
「ちょっと待てフレイザード2号!」
「どしたの?」
「何故お前が飛翔呪文を使える?」
フレイザード2号は頭を掻きながら、まるで質問をするかの様に答えた。
「んー……なんかー、緑色の服を着たブ男が何故か私の頭に浮かぶと言う屈辱を味わわされた途端、いきなり使える様になった」
バラモスエビルにとっては何を言っているのか解らない話だが、禁呪法の使い手であるハドラーちゃんは合点がいった。
(なるほど……俺の1周目のダイ達との戦いの記憶が、フレイザード2号が使える呪文に影響しているのか?)
ありえない話ではない。
禁呪法によって産まれた生物は本来、術者の性格が反映される筈なのだ。
だとすると、先程の緑色の服は恐らくポップの事だと思われる。
(ん?そうなると、フレイザード2号の百合萌え女性の同性愛は、俺がダイやアバンの強さに対するある種の憧れ―――)
「さぁーって!私とハドラーちゃんの愛の営みを邪魔する者を……みんなぶっ殺しちゃいます☆」
ニコッとしながら残酷な事を言っているフレイザード2号を観て呆れるハドラーちゃん。
「やはり違う……フレイザード2号の百合萌え女性の同性愛は、材料として利用した人骨の……素なんだ」
一方、殺されてたまるかと複数のメタルギメラが氷の息を一斉に吐いた。
しかし、
「氷結呪文……火炎呪文」
両手で2つの呪文を同時に発動させるフレイザード2号。
(今度は、あのポップを庇った大魔導士か!?)
それを視たハドラーちゃんが思い出すは、ポップがキルバーンの◇の9を破壊してダイを救おうとした時の呪文。
(使えるのか!?ポップとか言う小僧の最後の切り札を!)
が、この戦いでハドラーちゃんが注意しなければいけない事はそれだけではない。
「あ!いかん!そいつらに止めを刺すな!」
「え?」
メタルの名に恥じない程度の高い守備力と呪文耐性のお陰で命拾いしていたメタルギメラが、攻撃呪文を止めてしまったフレイザード2号に襲い掛かるが、
「イルイル」
その途端、メタルギメラ3匹がハドラーちゃんが持っている魔法の筒に封印されてしまった。
この光景にバラモスエビルが驚きを隠せない。
「な!?……何をしてくれたんだ?」
その質問に対し、ハドラーちゃんはあっけらかんと答えた。
「スカウトだ。俺の下で存分に働くが良い」
体の横で正面に向けた手を開いてエネルギーを溜めるデビルウィザード。
「ぐおおぉーーーーー!」
「ほう!お前極大爆裂呪文が使えるのか?感心歓心!」
「黙れぇー!極大爆裂呪文!」
そして、両手を突き出して巨大な破壊光弾を発射するデビルウィザード。
が、ハドラーちゃんが体の横で両手を上に向けて、両手を弓なりに伝わる炎の柱のようなものを発生させ、それを頭上で両手を合わせて圧縮―――
「ちょ!?……ちょっと待てぇー!」
「待てん。待ったら俺が極大爆裂呪文に当たってしまう……熱がれ!極大閃熱呪文ーーーーー!」
デビルウィザードの極大爆裂呪文がハドラーちゃんの極大閃熱呪文に撃ち抜かれ、何も無い所で破裂してしまう。
「ぐっ!てんのもんばん!」
神々しい金色をしたオッサンの石像が動き出してデビルウィザードを庇う。
が、金色の石像の攻撃を視た瞬間、ハドラーちゃんはガッカリした。
「駄目だな……ガンガディアに嫌われそうな戦い方だな」
ハドラーちゃんが体の横で両手を上に向けて―――
「させるか!呪文封殺呪文!」
その途端、両手を弓なりに伝わる炎の柱がきれいさっぱり消えてしまった。
しかし、ハドラーちゃんは慌てるどころかますます嬉々としていた。
「ほおぉ。赤い方はなかなか賢い様だな?ガンガディアの為にも……貰っておくか」
その途端、デビルウィザードは魔法の筒に封印されたメタルギメラ3匹の事を思い出して背筋を冷やしてしまう。
「何だと!?てんのもんばん!威力増量呪文」
