性格は七難隠す
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第一章
性格は七難隠す
ぱっと見地味である、整っているかと言えばそうかなという位の顔立ちである。
石原忍は落ち着いた感じの顔立ちで長い黒髪を後ろで束ねている、中肉中背でスタイルも目立たない方である。
だが嫁いだ和菓子屋の老舗では人気でいつも客達にこう言われていた。
「若奥さん奇麗だね」
「いつも奇麗だね」
「本当に奇麗な奥さん来たな」
「よかったな」
「あの、いつもそう言ってもらってるけれど」
それでもとだ、忍本人は言うのだった。
「そんなにね」
「いや、お前奇麗だよ」
夫で父の源五郎と共に菓子職人をしている豊太い鉤爪型の眉できりっとした贈二重の目に引き締まった顔立ちでセットした黒髪に長身痩躯の彼が応えた。
「充分な」
「そうなの?」
「俺が見てもな」
夫の自分がというのだ。
「そうだよ」
「そうかしら」
「俺が言うんだぞ」
豊は強い声で言った。
「それならな」
「信じろっていうのね」
「そうだよ、まあ兎に角な」
「私は奇麗なの」
「親父もお袋も言ってるよ」
「お義父さんもお義母さんもお顔立ちいいし」
忍は夫の顔を見つつ応えた。
「それで貴方もで才蔵も」
「あいつもか」
「そうだけれど」
小学生の二人の息子の彼のことも話した、実は豊は父親そっくりで息子もなのだ。
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