アステカの奇貨
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第一章
アステカの奇貨
エルナン=コルテスは戦いの戦利品として多くの財宝だけでなく奴隷も得た、その中に彼はかなり整った外見の女を見付けた。
「あの女は何だ」
「マリンチェといいます」
雇っている地元の者が白い肌に長く濃い髭を持つ彼に答えた。
「かなり出来た娘ですが」
「ふむ、ならだ」
コルテスは今は彼女のその外見、大きな目と高い鼻に黒く長い髪にきめ細かい肌を見て言っていた。
「私のものにしよう」
「コルテス様のものにですか」
「そうしよう」
コルテスは地元の者に話した。
「それならな」
「そうされますか」
「奇麗な娘だ」
コルテスは笑って話した。
「それだけでも充分だ」
「そうですか、それでは」
「うむ、彼女は私に仕えさせる」
こう言ってだった。
コルテスはマリンチェを自身の奴隷にした、彼はすぐに彼女を自分の愛人としたがその中で彼は知った。
「マヤの言葉だけでなくか」
「はい、ナワトルの言葉も喋れます」
マリンチェはコルテスに答えた。
「この辺りで広く使われている」
「そうなのか、スペイン語もすぐに覚えたしな」
コルテスは彼女のこのことをここで話した。
「こうして普通に話せる」
「はい、覚えました」
「そなた言葉に長けているか」
覚えて話すことにというのだ。
「それはいいことだ」
「そうなのですね」
「では現地の者の通訳を頼む」
コルテスはマリンチェに告げた。
「何かある時は常に傍にいてくれ」
「わかりました」
マリンチェは恭しく応えた、こうしてだった。
彼女はコルテスの通訳となり常に彼と現地の者のやり取りを行う様になった、だがそれに留まらずだった。
ある時だ、現地のそれぞれの部族とのやり取りについて考えているコルテスに彼女はこう言ったのだった。
「東の部族にはお気を付け下さい」
「スペインに友好的だが」
「実は反旗を翻そうとです」
「企んでいるのか」
「その東の部族と仲が悪いのが東北の部族です」
コルテスにこのことも話した。
「ですから」
「ここは東北の部族と手を組んでか」
「東の部族にあたって下さい」
一見スペインに友好的なこの部族にというのだ。
「そうして下さい」
「わかった」
コルテスはマリンチェの言葉に頷いた。
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