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幽霊列車の車掌

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第五章

「君達は乗れないからね」
「そうなんですね」
「私達は無理ですね」
「幽霊だから」
 列車であってもというのだ。
「どうしてもね」
「それは無理ですね」
「生きている人は乗れないですね」
「そのことは言っておくよ」
 明るいが確かな声で話した。
「そうだってね」
「わかりました、最初から乗るつもりはなかったですし」
「あの世に連れて行かれそうですし」
「幽霊列車ですからね」
「それじゃあ」
「うん、このことはね」
 どうしてもというのだ。
「言っておくよ」
「わかりました」
「そういうことですね」
「最初から生きていると乗れないから」
 そうだというのだ。
「人も他の生きものもね」
「あくまで死んでること前提ですね」
「それで乗れますね」
「そうなんだ、じゃあ今から乗って操縦するから」
 だからだというのだ。
「行って来るよ」
「わかりました」
「それじゃあ」
「また機会があったら会おうね」
 二人に最後は優しい声をかけてだった。
 車掌は駅の方にすうっと宙を浮かんで移動してだった、見れば何時の間にか駅の鶴橋の方に行くホームに停まっている蒸気機関車にだった。
 乗った、すると幽霊列車は動きはじめ煙を出して鶴橋の方に向かった。
 二人で列車が見えなくなるまで見送った、それから仁美は葵に話した。
「いやあ、やっぱりね」
「幽霊列車は蒸気機関車ね」
「ディーゼル車や電車だと風情がないから」
「だからよね」
「車掌さんもそう言ってたし」 
 仁美はそれでと述べた。
「まさにその通りだったのね」
「そうね、ただね」
 葵は仁美にこう返した。
「将来はわからないわよ」
「将来は?」
「だって今リニアよ」
 こちらは実用化されようとしているというのだ。
「これが定着して普及したら」
「ああ、電車とかはね」
「新幹線だってね」
 日本が誇るこの車両もというのだ。
「昔のものになるわよ」
「そうよね」
「そうなったら」
 その時はというと。
「ディーゼル車や電車がね」
「まだ走りたくて幽霊になって」
「こうした場所は知るかも知れないわよ」
「こうした時間帯に」
「そうかも知れないでしょ」
「そうね」 
 葵は仁美のその指摘に頷いて言葉を返した。 
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