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肩書は外では通じない

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第二章

「木の古い建物が一杯あってな」
「あっちの宗教のだな」
「それで今の建物も一杯あってな」
「そんなところだったか」
「箸でライスとか食ってな」
「そこはアジア全部だな」
「ああ、それであの人そこから来たんだな」
 ビールを飲みつつ言った。
「そうなんだな」
「いや、東京だから違うだろ」
「俺が行ったのは京都だからか」
「それでな」
 その為にというのだ。
「またな」
「日本って言っても色々だな」
「このリバプールとロンドンでまた違うしな」
「そう言われるとわかるな、それでそこの教授さんがどうしたんだ」
「さあな。何かあるんだろ」
 マスターはグローリーにどうなんだろうなという顔で答えた。
「あの人にしては」
「ここ教授さんなんて来ないけれどな」
「バーで飲むからな」
「ああ、イギリスじゃな」
 こう言うのだった。
「そうだからな」
「日本じゃどうか知らないが」
「そうだな、それで何処かの大学って言われてもな」
「教授だってな」
「何か意味あるのか?」
「あの人的にはあるんじゃないか?」
「えらいふんぞり返ってビール飲んであれこれ言ってたけどな」
 日本訛りの英語でというのだ。
「何か意味あるのか」
「だからあの人にはな」
「わからねえな、別にビール入れたり料理作るの特異な訳じゃないだろ」
「工場の仕事が出来るわけでもないしな」
「じゃあな」
「意味ないな」
「本当に何だったんだ」
 二人で首を傾げさせるばかりだった、そしてだった。
 この教授のことは話さなかった、だがこの教授は実は日本では有名で。
「いつも言うからな」
「東大京大の教授だったって」
「旧七帝大全ての非常勤講師を務めたって」
「それが口癖だからな」
「学者としての実績は何だってなっても」
「その肩書だけ言うんだよな」
 このことで有名だった、そしていつも偉そうにしていると。だがそれだけだった、彼の肩書は自慢している通りだ。だが学者としての実績はなく。
 彼についてだ、周りは言っていた。
「肩書だけだな」
「東大とか京大の教授だったってだけで」
「旧七帝大全ての非常勤講師だっただけで」
「他にはないな」
「学者としての実績はない」
「本当にな」
 こう言うのだった、それで教授を退任すると孫にじゃあお祖父ちゃん何かしたのと聞かれると教授だと言うだけで他にはとさらに聞かれるとまたこう言うだけだった。そして孫には尊敬されなかったのだった。家ではその肩書は通じなかったので。


肩書は外では通じない   完


                   2024・1・21 
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