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人生コンティニューしたらスクールアイドルを守るチートゲーマーになった

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75話 隠されたORIGIN of IDOL


時とは早い物である。予備予選に向けての才が提案した梨子のピアノ演奏。それに伴うダンスのポジショニング変更。梨子の代わりとなった曜が抱くモヤモヤ。それを解消しようと忠告を行った鞠莉とそこにも間接介入し、暗躍する才。

これらが行われる間、合宿からすでに3〜4日ほど経過している。


修行の方も少し順調に進んできたところ、5日目の早朝、3人の仮住まいとしているホテルに日が差す。

虎太郎だけが起きて他2人は————特に竜介は深く眠っている。


だがここに狼藉者がそのドアを開く。



「おいお前ら起きろ〜」
「え、覗さん………」
「おぉ、虎太郎。起きてたか。早速だがこの2人も起きてもらうぞ。」
「え、あぁ………」


早朝とは似つかないその勢いについていけない虎太郎はつい相槌を打ってしまう。

覗はポケットからエアガン2丁を取り出し、2人にBB弾を放つ。
竜介の眉間にその球は見事ヒットし、彼は否が応でも起きてしまう。だが魁は——————するりと避けてしまった。


「「……………」」
「痛ってー!!!何すんだよ!!」
「黙れ。今ちょっと情報整理させろ。」
「あぁ〜?」


撃ったことに騒ぐ竜介を尻目に覗はしばらく考察に入る。そして魁の眠り具合を考慮してもう一度空気銃を向ける。


「zzzzzz zzzzzz」
「—————念の為もっかい確認させてもらう。」


パチンとプラスチックの弾ける音が部屋に響く……………だが、その音は途中で止まることになる。


「受け止めた………?」
「これくらいなら—————遅い。」
「魁!?お前起きてたのか?」


竜介の驚嘆に本腰をあげて起きる魁。BB弾をキャッチした………その確固たる証拠を魁はベッドの脇に捨てる。


「オーマ爺と戦ってたらこのくらいのスピードの攻撃なら生身でもかわせる。むしろこれでも百発百中で攻撃を当てられるくらいだが。」
「うわぁ………お前、頭も体もイカれちまったのか—————俺の負担にはなるなよ。ただでさえ1匹筋肉バカがいるんだから。」
「んだとこの黙り虎!!」
「ふっ————全く、賑やかな仲間だな。」

を吐く虎太郎に的外れなマウントを取りに行く竜介。そんな様子を見た覗に一瞬、羨望のような……期待も孕んだ嘲笑を付す————しかしすぐに自らの目的へと話を戻す。


「さて、お前らもようやく基礎が固まってきたな。」
「基礎………?《《あれ》》が基礎ぉ!?」
「そうだ竜介。自分なりの超体力及び不死身の相手への対処は基本中の基本だ。ここからの戦いはそんな能力が無けりゃ、親玉の顔すら拝めねぇよ。」
「「えぇ………」」


それを聞いた竜介と虎太郎はドン引きした。もう強いとかヤバいとか通り越して、語彙力を用いる隙もなく—————キモい。

エグゼイドやスナイプ……しいてはオーマジオウの、散々チーターレベルの力を見せられてきた彼らにとってそれは通り道でしかないと知らされたのだ。

だが魁は強引に話を進めさせる。


「で、早く本題を。そんな俺たち自身の状況報告をしにわざわざきた訳じゃないだろうに。」
「ああ。まず、オレたちが教えることはもうほとんどないってことだ。」
「そうなのか……?」
「ここからは自分の道だからな。そして………これでオレもようやく古代から……500年前に起こったことの《《秘密》》をお前らに話せる。」
「「「……………」」」


息を呑む3人。だが、覗は少し視線を右往左往させる。


「—————だが、ここで話すのでは理解し難いだろう。ちょっと場所を変えるぞ。」
「どこへ行くんだ?」
「それはつけばわかるだろうが—————虎太郎、お前確か瞬間移動できたよな?」
「あぁ、できるが……でも距離はまだせいぜい100メートル程度が限界だ。それにあれはアルティメットフォームだから出来ることで、生身の人間が使うようなモンじゃ………」
「ま、細かいことはどうでもいい。ちょっと手ェ貸せ。」


