風紀委員から
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第一章
風紀委員から
山本香織は極めて真面目な性格である、きりっとした顔立ちでアーモンド型の目と引き締まった唇がやや面長の顔にある。
長い黒髪を後ろで束ねていて制服の着こなしも完璧だ。通っている高校では成績優秀で剣道部に入っていて風紀委員だが。
「うち真面目な学校だからな」
「風紀委員でも別によ」
クラスで自分と同じく風紀委員を務めている坂本敬重に話した、坂本は大柄で丸い顔で太い眉を持っている。柔道部に所属しているだけあってがっしりとした体格であり黒髪はスポーツ刈りにしている。
「やることはね」
「時々朝校門に立つ位dだね」
「ええ、けれど必要よ」
山本は坂本に真面目な声で言った。
「特にやることはなくても」
「風紀委員はだね」
「ええ、油断していると」
「どんな学校も乱れるね」
「だからチェックはね」
これはというのだ。
「いつもよ」
「していないとね」
「そうよ、真面目な学校でも」
それでもというのだ。
「そこはね」
「ちゃんとしてだね」
「やっていかないとね」
いつもこう言っていた、兎角だ。
山本は真面目だった、真面目という言葉がそのまま人間になった様な感じであった。当然悪いと言われている遊びもしない。
そんな彼女だが進路は。
「まずは大学にね」
「進学するんだ」
「そうするわ」
「僕も進学するけれど」
坂本はそれでもと言った。
「体育の先生になりたいから」
「体育学部ね」
「そっちにいくよ」
「私は法学部に行くわ」
「そっちなんだ」
「そうするわ」
「それなら」
そう言われてだ、坂本は言った。
「そこからやっぱり」
「真面目にね」
「生きていくんだ」
「就職してもね」
「それで何のお仕事になるのかな」
「それはまだ決めていないわ」
きっぱりとした口調であった。
「大学に入ってじっくりね」
「考えるんだ」
「そうするわ」
こう言うのだった。
「私はね」
「決めてないんだ」
「そこまではね、ただね」
「ただ?」
「間違ったことするお仕事にはね」
そういったものにはというのだ。
「就職しないわ」
「それは絶対だね」
「ええ、じゃあね」
「大学でもだね」
「頑張っていくわ」
山本は坂本に言った、そうしてだった。
それぞれの進路に進んだ、それから坂本は希望通り体育教師になること出来てそちらで働いた。そして山本は。
「検事になったんだね」
「司法試験に合格してね」
高校卒業から十年後の同窓会の場でだ、山本は坂本に話した。二人共成長した外見になっていてそれぞれスーツを着ている。
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