家訓は一つ
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第二章
「大樹との結婚を許します」
「わかりました」
光は家訓と聞いて内心怯えた、どれだけ過酷で厳格なものが書かれているのかと思ってだ。そのうえでだった。
巻物の紐を解き開いた、恐れる恐れるそうしてだった。
その中を確認したがそこに書いてあったのは。
「あの、常識を弁えるですか」
「はい」
優は毅然とした声で答えた。
「宜しいですね」
「それだけ書いてありますが」
「その一文が全てです」
まさにというのだ。
「我が家の家訓は」
「そうなんですね」
「宜しいですね」
「常識を弁えることですね」
「そうであればです」
それならというのだ。
「大樹との結婚を許します」
「わかりました」
光は優の言葉に頷いた、そしてだった。
それからの話もしたがやがてまた来て今度は光の両親も交えて話をしようと話した。それで今は大樹の実家を後にしたが。
帰り道一緒に歩きつつだ、光は大樹に言った。
「家訓ってどんな怖いものかと思ったら」
「うちはそれだけだよ、常識を弁えてたらね」
「いいのね」
「そうなんだ、だから僕も光ちゃんも」
「常識を忘れないで」
「暮らしていこう、非常識なことをして」
そうしてというのだ。
「他の人に迷惑をかけたらね」
「駄目だしね」
「だからね」
それでというのだ。
「これからもね」
「人に迷惑をかけない様にね」
「常識を忘れないでね」
「一緒になのね」
「暮らしていこう」
「わかったわ」
光は笑顔で応えた、そして二人はさらに交際を深めていきお互いの両親も会って話をしていってだった。
結婚した、夫の両親は常識のある人達でとても優しかった。勿論光の両親もそうで彼等は平和に暮らせた。たった一つの家訓を守ったそれは実に幸せなものだった。
家訓は一つ 完
2023・12・17
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