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X ーthe another storyー

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第五十三話 幸福その十

「少しずつ立って歩いていって」
「身体を確かにしていくことだね」
「そうしてくことよ」
「そうだね。とても長く寝ていたから」
 牙暁もそのことをわかっていて言った。
「そうするよ」
「それではね」
「これから起きた世界でも一緒だよ」
 牙暁は庚にあらためて告げた。
「ずっとね」
「そうね。それでは」
「これからもね」
「私達は一緒よ、そのうえで」
「それぞれやるべきことをやっていこう」
「そうしていきましょう」
 二人でこうした話をした、そのうえでだった。
 庚は議事堂に行き丁と話し牙暁は目覚めた。そしてそれぞれが為すべきことをしていくのであった。
 丁は庚と会って話した、その後で庚に言った。
「わらわは嬉しく思います」
「そう言ってくれるのね」
「貴女がわらわを本気で愛して心配してくれていて」
「素直に言うとね」
「そのうえで動いていてくれていたことに」
「けれど私は姉さんを救えなかったわ」
 庚はこのことは残念に思い述べた。
「けれどね」
「それでもですね」
「二人が救ってくれたわね」
「はい」
 確かな顔で答えた。
「彼等がわらわを」
「そうしてくれたわね」
「運命は変わりました」
 確かにというのだ。
「そうなりました」
「そうなったわね」
「有難いことに。そして」
 そのうえでというのだ。
「人間も地球もです」
「救われたわね」
「はい」
 まさにというのだ。
「そうなりました」
「よかったと言うべきね」
「庚、やはり貴女は」
「本当は人間を滅ぼすなんてことはね」
「望んでいなかったですね」
「私は嫌いではないわ」
 こう丁に話した。
「人間も人間の世界も」
「そうですね」
「だから地の龍を束ねていても」
 その立場でもというのだ。
「決してね」
「望んでいなかったですね」
「あくまで姉さんをよ」
「救いたかったのですか」
「そうだったわ」
「もう一人のわらわに気付いていたので」
「かなり早い段階でね」
 そうだったというのだ。
「それでね」
「わらわを救おうと」
「動いていたわ、それが果たされて」
「満足ですか」
「憎い筈がないわ」 
 丁に真面目な顔と声で話した。
「いつも相手にされていなかった私に優しくしてくれたから」
「これまで」
「だからよ」
 それ故にというのだ。 
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