バウアーへの願い

「本当に」
「うちに来ても悪く思わないってことね」
　咲がそれはと尋ねた。
「本当に」
「ええ、ぎりぎりだけれどね」
　明日夢もそれはと答えた。
「本当に」
「そうなのね」
「ただね」
　明日夢は咲にそれでもと返した。
「やっぱり私としてはね」
「残留希望ね」
「自由契約になったけれど」　
　そうであるがというのだ。
「それでもよ」
「ファンとしては切実よね」
「そうよ、ただね」
　明日夢は達観した様にこうも言った。
「どうもチームは戻ってくれないってね」
「思ってるのね」
「メジャーに戻りたくて」
　バウアー本人がというのだ。
「お金がね」
「それ滅茶苦茶大事だからな」
「一番の問題かもね」
「お金ってシビアだからね」
「何と言ってもね」
「それでね」
　この問題がありとだ、四人に話した。
「正直言ってね」
「もうフロントもか」
「今年はいないって思ってるのね」
「三浦監督もそんなこと言ってたわね」
「本人のことだとか」
「そう言われててね」　
　明日夢は応援しているチームそれもそのチームで長年活躍してくれた人なので敬語を用いて話した。
「監督さんもね」
「どうなるかわからない」
「そうした状況よね」
「バウアーさんについては」
「フロントもいない前提ね」
「確実じゃないなら」
　チームにいることがというのだ。
「正しいわ、一人頼みだとね」
「よくないからな」
「その人抜けたらアウトだしね」
「実際そうしたケースあるわよね」
「どのチームでもね」
「だからね」　
　それでというのだ。
「正しいわよ、けれど」
「どうしてもよね」　
　咲が応えた。
「本当に」
「残って欲しいのよ」
「まあね、咲が言えた義理じゃないけれど」
　バウアー獲得を言われているソフトバンクのファンとしてはとだ、咲はこう前置きしたうえで明日夢に話した。
「残ったらね」
「それでいいわね」
「うちとしては欲しいし」
「メジャーじゃなかったらよね」
「本気で欲しいけれど」　
　それでもというのだ。
「残ったらね」
「よかったって言うのね」
「ええ、お互い悪く思うなでね」
「ベイスターズでもホークスでも」
「巨人じゃないしね」
　このことが大きかった。
「やっぱり」
「そう思うと気が楽よね」
「巨人だったら」
　忌まわしいことこの上ない邪悪なこのチームならというのだ。