困惑する虎太郎の手を覗はがっちりと握り、そこに何か念ずるように力を込める。するとその場におった4人に熱が伝わる————人離れした神秘な。

やがてホテルの部屋が広がっていた部屋は、捻じ曲がる空間を移動する。ウネウネと空間が揺れておる故に何処かはわからないが、どこかへ確実に確実に進んでいる。

そしてその畝りも終始する—————が、着いたのは圧倒的森林………の手前。いや、終着点か。


「おいおい……虎太郎、お前何したんだよ!?」
「俺だってわかんないよ……」
「なぁに。ちょっと虎太郎の能力にバフを掛けただけさ。」


何気にエグいことを言う覗に一同は絶句するが、ともあれ、この場の所在が如何知りたい。で、早速魁は尋ねる。


「ここは何処なんだ?森を抜けたところにあるっぽいが………」
「ここは富士山の麓————富士の樹海の真のゴールだ。」
「真のゴール?!んじゃそりゃ!?」
「そのまんまの意味さ。ここには常時霧で隠されてる上に磁場が乱れすぎてヘリですら辿り着けねぇのさ。第一、発見すら難しいだろうな。
「富士の樹海……磁場が乱れるとか迷うとかは都市伝説・迷信じゃないのか?」
「虎太郎の言うことは半分正しい。正確にはこの磁場は《《作られた》》みたいなもんだからな。」


その言葉に3人は不思議な感覚に囚われる——————ここは富士の麓、樹海の終着点。確かに霧に覆われた荒廃した土地………内浦とは目と鼻の先だ。

そんな意味深な言葉を置いて覗は3人を歩かせ、荒廃した土地を進みながら、語り始める。


「初代クウガがルーの力……しいては光の神アマテルの力を使い、悪神ナムロドの精神と肉体を分離させた。自身の精神の入れ物があり、一命を得たナムロドは力を失った肉体を分解、それを元手に前人未到の方舟を作りそこに知能をプログラムした。元手になった肉体を船にし、知能をプログラムしたのが小原家だ。」
「あぁ、それはなんとなく察しが付いてた。俺は《《その後》》が知りたいんだ。」


魁が話を急かすが、覗は振り返ることなく淡々と前に進み続ける。


「それが起こったのが古代フェニキア……現在のパレスチナ地区あたりだ。そこから小原家は渡り、巨大船を根城として商業とともに武業も営んだ—————ただ、知能派と武力派でかなり意見も異なったそうだ。実際アークを創ったのは知能派の小原家だからな。」
「なるほど………でもなぜ、お前がそれを?俺や姉さんでも聞いていないことなのに………」
「まぁ、この先に行けばわかる。」


そう話を順序通りに進めようとする覗。


「やがて世界を方舟で文明を発展させつつ回る果てに、500年前にある極東の地に辿り着き、小原家はそこに長く定住することとした。それが—————現在の静岡県沼津市内浦。つまりお前たちの内浦(ホームタウン)さ。」
「!!!」
「小原家の人間はこの日本こそ約束の地(シオン)と思ったのだろう。しかし時代は戦国の乱世。この内浦に限り、地元の土豪————武士として支配していた黒澤家がいた。外界からの武人と商人……初めは協力をして漁をし、最強の水軍となり、はたまた商いをしていたが—————心では不満を募らせたという。」


淡々と歩き続ける…………歩き続ける。




〜〜〜〜〜〜〜




そしてようやく足を止めた。

足を止めた先に、想像を遥かに超えたものが4人の前には広がっていた。


「なんだよこれ………!?」
「闇の鎧の……石像?」


巨大———そう言わざるを得ないダークキバの一対の石像。互いの剣を地面でクロスさせている。まるで狛犬……いや、金剛力士像のようにこの先にある何かを守護しているように。


「この石像に意味はない。」
「え?」
「これは一種の墓標だ。いわゆる過去の遺物。過去から送られたオレたちへの戒めみたいなもんとも言うか。メインはこのすぐ奥だ。」


そうして先ほどより濃くなる霧を掻き分けて前へ………すると、行き止まりに着く。いや自然な行き止まりにしては異形感が否めない。その感覚は近づくほどに高まっていく—————


そして、全てが明らかとなった。



「——————ここが、悪神ナムロドが封印された場所だ。」
「「「!?!?!?!?」」」


荘厳な石板。そう一見して感じたが、そればかりではなかった。描かれていたのは、まさにナムロドが封印されるまでを絵図に書き記したもの。そう見受けられる。

地獄絵図の中に描かれる古代のライダー達————クウガ、ダークキバ、さらに黒澤家の伝説の戦士ソーサラー。

そして中央に描かれるは光の巫女たる少女————神聖ながらも見覚えのある面持ちで、その海水の雫のような清明心を持った。


その上には流星の如し明星がその地獄とその救済を照らしていた。



—————その1つ1つが意味をなしているのは言うまでもない。



「この石板に描かれた事……起こったことを記しているのは間違いないが、それについてはオレも語り得ない。何せ500年も前の話だ………」
「なぁ、この巫女のような女は誰だ?俺にはどうも違和感がある。一体何者なんだ?」

