魔法少女リリカルなのはvivid 車椅子の魔導師
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九話
アインハルトさんと高町ちゃんのスパーから四日。ノーヴェさんに後から聞いたけど、高町ちゃんは別に落ち込んではいないとの事
図書館でも見かける時は笑ってたし、大丈夫だとは思ってるけどね
アインハルトさんとはあれ以来話してない。なんとなく近づき難い雰囲気を纏っている事もその原因の一つだけど……
≪ま、マスターにあそこまで言われたら、そうなります≫
「それはどう言う意味かな?ロンド」
現在は図書館で昼休みの解放中。つまり見回りだね
≪実際、高町様と戦ってもいないマスターにあそこまで言われたら、私でしたら、キレますね≫
「でも事実だからね。あの子はどれだけ絶望を見ても諦めない。そう言う目をしてるから」
高町ちゃんが聖王の複製体。つまり、JS事件時、あのゆりかごの中心にいたのはあの子って事に……
≪それで?ストラトス様を焚き付けておいて、放置ですか?≫
「流石にそこまで無責任な事はしないよ。ちゃんと話すつもりだよ」
もちろん、あっちが応じればね
≪はぁー…。残り期日的には二日ってところでしょうか≫
「そうだね。学校が終わったらって話みたいだよ」
はてさて、これでどう変わるか。少しは期待してみようかな
≪マスターって結構いい性格してますね≫
「それほどでも」
≪褒めてません……≫
こんな話をしている内に昼休みが終了し、教室に戻るのだった
「次はテスト勉強の為の自習って言ってたかな」
≪今回は結構勉強してると思いますが、まだやるんですか?≫
「ロンド言ったよね。学年主席とるんだったら、いつもの勉強量じゃ足らないって」
≪まさか本気で主席狙ってますか?≫
もちろん。そのつもりだよ
「いつもはランキングなんて気にしてないんだけどね。中等科に入って、最初のテストだし、少しは頑張ろうかなって」
≪まぁマスターのいつもの順位は上の中ってところですけどね≫
それは初耳かな?んー…上の中か……
「全教科百点目指すしかないのかな?」
≪さらっと凄い事を言わないで下さい。マスター≫
だってそうじゃない?いつも通りにやったら、また上の中止まり。なら、全教科満点でも目指さない限り、学年主席なんて取れないと思うけど?
≪現在の学年主席は全教科満点は初等科の時にとっていますね≫
「あれ?中等科一年の学年主席は確か……」
≪初等科最後のテストの主席者になりますね≫
誰だったかな?覚えてないや
≪初等科最後の年に過去最低得点を取ったマスターが覚えてないのも無理ないです≫
「そう言えば、去年は補習地獄だったね。それは覚えてるよ」
先生達も驚いてたしね。珍しいのが補習に来たって……
「去年みたくはなりたくないからね。流石に」
≪だからっていきなり学年主席をとりに行きますか≫
「一回くらいは取っておかないとね。局に入れないかもだしね」
そう。僕の進路は管理局に入る事。JS事件の時の解雇者の数と無限書庫のおかげで結構黒いところまでは知っているつもり……
少しでもよくできればとは思ってるけどね……
「でも足が治らない限り、非戦闘員扱いになりそうだけどね」
≪まず入局テストすら受けさせてもらえませんよ≫
あー…うん。その可能性もなくはないね
≪その可能性しかありませんよ。マスター≫
「中等部卒業まで二年か……」
あと二年で歩けるようにはあれないよね
≪マスターは中等科卒業後は士官学校に?≫
「そのつもりなんだけどね。やっぱり足が治らない限りはバディになった人に悪いから……」
諦めるつもりと付け加える
≪マスター…≫
「さて、早いところ教室に戻って勉強しないとね」
さっさと話を終わらせる。これ以上は話しても虚しいだけだからね……
教室に戻り、早々と勉強をする僕だった……
放課後。いつも通りの授業が終わり、帰る準備をする
「クロムさん」
「ん?アインハルトさん。どうかした?」
アインハルトさんが話しかけて来た。はてさて、何の話かな
「これから少し、お時間いただけますか?」
「うん。いいよ」
「ありがとうございます。では場所を変えましょう」
場所を変える言う事でアインハルトさんの後ろをついて行く
後をついて行きついたのは市民公園の公共魔法練習場
「それで、話って言うのは何かな?アインハルトさん」
「あの時、私に言った言葉。やはり私には理解できません」
はぁー…。頭が堅いとこうなんだよね
「至って簡単だよ。君が戦うべきではないと思った王、現在の聖王は君が思ってるほど弱々しくないって事だよ」
「……」
「前にも言ったけど、次は本気でぶつかってみればいいよ。それでもまだ違うと言うなら、僕はもう何も言わないから……」
王家に首を突っ込むのはホントだったら御免蒙りたいからね。僕はあくまで知識の探究者でしかないから……。これ以上の干渉は僕にとっても彼女にとっても悪影響になりかねない
空が夕焼けに染まる中、アインハルトさんは俯いてしまっている。彼女が今、どんな顔をしてるかなんてわからない
怒っているのか、困惑しているのか、考えているのか、泣いているのか。それすらわからない
「君は難しく考え過ぎなんだよ。アインハルトさん。人間、柔軟に考える事も重要だよ」
僕はその言葉を残し、その場を去った……
アインハルトside
本気でぶつかる?あんな少しでも力を入れたら折れてしまいそうな、脆そうな体に……?
