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第百十七話 運動会が近付きその八

「乃木大将弁当とか」
「日の丸弁当ね」
「あのお弁当あの人かららしいけれど」
「あの人質素だったから」
 軍人らしくと言うべきかその振る舞いが後の帝国陸軍の軍人達の手本とされていたのである。尚当初は遊びもしていた。
「それでね」
「普段は稗や粟を入れたご飯を食べていて」
「お弁当はね」 
 これはとだ、かな恵も話した。
「そうしたね」
「日の丸弁当だったのよね」
「そうなのよね」 
 こう話すのだった。
「ご飯を入れて」
「真ん中に梅干し一つ」
「それだけだったのよね」
「今じゃ究極に質素だけれど」
 それでもとだ、富美子も言ってきた。
「昔は白いご飯自体がご馳走だったから」
「そう、それでね」
 かな恵は富美子にも応えて話した。
「将軍になれば凄く質素だけれど」
「昔はそれでね」
「一般庶民の人からすれば」
 農家の人達である、当時は一次産業の人がかなり多かったのだ。
「それも地方の」
「関西は結構豊かだったからね」
「結構お米食べてたからね」
「奈良県とかね」
「朝から茶粥食べてたしね」
「お米のね」
 お粥であるがそこに雑穀は入っていなかったのだ。
「関西はよかったけれど」
「そうでないところも多くて」
「東北なんて大変だったしね」
「あの頃ね」
「だからよね」
 富美子は神妙な顔で話した。
「乃木大将もね」
「日の丸弁当でね」
「結構奮発だったのよね」
「将軍さんとしては質素でも」
「それで軍隊は白いご飯だったから」
 富美子はあらためて話した。
「そこじゃ普通だけれど」
「地方の農家の人からすればご馳走で」
「軍隊に入れば食べられる」
「そう思っていた人も多かったのよね」
「そうよね」
「そのことは知ってるけれど」
 一華はあらためて言ってきた。
「流石に今はね」
「何それよね」
「ご飯炊いて」
 まずはそうしてというのだ。
「箱に入れて真ん中に梅干し置くだけでしょ」
「それで出来上がりよ」
「それじゃあね」
「料理部としてはよね」
「手抜きも手抜きで」
 そう言っていいものでというのだ。
「文化祭で出したらね」
「ふざけてるのってなるわよね」
「絶対にね」
「だからしないから」
 かな恵もそれはと返した。
「安心してね」
「流石にそうよね」
「まあ楽しみにしていて」
 笑ってだ、今はこう言うだけだった。 
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