人生コンティニューしたらスクールアイドルを守るチートゲーマーになった
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1期3クール Aqours&ムテキ
67話 合宿やろう
さて早速だが——————夏、真っ盛り。
屋上のコンクリートから発せられる熱気が揺らめき、その暑さを主張している。皆周知の事実であろうが夏休みに入ってから1週間〜2週間付近が1番暑い。大暑という暦がこの辺りに存在するほどである。今日はその真ん中付近である大暑の前日だ。
さらにこの辺りは太平洋側気候、和歌山県・愛媛県に続き温州みかんがたくさん取れる温暖気候。この地球温暖化の中では亜熱帯へと変化している。要は何が言いたいかというと.............
「アツーい〜!!」
「ずら〜」
「うぅ.......天の業火に闇の翼が————」
「その黒い服やめたほうがいいんじゃ..........光集めちゃうよ?」
「oh.......Jesus!なぜ日本の土地はこうも暑いんだ.........!!」
このバカみたいに暑い日に黒い服を着る厨二病《バカ》のせいで余計暑く感じるだろうが.............ていうか!——————と思ったところを、梨子と曜が指摘する。
「魁君のキャラが変わってる!?」
「何か鞠莉ちゃん寄りの口調になってるっていうか..........」
「ブラザーは結構日本語意識してるから........こういう所で素が出ちゃうのかもね。」
情けない。俺に継ぐ実力である仮面ライダーともあろう者が、暑さに弱くては話にならんぞ———————つい1週間前は少しばかり仲間割れしていたというのに。呑気な話だよな.................人1人失踪しているというのに。
俺が隠すように笑っていることを、鋭く見つけた千歌がこちらを睨んできたのがわかった——————いや、サイコパスじゃねぇからな?
「何クスクス笑ってるの.........!?」
「いやいや。太陽よりも輝かしい人間が今目の前にいるのに......ちょっと見苦しいなって。」
「そんなこと言うならさぁ..........その日傘を畳んでよ!!」
「はぁ〜!?日焼けは人間の敵だ!特にこの美男子のお肌を守るのは毎日歯磨きすることと同じくらい重要なことだぞ!」
「うわぁ........自分で美男子って————」
「キモいずら。」
ルビィとダウン状態の花丸から蔑みの表情を向けられる。ダウンしていない分ルビィが蔑みのベクトルが大きいか...........やべ、ちょっと悲しくなってきた。
こんな小さい娘であり美少女の彼女に蔑まれたら、鋼メンタルの俺でもガクッとクるよ!!—————誰が喜んでるって?
俺は日傘で顔を隠し、発言の権限を放棄する。その権限を受け取ったのは曜だった。
「そういえばダイヤさん、どうして皆呼び出したんですか?」
「ふっふっふっ........よくぞ聞いてくれましたわ!!今日でかれこれ夏休み開始から1週間!!まだ夏休みの神髄を味わっておりませんわ!!」
「さて!Summer vacationといえば!?」
「はい!千歌さん!」
「うぅ.........やっぱり海だよね———?」
「夏休みはパパが海から帰ってくるんだ♪」
満面の笑みで答える曜。
曜の父さんは駿河湾フェリーの船長だからな。まとまった休暇———特にお盆休みに帰ってくるのが自然だろう。渡辺父には小さい時から結構世話になっていたりする—————この駿河湾フェリーの運営会社の株主が何と伊口ファウンデーションなのである。曜と俺の出会いは実はこの縁が始まりで、曜を伝って千歌と知り合った..........と言うのが俺の記憶だ。
さて余談が過ぎたようだ。
「姉さん、夏はホテルオハラの割引でしょ?」
「マルはおばあちゃんの家に滞在することに............」
「フッ—————夏コミっ!!!」
「——————かき氷(ボソッ)」
『ぐぬぬぬぬ..........ブッブー!!!!!!ですわ!!!!』
おぉ..........久々に聴いたな—————と思っていると余程呆れたのか頭を抱えて続いて大きな声で我々を叱責する。
「あなた達本当にスクールアイドルなんですの!?!?片腹痛い片腹痛い.........片腹痛いですわ!!」
「いやだからs——痛った!!何で殴るんだよ!!」
「あなたの冗談じみた言い返しは求めてませんわ!!全く........あなたそれでもAqoursのGMなんですの?」
「一応GMだけど........」
全く黒澤家はどんな教育してんだよ........次期当主が男にグーパンチだぞ?もうちょっとお淑やかさと言うか.........ルビィの方がよっぽどそう見えるんだが。いやお淑やかであるほどあの目を向けられるのか.........
