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幽霊列車の車掌

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第三章

「静かね」
「そうよね」
 葵もまさにと頷いた。
「至ってね」
「そうよね、それで二時になったら」
「幽霊列車出て来るわね」
「そうね、蒸気機関車のね」
「その列車がね」
「少し早く来たかしら」
 仁美は自分のスマートフォンで時間を確認して言った。
「これは」
「そうかもね」
 葵も自分のスマートファンで時間を確認して応えた。
「これは」
「あと十五分あるわね」
「一時四十五分で」
「早かったかもね」
「まあ二人共厚着してるし」 
 見ればどちらもそうである。
「カイロも持ってるわよね」
「持ってるわよ」
 仁美は葵の今の問いににこりと笑って答えた。
「ちゃんとね」
「じゃあ問題なしね、このままね」
「時間になったら」
「幽霊列車が来るから」
 駅を鶴橋方面に行く方から見つつ話した。
「それじゃあね」
「ここで待つことね」
「あと十五分ね」 
 こんな話をして待つことにした、だが。
 ふとだ、二人のところに誰かが来て言ってきた。
「おい、女の子がこんな時間で何してるんだ」
「いや、幽霊列車見ようと思いまして」
「ここにいるんです」
 二人は声の主に正直に答えた。
「別に悪いことじゃないですよね」
「護身具も持っててすぐに逃げられる様に自転車に乗ってますし」
「幽霊列車ねえ」
 声の主は二人の返事を聞いてから述べた。
「私が今から車掌するけれど」
「幽霊列車の車掌さん!?」
「といいますと」
 二人はその声を受けて声の方を見た、するとだった。
 そこに昔の国鉄の制服と制帽を身に着けた骸骨がいた、二人はその骸骨の男を見て成程という顔になって話した。
「ああ、そうね」
「幽霊列車の車掌さんだとね」
「やっぱり幽霊よね」
「そうなるわね」
「驚かないな、馴れてるのかい?」
「私達八条学園の学生ですから」
「怪談話世界一多いところに通ってますから」
 二人は車掌に今回も何でもないといった声で応えた。
「別に幽霊見ても何も思わないです」
「怖いとも思わないです」
「幽霊って魂が身体から出ただけですよね」
「そうだと別に怖くないですよね」
「その通りだよ、わかってるね」
 車掌は二人の返事を受けて頷いて述べた。
「それじゃあ私から言うことはないよ」
「それで幽霊列車の車掌さんですか」
 仁美は車掌に尋ねた、彼女も葵も自転車に乗ったままである。
「そうなんですね」
「そうだよ、生きていた頃は定年まで国鉄で働いてね」
 車掌は仁美の問いに答えた。
「定年して二十年で亡くなったけれどね」
「そうなんですか」
「そして蒸気機関車をずっと操縦していてね」
 車掌としてというのだ。
「それでだよ」
「お亡くなりになってもですか」
「こうしてね」
「車掌さんされてるんですね」
「いや、よかったよ」
 車掌はしみじみとした口調でこうも言った。 
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