神々の塔
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第五十四話 八艘跳びその三
「為朝さんが琉球で王様になったというけど」
「そう言われてるにしてもな」
「誰もおらん様になったわ」
「そうした家もそうそうないな」
身内同士で殺し合い遂に滅んだ家はだ。
「まるで呪われてるみたいやな」
「その域に達してるな」
中里もどうにもという顔で言葉を返した。
「あの家は」
「そうやな」
「一応源氏の血は続いてたけどな」
「足利家とかやな」
「今川家とか吉良家もな」
こうした家もというのだ。
「源氏や」
「その流れやな」
「武田家もな」
武田信玄で有名なこの家もというのだ。
「そうやが」
「嫡流は絶えたんやったな」
「そうなったわ」
「そうした家はそうそうな」
「ないな」
「幾ら何でもな」
お家騒動は人の世の常でもというのだ。
「ほんまな」
「そうやろうな」
「まあそうしたことも程々にってことね」
アレンカールはこう結論付けた。
「つまりは」
「お家騒動もな」
「どうしてもあるけれど」
「人の世にはな」
「あまりにもやり過ぎるとね」
「源氏みたいになるな」
「さっきオスマン=トルコのお話が出たけれど」
アレンカールはこの国の話もした。
「即位した皇帝の兄弟はお家騒動を避ける為にね」
「皆殺してたな」
「幽閉とかね」
「それで皇帝の即位を争う内紛とか防いでたな」
「宮廷内の抗争とかね」
「血生臭いことをな」
「そやけど」
それでもというのだ。
「皆そうして殺してたら」
「皇族の数がな」
「どうしても少なくなってね」
「実際あの国後継者に困る様になったな」
「そうなったわ」
実際にというのだ。
「ほんまにね」
「そやったな」
「やっぱりね、お家騒動はね」
「程々やな」
「そういうことよ」
「そういえば信長さん実際は殺したくなかったみたいやな」
シェリルはお家騒動のことで織田信長のことを話した、彼もまた尾張統一の際兄弟と家督を争ったのだ。
「弟さんを」
「信勝さんやな」
中里はその弟の名前を言った。
「昔は信行さんって言われてたな」
「その人殺したけどな」
「実はな」
「弟さんを平気で殺せたか」
「そうした人やなかった」
「冷酷な人かっていうと」
「違ったからな」
その実はというのだ。
「案外優しくてな」
「血も好まんかったな」
「最低限でや」
流れる血はというのだ。
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