出来るわけありません。下手したら彼女は……
無責任ですよ。クロムさん。通り魔の紛いことをしていた私の前に立ちふさがり、私を地に伏さした貴方なら……
――――私の拳を受け止めてくれた貴方なら、わかってくれると思っていたのに――――
「わかりません。貴方が言った言葉の意味が全然わかりませんよ……。クロムさん」
その私の言葉に答えるものはなく、夕焼けの空に溶けていった……
クロムside
それから数日経ち、週末。高町ちゃんとアインハルトさんの再戦の日
僕はゆっくりとノーヴェさんに言われた場所に向かっていた
≪開始十分前ですね。少し急ぎますか?≫
「大丈夫だよ。遅れてもいいように、ノーヴェさんにスフィア飛ばしてもらってるから」
モニターを表示すると既に高町ちゃんとアインハルトさんが揃っていた
「廃倉庫のみたいだね」
≪そのようです≫
モニターの方で動きがあった
「ここな、救助隊の訓練でも使わせてもらってる場所なんだ。廃倉庫だし、許可も取ってあるから、安心して全力出していいぞ」
流石に公民館の共通練習場ではどこか壊してしまう可能性があるからね
「うん。最初から全力で行くつもり」
高町ちゃんの目。やっぱり本気だね。覇気すら感じさせる。そんな目だね
「セイグリッド・ハート。セット・アップ!」
光が高町ちゃんを包む。そして光が晴れた時、長い金髪をサイドテールで縛った女性の姿があった……
≪何度見ても見事な変身魔法ですね≫
「そうだね」
「――――武装形態」
その短い言葉と共に光に包まれるアインハルトさん。光が晴れると、あの夜の時と同じ姿をしていた
≪デバイスなしでの魔法式。あれも覇王流の一種でしょうか?≫
「かもね」
ホントにそうだったら覇王流って結構万能って感じだよね
「今回も魔法はナシの格闘オンリー。五分間一本勝負」
五分間かー。今の場所から行くと終了ギリギリってところかな
「それじゃあ試合――――」
二人が構える……
「開始!!」
二人の本気の勝負が今、開始された……
アインハルトside
綺麗な構え……油断も甘さもない
いい師匠や仲間に囲まれて
この子は格闘技を楽しんでる
私とはきっと何か違うし、覇王の拳を向けていい相手じゃない
これが私の答えです。クロムさん
ヴィヴィオside
すごい威圧感。一体どれくらいどんな風に鍛えてきたんだろう
勝てるなんて思わない
だけど、だからこそ一撃ずつで伝えなきゃ
――――「このあいだはごめんなさい」と――――
正面からの攻撃を腕の交差で受け止める。
やっぱり重い…!!
次の攻撃を顔逸らしてよるが、掠ってしまう
それでも攻撃は止まない
なら…!!
一瞬だけでも隙を狙うだけ…!!
わたしの全力
わたしの格闘技《ストライクアーツ》!!
右フックを避けた時の一瞬隙をつき、腹部への一撃を入れられた!
アインハルトside
思った以上の力に驚き、後ろに下がってしまう
さらに追撃してくる彼女……
これをクロムさんはわかっていたとでも言うんですか!
追撃をガードし、そこから攻撃の流れを自分へ戻す
でもこの子は――――
なんど本気の拳を打ち込んでも倒れない。それどころか、受け流されてしまい、攻撃まで通してしまう……!!
なんでこの子はこんなに一生懸命に――――?
師匠が組んだ試合だから?友達が見てるから?
ヴィヴィオside
大好きで、大切で、守りたい人がいる
小さなわたしに強さと勇気を教えてくれた
世界中の誰よりも幸せにしてくれた
強くなるって約束した――――
だから――強くなるんだ!!
「あああぁっ!!」
どこまでだって!!