魁の指摘を受けて少し息を吐き、覗は答え始める。

「——————この石板には神代文字の羅列があるらしい。その記述によると、彼女の名前は『高神千陽(たかみ ちはる)』というらしい。」
「た、高神(たかみ)?」
「確かお前たちが護るスクールアイドルはAqoursと言ったか?」
「あ、あぁ。」
「まさか————その高神千陽の子孫……というのが《《よりにもよって》》スクールアイドル Aqoursのリーダーである高海千歌とは夢には思わなかったよ。」
「「!?!?!?!?」」
「そんな……何かの冗談だろ?千歌や……美渡や志満がその巫女の子孫だってのか!?」
「そういうことになるな。ただ正確には、何代も先の叔母にあたる方だろうがな。」


衝撃である————しかし、それでいて虎太郎は『よりにもよって』という言葉にまたも違和感を覚える。


「よりにもよって『スクールアイドル』……?千歌の先祖の方がスクールアイドルと何の関係があるんですか?————まさか……」
「流石虎太郎、察しがつくか?—————まぁいい。10年前からスクールアイドルがなぜこんなにも広まったのか……なぜそんな部活程度に反対派が存在するか……それは、『人々の祈りの力を開花させると同時に、巫女の存在をあぶり出し、ナムロドを完全に消滅させるという《《奇跡》》を起こすためだ。』」
「奇跡を……?」


虎太郎は信じられなかった。今、この瞬間。千歌が口にする奇跡とは……Aqoursの目指す輝きとは観念的なものと思っていた。だが、そうではなかった。そうわかったのだ。


「高神千陽—————この巫女こそ《《スクールアイドルの元型》》というわけさ。」
「ちょ、ちょっと待て!!もっとわかりやすく説明してくれ!!いきなり巫女とか子孫とか言われてもわかんねぇよ!!」
「入ってくんな話に。後で俺が説明してやる。」


虎太郎が竜介の頭をポンポン叩いて、馬鹿にして押さえ込む。そして覗に話を続けさせる。


「つまるところ……スクールアイドルは人々の心を穏やかにし、英気を養い、《《善意を与える》》。そしてその力は人々の悪意を吸収するナムロドが最も忌み嫌うものということだ。そしてその善意を集める力をお前たちAqoursが持っているということだ————そのように、なるべくしてなったのさ。」
「でも、それって戦国時代の話だろ?それがスクールアイドルの原型になったなら、それを体系化した人間がいるはずだ…………」
「いいところつくじゃないか、魁。」
「やっぱり俺たちと関係ある人間なのか?」
「あぁ。この石板に描かれた神代文字の知識を引き継いだ人物……それこそ、深天大地。稜の育て親だ。」
「そうか……覗さんと稜のお父さんが繋がりがあったのなら、稜と知り合いなのも筋か通る。」


次々に溢れる真実————いや、ここまで豊富ならば理解に時間がかかろう。だがしかし、これはいずれ対応しなければならないことである。

魁はさらに深掘って、質問を続ける。


「ならゴーストドライバーとスペクターアイコンを製造したのも………」
「あぁ。深天さんだ。そして稜の面倒を任せたのも。」
「じゃあ……稜の父親が誰に殺されたのかは————」
「!!!」


竜介が空気感を一気に変える。そう、この疑問こそ稜を生死不明に追いやった間接的な理由だ。理論は不明であるが、才が犯人に仕立て上げられてしまい、その疑問が沸騰した。

覗は尚も、飄々とした雰囲気で答える。


「無論、知っている。」
「だったら何で稜に教えてやらなかったんだよ!?それを知ってればアイツは………!!」


覗の襟を竜介が掴み、一触即発。特に1世代上の人間同士が睨み合うとその恐怖は増す。

だがそんな状態であっても冷静さを失わない………いや、このような状況を幾度となく経験してきたが故の、冷酷とも取れる。

覗は襟を掴んだ手を引き剥がし、竜介の怪力を制す柔軟さで、足を地面につかせる。そして語気を強めて言う。


「甘ったれたこと言ってんじゃねぇ……!稜に真犯人を教えたところでどうなる?奴はそれを始末しにいくだろう。だが、現時点で犯人を倒すのは力量的に不可能だ。挑んでも勝ち目のない黒幕を教えたところで稜は無謀な戦いを挑むだろう。それを理解しろ!!」
「ぐっ………」
「しかし———オレはお前を解せないな、竜介。」
「あぁ?」

