鍛冶神は強い
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第一章
鍛冶神は強い
鍛冶と火の神ヘパイストスはいつも自身の竈の前に立っている、そのうえでいつも火を前にして何かを造っている。
そんな彼を人間達は信仰しているが一つ疑問に思うことがあった。
「鍛冶と火の神様でな」
「色々なものをもたらしてくれるが」
「ヘパイストス様はお強いか?」
「多くの強い力をお持ちでも腕力はどうか」
「そこはどうあろうな」
「疑問だよな」
こうした話をした、だが。
その話を聞いたゼウスはオリンポスの神々の主の座でその口を大きく開いて笑って言い切ったのだった。
「そんなことは決まっておろう」
「そうですね」
彼の妻であるヘラも隣の席で笑って応えた。
「最早」
「伊達にわしの嫡男でないぞ」
「私達の間に生まれた」
「わしに跡継ぎが必要ならそれはあの者以外におらん」
ゼウスはこうも言った。
「火の力は絶大だ」
「あの子が司るそれは」
「左様、この世にどれだけ強い力があるか」
火はというのだ。
「わかったものではない」
「貴方の雷に勝るとも劣らないまでに」
「そして鍛冶でな」
この技術でというのだ。
「武器も農具も商いの道具もだ」
「何でも生み出しますね」
「そうだ」
まさにというのだ。
「そのことを見てもな」
「ヘパイストスの力はかなりです」
「オリンポスのどの髪にも負けておらん」
「そうですね」
「そして腕力もだ」
こちらもというのだ。
「はっきりと言おう」
「かなりのものですね」
「そうだ、その力たるやだ」
「誰よりも強い」
「人間達がそのことを知らぬことはな」
ゼウスはヘラに笑ったまま言った。
「実に残念だな」
「全くですね」
ヘラもそれはと応えた、だが。
人間はその目で見ないとわからない、だからゼウスがそう言ってもだった。
彼等は信じなかった、それでこんなことも言うのだった。
「地味だな、あの方は」
「神々の中では」
「アポロン様やアテナ様と比べるとな」
「どうしてもな」
「立派な方でもな」
「火や鍛冶のことは凄くても」
こう話すのだった、そしてヘパイストス本人もだ。
彼等の言葉を聞いても特に意に介することなく鍛冶を続けるばかりだった。だがそんな中でだった。
恐ろしいまでの大きさと強さを持つ怪物が出て来た、それはかつてガイアが生み出したテューポーンの様に巨大であり。
かつ百の頭を持ち翼を持つドラゴンの姿をしていた。その怪物を見て誰もが驚いた。
「これは大変だ」
「恐ろしい怪物が出て来たぞ」
「あんなもの人間ではどうしようもない」
「神々に何とかして頂こう」
「ここはそうして頂こう」
こう話して必死に神々に願った、だが神々はそれより前にだった。
その怪物が出てすぐに退治することを決めた、そしてゼウスはヘパイストスに言った。
「あの怪物はそなただけが倒せる」
「だからですか」
「行ってくれるか」
「畏まりました」
ヘパイストスは確かな声で応えた。
「それではです」
「うむ、わしが行こうにもな」
「今はですね」
「少しガイアのところに行かねばならぬ」
その用事があるというのだ。
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