クロムside
ついたにはついたのだけど、今更あそこに入って行く勇気はないので、モニターで観戦……
「あああぁっ!!」
高町ちゃんの強烈な一撃がアインハルトさんに直撃……だったら、あそこでまた勝敗はわからなかっただろうね
「この勝負……」
アインハルトさんの勝ちだ
ギリギリで防御を間に合わせたアインハルトさんから凄まじい気が発せられた
≪来ますね≫
「覇王…断空拳!!」
あの日、受け止めただけで体全体にダメージを受けたあの一撃が高町ちゃんに入った……
「――――一本!そこまで!」
「さて、じゃあ行こうか」
≪はい≫
戦いを最後まで見届けた後、彼女達に元へと向かった……
「陛下!!」
「ヴィヴィオ!!」
オットーさんとディードさん、ウェズリーちゃんとティミルちゃんが真っ先に高町ちゃんの元へ向かう
それに遅れて、ノーヴェさん達も高町ちゃんの元へ……
「ヴィヴィオ、大丈夫か?」
どうやら目を回しているみたいだね。ま、断空拳をもろに直撃でもらったんだから、そうなるよね
「怪我はないようです。……大丈夫」
「アインハルトが気を付けてくれたんだよね。防護《フィールド》を抜かないように」
流石に防護まで抜いたら高町ちゃんは入院だよ。絶対肋骨の一本や二本持ってかれるから……
「ありがとッス。アインハルト」
「「ありがとうございます」」
ウェンディさんに続いてウェズリーちゃん達もお礼を言う
「ああ…。いえ……」
そう答えた瞬間、アインハルトの視界が少しぶれる
「あらら」
そして、ティアナさんに寄り掛かるように倒れてしまう
「す、すみません……。あれ!?」
「ああ。いいのよ。大丈夫」
「最後の一撃の時に一瞬だったけど、高町ちゃんはカウンターを打ち込んでたんだ。それが時間差で効いてきただけだから、心配いらないよ」
「く、クロムさん……!?」
はーい。クロムさんですよー
「だ、大丈夫……。大丈夫、です」
無理に動くけど、やっぱりふら付いて倒れてしまう
「よっと!」
今度はスバルさんだね
「いいからじっとしてろよ」
「そのまま、ね」
「……はい」
恥かしいのか、少し頬を赤く染めるアインハルトさん
「それにしても遅かったな。クロム」
「モニターで試合を見ながら来ましたから。見応えがありましたよ」
やっと今の時点での二人の本気も知れた事だしね
「んで、断空拳はさっきのが本式か?」
「足先から練り上げた力を拳速から打ち出す技法そのものが「断空」です」
へー気とかは使わないのかな?断空拳を出す時に気は感じられるんだけど……
「私はまだ拳での直打と打ち下ろしでしか撃てませんが」
「なるほどな。――――で、ヴィヴィオはどうだった?」
そのノーヴェさんからの質問を受けた時、一瞬だけこちらに視線を向けたアインハルトさん
「彼女には謝らないといけません。先週は失礼な事を言ってしまいました。――――訂正しますと」
「そうしてやってくれ。きっと喜ぶ」
そう言ってニカッと笑うノーヴェさん
車椅子を動かし、アインハルトさんに近づく……
「答えは見えた?」
「クロムさん。……はい。彼女は覇王《わたし》が会いたかった聖王女ではありません。……ですが、わたしはあの子とまた戦いたいと思っています」
「うん。合格。その回答を待ってたよ」
未だに目を回している高町ちゃんの元へ近寄り、手を取るアインハルトさん
「はじめまして。……ヴィヴィオさん。アインハルト・ストラトスです」
それは起きてる時に言ってあげればいいのに……
「それ、起きてる時に言ってやれよ」
ノーヴェさんが同じ事を考えていたみたい
「……恥ずかしいので嫌です」
プイっとそっぽむいてしまう。全く、素直じゃないね
「どこかゆっくり休める場所に運んであげましょう」
「「はい!」」
アインハルトさんが高町ちゃんを背負い、休める場所へ連れて行く……
「んで?あんだけ吹っかけたんだ。予想通りか?クロム」
「いえ、ここまで行くとは思っていませんでしたよ」
「なんかホントお前って腹ん中では何考えてるかわかんねぇよな……」
「ありがとうございます」
新暦79年春
高町ヴィヴィオとアインハルト・ストラトスはこんな出会い方で出会った
これがクロム・エーレンと彼女達の物語の始まりの始まりである
後書き
九話です
戦闘の描写が上手く書けず、ここまでズルズルとなってしまいました……
しかも時間をかけた割にはショボイ戦闘描写……。頑張って精進します
さて、これで原作一巻の内容が終了しましたので、次のお話から原作二巻に入っていきます
テストにオフトレ、インターミドルなどこれからが一番大変です
更新速度はもう少し上げたいと思います
感想、評価、誤字報告、指摘待ってます
では次のお話で……
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