まぁ出会い頭に敵を殴る黒澤父とそいつが敵わない真珠さんの子供だからこうなるのも必然なのか............
「にこ姉さんのかき氷......久々に食べたいな————」
「お前もお前で童心に帰ってんじゃねぇよこのプチ修羅場で.........」
—————————※———————————
部室に戻ったAqours9人と2年生男子メンバー。戻った途端にダイヤはホワイトボードに2つの円グラフが描かれた厚紙を貼る。何か嫌なことが起こりそうだな.............
「いいですか?皆さん?夏といえば!?————はいルビィ!」
「うーんと...........多分、ラブライブ!」
「さすが我が妹〜かわいいでちゅね〜よくできまちたね〜(デレデレ)」
「がんばルビィ!!」
「えぇ........」
「何この姉妹コント........」
「コント言うな!!夏といえばラブライブ!!その大会が開かれる季節なのです!!」
善子........よくツッコんでくれた。このキャラ崩壊度を俺は筆舌したくないんだ——————ほんと、あの威厳ある生徒会長は何処やら............いやそんなの元々なかったか。
「予選突破を目指してAqoursはこの特訓を行います!」
「?——————あっ(察し)」
「虎太郎さん!察しの通りですわ!!これは私が独自のルートで手に入れたμ'sの合宿の練習内容ですわ!」
「遠泳10キロ........」
「ランニング15キロ........」
「こんなの無理だよ—————」
「まっ、何とかなりそうだね。」
「「「ううっ!」」」
「熱いハートがあればどんなことだってできますわ。」
「ふんばルビィ!」
ランニング15キロと言うのは容易いが、実際は沼津駅から弁天島までの片道と考えればどれほどキツいかわかるだろう。これを華奢なアイドルがこなすというのは非常に困難だと思うのだが.............
「なぁ虎太郎、本当にμ’sはあれを合宿でこなしてたのか?」
「いや.........アレは確か海未さんが実施予定だったけどお蔵入り
「何をごちゃごちゃと!さぁ!今から外へ行って始めますわよ!!!」
ダイヤが照りに照っている外を人差し指で差す。その瞬間にガヤガヤとしていた部室内が夏場でありながらも一気に凍りつく。
外はまさに地獄絵図の一節、焦熱地獄のようになっている。ただでさえこのクーラーのついていない部室から直射日光とアスファルトからのダブルパンチで人間の蒸し焼きでも出来そうだ。
だがこのままだと押し切られる...........とここで、曜が妙案を思いついたように千歌に話を持ちかける。
「そーいえば千歌ちゃん!海の家手伝いがあるって言ってなかった!?」
「あー!そーだよ!忘れてた!自治会で海の家手伝うように言われてるのです!」
「あっ、私もだ。」
曜とお揃いの敬礼ポーズでダイヤに応答する千歌。この2人の反応を見るなら嘘かもしれないが、流石に果南の反応を見て嘘とは言い難くなる。
海の家か........確かその旨を伝える回覧板が回ってきたような————
その記憶を掘り出そうとした矢先に千歌からの同調圧力(?)が飛んできた。
「才くん家にも回覧板で届いてるでしょ?」
「さぁ.....どうだったかな?」
「届いてたぞ。」
「虎太郎、マジ.......?」
「お前受け取った瞬間に興味なさそうに押し入れに入れただろ。その後俺がちゃんと見て回したんだよ。」
「あぁ〜そうだったな(惚け)」
「私の家にも届いてたわ。多分ダイヤさんの家に回覧板がまだ回ってないのかも........」
「俺のせいか!?」
「お前以外に誰がいるんだよ————」
いやゲーム中に回覧板なんか回ってきたら普通そうするだろ!!逆にすぐさま動く奴らがバカ真面目って話で................
