神々の塔
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第五十七話 音楽の神霊その三
「イタリアらしさのない人やけどな」
「そやな、しかしな」
「マカロニ好きでか」
「チーズマカロニが好きで」
それでというのだ。
「肖像画のあの怖い顔はな」
「あれか、たまたま食ったチーズマカロニがまずくてな」
「実際そやったらしい」
「そうやったんか」
「普通に気難しい人やったからな」
「ああした顔でおること多かったか」
「そやったと思うが」
「あの肖像画はやな」
「そうじた事情があったんや」
「成程な」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「あの人はゲーテさんと仲悪かった」
「それヘッセがよお言うな」
ドイツの星の者の一人、神星として五騎星のリーダー格としてこの世界の欧州で活躍している彼がというのだ。
「頑固者同士でな」
「個性の強いな」
「喧嘩したらしいな」
「一緒に散歩しててな」
この時既に耳が悪いベートーベンさんの大声にゲーテは辟易していたらしい。
「前に貴族の馬車が通ってな」
「確かベートーベンさんはふんぞり返ってたな」
「自分の音楽は万人がひれ伏すもんやと思ってた」
これがベートーベンの特質の一つである尊大さということだろうか。
「それで貴族になんぞと思ってな」
「頭下げんかったな」
「しかしや」
ベートーベンはそうであったがだ。
「ゲーテさんは頭下げた」
「そやったな」
「その貴族の人にお世話になってたからな」
「礼儀を守ったな」
「奏したらベートーベンさんが怒った」
今度は気難しさが発揮されたということだろうか。
「何でゲーテさんみたいな偉大な人物が貴族に頭を下げるか」
「お世話なってたら当然やな」
「しかしベートーベンさんは怒った」
「それでゲーテさんも応じたな」
「お世話なってる人やからって言うた」
「それで喧嘩になったな」
「そやった、大喧嘩になってな」
二人共意固地になって言い合ってだ。
「その結果や」
「ゲーテさん敵に回したな」
「そうなったわ」
「敵にゲーテがおるってええことか」
深く考えつつだ、シェリルは言った。
「果たして」
「大勢敵がおってな、あの人」
「その代表やまな」
「もうゲーテさん位になるとな」
それこそというのだ。
「文句なしにや」
「敵の代表やな」
「そう言うてええやろな」
「そやねんな」
「それでゲーテさんは言うた」
施はまさにクライマックスを語る声と顔で話をした。
「彼は野獣だとな」
「ライオンみたいな顔してるしなあの人」
「しかし労ってやれってな」
こうも言ったのだ、ゲーテは。
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