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ハッピークローバー

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第百十八話 戸籍謄本その十二

「明治から二次大戦までは士族だったしな」
「やっぱり違うのね」
「ああ、武士っていう意識とな」
 それと共にというのだ。
「古いお家だからな」
「許嫁あるのね」
「そういうことだな」
「そうなのね」
「ただ母さんの言う通りうちの様な」
「普通のお家だとないわね」
「ああ」
 そうだというのだ。
「明男には残念だろうがな」
「やっぱりそうか、まあうちなんて本当に普通の家だよな」
「戸籍謄本で調べてもね」
 母はここでまたこの本のことを話した。
「それこそよ」
「普通の家か」
「ええ、あんた達が思うね」
「そうなんだな」
「犯罪した人とかはいないね」
「それじゃあいいよ」   
 明男は何でもないといった顔と声で応えた。
「俺はな」
「そうよね」
「ああ、それに犯罪者いてもな」
 身内にというのだ。
「その人が真っ当ならな」
「いいわね」
「その人が犯罪犯したのかよ」
 身内に犯罪者がいてもというのだ。
「違うだろ」
「その人がやってないならね」
 かな恵も言うことだった。
「それならね」
「いいよな」
「そうよね」
 弟の言葉に頷いて応えた。
「それでね」
「そりゃその人がマジやばい人ならな」
「お断りよね」
「けれどな」 
 それでもというのだ。
「その人がな」
「別に何もないなら」
「それならな」
「本当に何でもないわね」
「そうだよ、その人はその人だよ」
 明男の言葉には毅然とした強さがあった、その声で以て言うのだった。
「もうな」
「その人が犯罪やってないなら」
「もっと言えばその犯罪もタチ悪いのじゃなかったらな」
「それで罪を償って反省していたら」
「それならな」
「いいわね」
「凶悪犯で反省してないならな」
 そうであるならというのだ。
「もうな」
「論外よね」
「そうだけれどな」 
「そうじゃないならね」
「別にな」
 これといってというのだ。
「本当にな」
「いいわね」
「それが駄目って言う方がだろ」
「おかしいわ」
「そうだろ、生まれなんてどうでもよくてな」
 そうしてというのだ。
「戸籍謄本に名に書いてあってもな」
「いいわね」
「そうに決まってるだろ」
「この考え変わらないわよね」
「どう変わるんだよ」
 こう姉に言った。
「一体な」
「実際そうだしね」
「片親とか何だ、でな」
「被差別部落とか外国人とかね」
「汚くないしな」
「汚いってお風呂入ったらいいし」
「それで済むしな」
 奇麗になるというのだ。
「どんな仕事でも犯罪じゃないならいいし」
「問題なしね」
「全くな」
 姉弟で食事の時こんな話をした、そして両親なそれでいいと言うのだった。


第百十八話   完


                   2024・1・15 
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