が、それがかえってハドラーちゃんがデビルウィザードを欲しがってしまう。
「ますます欲しいね」
「殺せえぇーーーーー!」
が、ハドラーちゃんは神々しい金色をしたオッサンの石像には興味が無いと言わんばかりに、右腕から覇者の剣を生やす。
「お前!それは確かオリハルコン!何故貴様がそれを!?」
そうこう言っている内に、てんのもんばんを斬り刻んだハドラーちゃんが魔法の筒を3本構える。
「待て!よせ!」
「イルイル」
「やーめーろおぉーーーーー!」
抵抗虚しく、3人のデビルウィザードが魔法の筒に封印された。
その途端、ダークトロルが叫んだ。
「ぐおおぉーーーーー!威力増量呪文!」
「お?自分の能力をちゃんと弁えてるじゃないか?」
ハドラーちゃんは、今更ながら魔法の筒をもっと持って来れば良かったと後悔した。
「やはり12本じゃ足りんか」
ハドラーちゃんが考え込んでいる隙に棍棒を振り下ろすダークトロル。
「ぐおおぉーーーーー!」
が、肝心の棍棒がハドラーちゃんの覇者の剣に斬り落とされた。
「ぐ……」
打つ手を失ったダークトロルは、
「ぐおぉー!」
叫びながら逃げて行った。
「おい!何処行く!?……まあいいか……トロル系は沢山持ってるしな」
情けないダークトロルを見かねたキングヒドラが、5つもある口から一斉に炎を吐いた。
が、それが更なる喜劇……もとい、悲劇を生んだ。
「そう言えば、ヒドラ系はまだだったな」
元々高かった高熱への耐性も、魔炎気を発する超魔生物の能力も使える様になった事で更に高まっており、平然と歩きながらキングヒドラに近づき、
「イルイル」
「グワァーーーーー!」
3匹のキングヒドラを魔法の筒に封印。
「これで、俺の軍はかなり充実するな?」
最後に残ったバラモスエビルが慌ててハドラーちゃんに殴りかかる。
「図に……乗るなー!」
このバラモスエビル、肥満体形の割には行動が素早くて効率が良く、まるで1度に2回行動いているかの様である。
「ほお……少しは楽しませてくれそうだな?」
「黙れ!火炎呪文!」
しかし、ハドラーちゃんの覇者の剣がバラモスエビルの火炎呪文を真っ二つにしてしまった。
が、バラモスエビルは既に体の横で正面に向けた手を開いてエネルギーを溜めていた。
「極大爆裂呪文!」
今度は躱せずもろに食らうハドラーちゃん。
ハドラーちゃんを包む爆炎に、フレイザード2号は唖然とし……そして怒り狂った。
「貴様ぁー!よくも私のハドラーちゃんをぉー!」
が、フレイザード2号が怒って叫んでいる間に、バラモスエビルは凍える吹雪を吐く準備を整えていた。
「かー!」
「火炎呪文!」
バラモスエビルの凍える吹雪とフレイザード2号の火炎呪文がぶつかり合う間に、バラモスエビルは既に凍える吹雪を吐く準備を整えていた。
(え?喉が膨らんで、喉の膨らみが上に?)
そう。バラモスエビルは凍える吹雪を2連発出来るのだ。
慌てたフレイザード2号が氷結呪文で押し返そうとするが、とてもじゃないが間に合わない。
「くっ!」
このままバラモスエビルの凍える吹雪がフレイザード2号に命中してしまう……かと思いきや、
「極大閃熱呪文ーーーーー!」
ハドラーちゃんの極大閃熱呪文が横からバラモスエビルの凍える吹雪を押し祓う。
「何!?」
まさかと思い、バラモスエビルが極大爆裂呪文の着弾点を視た。
その時、爆炎から足音が響いた。それは、爆炎に包まれた者がまだ生きている証拠だ。
「効いてないのか!?わしの極大爆裂呪文が!?」
そして、何事も無かったかの様に姿を現すハドラーちゃん。
「極大爆裂呪文が使えるとは……お前、なかなか見込みがあるじゃないか?」
「おぉーーーーー!」
完全に恐慌状態と化したバラモスエビルが慌てて凍える吹雪を2連続で吐こうとしたが、その前にハドラーちゃんが魔法の筒をバラモスエビルの腹に押し当て、
(は!?速い!?)
