星河の覇皇
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第八十五部第四章 メキシコの思惑その十二
「イタリアの貴族でもです」
「そうした人物がいましたか」
「実はこの人物は曰くつきで」
ガラサはシャンパンを飲みつつ少し神妙な顔になった、そうしてグリーニスキーに対してその話した。
「実は大きな農場を経営していたのですが」
「そこで、ですか」
「農場を荒らしていた子供を殺してしまい」
「間違ってでしょうか」
「はい、その結果です」
そこまでするつもりはなかったがというのだ。
「マフィアに事件をもみ消してもらったのですが」
「昔はよくあったことですね」
「今もありそうなことですね」
「確かに」
グリーニスキーはサラダのトマトを食べつつ応えた。
「そうしたことは」
「それでことなきを得たのですが」
「それでもですか」
「マフィアに暫く身を隠してはとアドバイスされました」
「そうでしたか」
「それで、です」
身を隠す為にというのだ。
「ホテルに入り」
「そしてですか」
「暫く実際に身を隠していましたが」
ほとぼりが冷める、殺人の話が消えるまでの間だ。
「しかし」
「ホテル暮らしがですね」
「快適だったので」
その為にというのだ。
「結局です」
「それからずっとですか」
「死ぬまでです」
その間というのだ。
「ホテル暮らしだったとか」
「そうでしたか」
「そうしたこともです」
「ある位にですか」
「ホテル暮らしは快適です」
「それが出来るだけの資産があれば」
「もうです」
そこまでの資産家になればというのだ。
「かえってです」
「そういえば」
グリーニスキーも話した。
「かつてのイスラエル市民は他国では」
「迫害を受けていてですね」
「そしてです」
そのうえでというのだ。
「家で暮らしていてもです」
「襲われるかも知れない」
「ですからホテルで暮らし」
そうしてというのだ。
「身を守っていたとか」
「ホテルではホテル側が守ってくれるので」
「お客さんですから」
「だからですね」
「そうしたこともあったとか、恥ずかしながら」
グリーニスキーはこうも言った。
「我がロシアはです」
「ユダヤ系への迫害がありましたね」
「帝政ロシアの頃からで」
「ソ連でもでしたね」
「スターリンもユダヤ人を粛清していました」
一説には政敵であったトロッキーがユダヤ系であったことが影響していたと言われている。スターリンの数多い粛清劇の一つであった。
「そしてです」
「全体で、ですね」
「ロシアはです」
まさにというのだ。
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