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夢幻水滸伝

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第三百二十九話 ダイナマイト王その一

                第三百二十九話  ダイナマイト王
 この世界のミズーリ州スプリングフィールドに出てだった。
 チャック=オニールはこの世界とこの世界における自分のことを声から聞いてだった、そのうえで。
 彼はこれかどうすべきかと考えていたところでふと目の前にあった会社の事務所の入り口の張り紙を見て事務所の中に入った。
 そして事務所の受付にいる恰幅のいい象人の中年男に尋ねた。
「労働者募集中だって?」
「はい、炭鉱の」
「それでお給料よくて寮も完備で」
「勿論三食提供します」
「条件いいね」
 オニールは張り紙に書いてあったそのことを話した、象人の男と向かい合って座ってそのうえで話している。
「随分と」
「そこで実際は違うと思います?」
「違うならそこでそう言わないし」
 男に今度は笑って返した、事務所の中は一九二〇年代のアメリカの趣きであり彼から見るとレトロなものである。
「それに社長さん目を逸らしたり口を歪めたりしないし目きらきらしてるし」
「わかりますか」
「嘘って絶対に何処かに出るんだよ。動きにもね」
「それが出ていない」
「そうそう、息をする様に嘘を吐く奴でもね」
 平気で嘘を吐く輩でもというのだ。
「どうしてもね」
「態度に出ますか」
「仕草にも出ていないしね」
「わかるのですね」
「社長さん嘘吐きじゃなくて」
「出している条件もですか」
「嘘じゃないね、それに」
 オニールはさらに言った。
「今おいら社長さんって呼んでるけれど」
「その通りですがよくおわかりになられましたね」
「受付の事務員とかと勘違いする人いるね」
「むしろそうした人ばかりですが」
「雰囲気だよ、人って地位に応じて仕事や責任があって」
「日々それに励んでいます」
「真面目に働く人はそれが気に出るんだよ」
 こう話すのだった。
「もっと言えばさっき言った嘘もね」
「気に出ますか」
「そうなんだよ、それでね」
「私は嘘吐きではなく」
「社長さんそれも結構大きな会社の社長さんだね」
「亜鉛の発掘会社を経営しています」
 社長は素直に答えた。
「本社はこちらですが鉱山はジョブリンにあります」
「そうなんだね」
「そして発掘するだけでなく」
「輸送や精製、加工や販売もだね」
「行っています」
 そうしているというのだ。
「私共の会社は」
「それで経営はホワイトだね」
「そうした経営を心掛けています」
「実はおいら仕事なくてね」 
 オニールは自分のことも話した。
「ちょうど事務所の張り紙を見てなんだ」
「来られましたね」
「うん、工事現場の作業員で採用してくれるかな」
「あの、作業員にしては」 
 社長はどうかという顔になってオニールに言った。
「貴方のレベルは極端に高過ぎてステータスも」
「高いっていうんだね」
「何者ですか」
 オニールに真顔で問うた。 
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