幽霊列車の車掌
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第二章
「不思議なんだけれど」
「何が不思議なの?」
「いや、幽霊列車って漫画にも出て来るけれど」
隣を自転車で走る葵に話した。
「蒸気機関車ばかりよね」
「そう言われるとそうね」
葵も否定しなかった。
「何でかね」
「絶対にでしょ」
「蒸気機関車なのよね」
「幽霊列車ってね」
「あれかしら」
首を少し傾げさせてだ、葵は仁美に話した。
「その頃の列車が幽霊になるのかしら」
「魂持って」
「そうじゃない?古くてね」
「そうなのね」
「それに電車だとね」
こちらの車両だとどうかもだ、葵は話した。
「何か風情ないでしょ」
「ないわね」
まさにとだ、仁美も答えた。
「言われてみれば」
「電車は電車でいいけれど」
「幽霊列車って感じしないわね」
「環状線の列車が幽霊になっても」
二人にとっては馴染みの車両でよく見るものである。
「何かね」
「格好よくないっていうか」
「風情がないでしょ」
「ええ」
仁美もそれはと応えた。
「どうもね」
「だからね」
「蒸気機関車なのね」
「幽霊列車はね」
「そうなのかしらね」
「まあね」
さらにだ、葵は仁美に話した。
「私蒸気機関車なんて殆ど見たことないし」
「というか今走ってないでしょ」
「日本だとね、他の国でもね」
首を傾げさせつつ言うのだった。
「おいそれとはね」
「ないわね」
「そうでしょ、アジアにはないでしょ」
最早というのだ。
「少なくとも中国とか東南アジアとかにはね」
「何処も高速鉄道と科行ってるしね」
「それどころかリニアもよ」
リニアモーターカーもというのだ。
「いよいよ実現するとかね」
「言ってるわね」
「だからね」
それでというのだ。
「もうね」
「蒸気機関車走ってる国もないのね」
「そうじゃない?世界は広いからまだ何処かの国で走ってるかも知れないけれど」
それでもというのだ。
「少なくとも日本人がよく行く国にはないでしょ」
「アメリカにもよね」
「あそこは尚更ね、それでこれから」
「蒸気機関車も見ることになるわね」
「幽霊列車のね」
こうした話を共に自転車に乗りながらしつつだった。
二人は天王寺駅に向かっていった、そしてその駅のところに着くとだった。
普通の時間帯では列車が多くの線路をせわしなく行き来していてホームに人が大勢いる駅が静かだった。まさに夜の闇の中に溶け込んでいた。
その駅を見つつだ、仁美は葵に話した。二人は今も自転車に乗っている。
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