突然の話題変換に驚く竜介及びその2人。

「Aqours☆HEROESとやらは、強者揃いだ。しかしそれら全てがオーマジオウや『ルー』もしくは『アーク』に起因する。だがお前は別だ。それらのどれでもなければ、戸籍を見る限りは別次元から迷い込んだわけでもない……お前は一体何者なんだ?お前の人間離れしたポテンシャルは何処からのモノなんだ……?」
「そんなの知るわけ……」
「それが時空の《《一般論》》すら与り知らない方法でこちらに来たのなら、お前は…………」


場がやりきれない静粛に包まれる。

時空の一般論……そんなことを答えよと言われても不可能だ。あの才ですら、答えを出すには相当な時間がかかっていると言うのに。


「なぁ、大地さんを殺したのは一体誰なんだ?それだけでも教えてくれ。」
「それは……稜の実の父親、浅野一多郎————未だ謎の多いマッドサイエンティストであるが、今のところオハラエンタープライズの兵器開発の責任者らしいが。」
「「「…………」」」
「ただ———コイツにアークを利用されるか、最悪ナムロドを復活させられるのは絶対に避けなければならない。」
「どういうことだ?」

魁が尋ねる。

「わからないか?もしコイツらがナムロドを復活でもさせてみろ。ナムロドは悪神でありつつ、賢神でもある。忽ち奴らの持つ大量の兵器はナムロドに利用され、世界は奴の手に収められる……すでにオハラスペックという人類の脳をアップデートする機械を作ったのだからな。それに……」
「それに?」
「アークの創造したヒューマギアなる人型ロボットも気になる。」
「ヒューマギア?」
「知らないのか?今は滅亡迅雷.netという名で活動しているらしいが、いずれ個体数を増やして、人類と置き換え、効率よく人のネガティブな感情を食おうとしているのかもしれない。」
「感情を食う?」
「ナムロドのパワーは人々の悪意や落ち込みを取り込んで進化する。超古代に人の生贄を欲していたのも、贄が死ぬ絶望を味わいたかったからさ。」


ふぅ……と、覗は一服つくようにタバコを吸う。これは才愛用(最近魁や鞠莉もご愛用)の無害な味タバコではなく、正真正銘のもの。

どうやら未成年から……そんな雰囲気が漂ってならない。

そんな時、覗がこの遺跡入り口、この一行が入ってきた場所を指差す。


「来たぞ、狼藉者だな……フフフ……」
「何?!」


竜介がまず初めに反応した………そう、黒色の服を着たあのおじさんだ。

そしてその背後には、恐らく500人はゆうに超えている屈強な男達が軍隊ありのようにゾロゾロと連れられている。


「全く、ゾロゾロと引き連れて来あがった。お前ら、今日ここに来てもらったのはコイツらに封印を解かれないためだ。いつも100人程度なら余裕でぶっ潰せてたんだが……人数が多すぎる。だから今日は一緒に奴らからここを守ってもらう。行くぞ!」
「「「お、おう………!」」」


4人は一対の銅像が建てられた門の場所まで、走って進む。

そして先頭に立つ黒スーツの男と対峙する————もったいぶらず、小原兆一郎である。


「やぁ、久しぶりだね。Aqours諸君。それに白木覗君。」
「あぁ、オレは会いたくなかったよ。だが半分ラッキーでもあるな。」
「この3人の修行の成果…発揮できる場が出来たことさ。」
「残念だが、私の目的はアークの完全復活。この石板にそれが封印されている。それを破壊する。」
「させるか……行くぞお前ら!」
「指図するな!!俺は王だぞ!」
「どーかん」


≪バンバンシューティング!≫

≪ボトルバーン! クローズマグマ!≫

≪ガブリ!≫


「第二戦術………変身。」

「超変身……」

「「変身!!!」」


≪バンバンシューティング!!≫

≪クローズマグマ!! アーチャチャチャチャアチャー!!≫


仮面ライダークローズマグマ、仮面ライダークウガ アルティメットフォーム、仮面ライダーダークキバ。そして仮面ライダースナイプが変身した。


「いいでしょう、サウザーの潜在能力の本領……見せてあげましょう。」


≪ゼツメツ!EVOLUTION! ブレイクホーン!≫

≪パーフェクトライズ!≫

≪THOUSER is born.≫



再び、混沌への序章が動き始めた。







 
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