性格は七難隠す
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第二章
「私もなのね」
「ああ、皆言うんだからな」
自分も含めてとだ、夫はまた言った。
「もう疑うなよ」
「そうなのね」
「全くな」
微動だにしない、そうした言葉であった。夫は少なくとも彼女を美人だとか奇麗だとか言うだけで客達もだった。
忍自身はこのことが不思議で仕方なかったが姑の里実に二人で店頭にいて客がいない時にこのことを話すと。
里実は普通の顔でだ、こう答えた。
「忍さんの性格が出てるのよ」
「性格ですか」
「忍さん真面目で優しくて親切で温厚でね」
そうした人でというのだ。
「凄くいい人だから」
「それで、ですか」
「性格が出てよ」
それでというのだ。
「奇麗になってるのよ」
「そうなんですか」
「ほら、この人達見て」
ここで里実は自分のスマートフォンにある人物達の画像を出した、その彼等はというと。
「ヒトラーにスターリンですか」
「二人の加工なしの写真ね」
「あの、二人共かなり怖いですね」
そうした顔だとだ、忍も見て思った。
「眼光が鋭くて」
「そうでしょ、この人達がどんな人達かは」
「言うまでもないですね」
「生き方が出たのよ」
「この人達も」
「それでこんな怖いお顔になったのよ」
里実も二人の顔を見つつ言った。
「この通りね」
「独裁者として戦争やって恐怖政治敷いて」
「粛清やって弾圧してね」
「そうなんですね」
「生き方って出るのよ」
里実はあらためて話した。
「だからね忍さんもね」
「性格が出て」
「生き方イコール性格でしょ」
「はい、そう言われると」
「それが出たの、それでね」
「私は奇麗なんですね」
「そうよ、性格がいいなら」
忍ににこりと笑って話した。
「奇麗になるの、そういうことよ」
「そうですか」
「だからこれからも奇麗な心でいてね」
「そうしていきます」
忍は真面目な顔で答えた、そうしてだった。
それからも真面目に優しく親切に生きていった、すると年老いてからも奇麗と言われた。そして性格が顔に出ているとも言われたのだった。
性格は七難隠す 完
2024・1・21
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