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ハッピークローバー

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第百十八話 戸籍謄本その七

「意味ないしな」
「何でもないわよね」
「本当にな」
「あんた達その考えずっと持っていなさいよ」
 母は子供達の話をここまで聞いて真剣に述べた。
「何があってもね」
「持っていることなの」
「偏見がないことはいいことだから」
「それでなの」
「ずっとね」 
 これからもというのだ。
「持っていなさいね」
「そうすることなのね」
「そしてね」
 そのうえでというのだ。
「生きていきなさいね」
「だから当然なのに」
「そんなに言うことないだろ」
 二人で母に反論した。
「こんなのな」
「常識よね」
「ああ、片親とか何だってな」
「本当に何なのよ」
「だからそう考えない人がいるのよ」
 母はそれでもと言うのだった。
「何度も言うけれど」
「そうなのね」
「それ差別か」
「そうよ、お母さんだってね」
 自分もというのだ。
「こうしたお話はね」
「嫌よね」
「そうだよな」
「生まれなんてね」
「何でもないから」
「お母さんもそう思うよな」
「ええ、本当にね」
 まさにというのだ。
「そう思うわ」
「昔からそんな話はあったからな」 
 父はここでこの小説の名前を出した。
「破戒とかな」
「島崎藤村よね」
 かな恵は小説のタイトルを聞いてすぐに著者の名前を出した、明治から昭和にかけて活躍した文豪である。
「確か」
「そうだ、その人の代表作の一つでな」
「生まれの作品なの」
「主人公が被差別部落出身でな」
「それでなのね」
「色々悩む作品だ」
 こう娘に答えた。
「当時からだ」
「問題になってたのね」
「被差別部落のことはな」
「そうだったのね」
「見る人は見てな」
 そうしてというのだ。
「問題にしていてな」
「今もなのね」
「残っているんだ」
「そうなのね」
「それで今も愛人さんの子供とかな」
「片親とか」
「外国人とかな」 
 そうしたことでというのだ。
「問題にする人がいるんだ」
「そうなのね」
「しかし二人は違うな」
「だからね」
「何が悪いんだよ」
 また言う姉弟だった。
「犯罪やってないしな」
「別にいいでしょ」
「そう思うならそのままだ」
 子供達に言うのだった。 
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