「イルイル」
魔法の筒に封じられたバラモスエビル。
それを見て変な安堵の仕方をするフレイザード2号。
「良かった!無事か!?……美しい肌に火傷の後が無いみたいだし♪」
このままだとまた百合萌えの女性の同性愛に走りそうだったので、聞こえぬ振りをして先に進むハドラーちゃん。
「行くぞ」
「そんなぁー……それは流石に冷たかろうて」
ハドラーちゃんとフレイザード2号は、何かに呼ばれた気がした。
「ん?何か聴こえないか?」
「聞こえるねぇ」
声の主を探して視ると、そこには巨大な扉があった。
「まさか、魔宮の門ではないだろうな?」
試しに扉を押してみるハドラーちゃん。
すると、かなり重いがどうやら開く様だ。
「魔宮の門程ではないがこれ程の厳重……いったい何が有ると言うのだ?」
巨大な扉を開けて声の主を探していると、無数の鎖に縛られて宙ぶらりんとなった片開き戸だけであった。
このシュールさには、流石のハドラーちゃんもフレイザード2号も返答に困った。
「門が……拘束されてる?」
「防御を厳重にする……と言うより、罪人を磔にしている様にしか見えんな」
ただ観ているだけでは埒が明かないと思い、片開き戸を拘束している鎖を斬ろうと覇者の剣を生やしたが、
「その扉に触れるな」
先程の呼ぶ声とは違う、まるで拒絶や説教の様な声が響く。
「……誰だ?」
ハドラーちゃんが背後の殺気に気付いて振り返ると、3匹のモンスターに囲まれていた。
紫色のグレイトドラゴン。
水色のカイザードラゴン。
青肌のメイデンドール。
そのどれもが、規格外の貫禄と威厳を放っていた。
「なかなか面白そうだ」
3匹のモンスターがそれぞれ名乗りを上げる。
「わしが竜王の力を得て、この罪深き許し難い罪人の自由を奪った『りゅうおうもどき』である」
「同じく……我、破壊神シドーの力、与えられし……『シドードラゴン』……。この罪深き許し難い罪人の不自由、我の所業……!」
「そして、私が『ゾーマズレディ』。恐れ多くも、ゾーマ様の力を頂き、この罪深き許し難い罪人に手を加えたのよ」
それを聞いて、フレイザード2号が首を傾げた。
「罪人……って……あの宙ぶらりんな扉の事……なの?」
りゅうおうもどきはフレイザード2号の質問を肯定した。
「如何にも!もし、わしと共にあそこにいる罪深き許し難い罪人に罰を与えるのであれば、世界の半分をお前にやろう」
ハドラーちゃんもフレイザード2号も否定や拒否の態度を示した。
「罪人って言っても……ただの扉よアレ」
「ぬかせ。この魔王ハドラー、魔軍司令の時の様な辱めは、もう2度と受けんと決めている!」
が、りゅうおうもどきの次の言葉は、
「……と言いたい所だが、わしにその権限は無い」
それを聞いたフレイザード2号がズッコケた。
「無いんかい!?」
「わしらは、罪深き許し難い罪人の釈放と自由を汚し、其方ら罪深き許し難い罪人を助ける者を阻む為、偉大なる神より生み出された番人なのだ」
今度はシドードラゴンが口を開く。
「我ら……大いなる魔王の力……与えられた……この罪深き許し難い罪人は……解き放たない……」
更にゾーマズレディが続く。
「罪深き許し難い罪人よ!何故この2人を呼び、もがき生きるのか?滅びこそ我が喜び。死に逝く者こそ美しい。さあ、我が腕の中で息絶えるが良い!」
それに対するハドラーちゃんの答えはただ1つ!
「敗れ去るのはお前達の方だ!お陰でますますあの扉の事が知りたくなったし、正直に言ってお前達が欲しくなった……」
そして、魔王としての威厳を取り戻す為に嫌々着ていた魔軍司令時代のマントを脱ぎ捨てた。
「お前達は自慢して良いぞ!この邪魔臭いマントを脱ぐって事は、この俺にその実力を認められた証だ!」
後書き
破邪の洞窟編もいよいよ本番!
……と言うか、ちょっと前までは私がしでかした逢魔窟改悪の片手間に破邪の洞窟に挑むハドラーちゃんの様子を少しだけ入れたって感じになってました。
ここからは、先ほども申し上げた通りの破邪の洞窟に挑むハドラーちゃんの様子のみが続きます。その上、フレイザード2号の能力もこれを機に小出しにしていこうと思います。
後、破邪の洞窟地下200階に登場するザコ敵は、ドラゴンクエストIIIの隠しダンジョン(謎の洞窟、謎の塔)に登場する屈強なモンスター達(バルログのみ例外)であります。
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