「そんな!これではこの特訓はどうするんですの!?」
「残念ながらそのスケジュールでは.........」
「時間的にも不可能であります.........」
「じゃあ、昼はその海の家を手伝って、練習は涼しいmorning and eveningにするっていうのはどう?」
「賛成ずら!」
「しかしそれでは練習時間は..........」
「そうだな......そんなカツカツの予定うまくいくか......?」
ナイスな鞠莉の提案についつい水を差してしまった。これ他の団体でやったら間違いなく疎まれるだろうな.............しかし事実は事実。
こんな予定は何か想定外のことがあれば潰れてしまう。何か対策を立てなければ....................
すると千歌が再び妙案を思いつく。今度は言い逃れの妙案でなく、正真正銘の前向きな妙案みたいだ。
「じゃあ夏休みだし、ウチで合宿にしない?」
「「「「「「「合宿?」」」」」」」」
「そうか..........確かに千歌の家なら目の前が海だしな。俺たちのホテルより合宿向きかもな。」
「でもこんなにみんなで押しかけて大丈夫ずら?」
「何とかなるよ!..........多分!」
この流れだと合宿実施は確実だろう。別にそのことに反対の余地は俺にはない。
しかし俺たちライダーと3年生には下級生達に隠している秘密がある。うっかり口を滑らせてしまったり、第一その話題が出るたびに3年生には暗い思いをさせなくてはならない。それがストレスとなって——————いや、もっとポジティブに考えよう。ひょっとすればこの合宿で心身共に休め、少しでも《《忘れてくれればいい》》。
アイツらが気に病むことはしなくていい————俺だけの問題もあるのだから。
「おーい、才くーん!」
「え?お、千歌どうした?」
「だから合宿どうかなって。」
「あぁ.......俺が答えるまでもねぇよ。やろうぜ、合宿。」
「よし!じゃあ決まり!」
「では明日の4時に海の家に集合ということで。」
「ダイヤさんそれなら明後日からでもいいんじゃ........」
「何言ってるんですの、魁さん。無論《《午前》》4時ですわよ!」
「「「「「「はぁぁぁぁ!!?!?」」」」」」
朝4時だと............!?
いや冗談だろ—————いやマジか.............俺とか花丸はともかく本当にみんな来るのか?
熱いのはいいけど熱中症にはノーサンキューだよ...........
——————————※——————————
「ヤッホー!」
「まっぶし〜!!」
「foooo!」
昨日と負けず劣らず猛暑の今日。千歌と曜を先頭に鞠莉・ルビィ・果南・魁は上に羽織っていたラッシュガードを脱いで水着へと衣替えて海へと飛び込んだ。
現在の時刻はちょうど昼前だが、ルビィはプカプカ浮き輪でくつろぎ、そこを曜はそのルビィにちょっかいを出して、浮き輪から落とさせ、千歌は鞠莉にビーチボールをぶつけられ、果南は波に乗り、魁は多彩な泳ぎを披露して............
一方で善子はうつ伏せで、花丸は体育座りでくつろいでいる。そして梨子は海を情景として捉えるように眺め、ダイヤはこの状況を「やれやれ」という眼差しで観望している。
「結局遊んでばかりですわね......!」
「そうなるのが関の山なんだよ。特に高校生じゃ。」
「朝4時に来たらマル以外誰もいなかったずら............」
「あったりまえよ。無理に決まってるじゃない。」
「いや...........俺も居たけど。」
「あれ?そうだったの?」
某スクールアイドルのゲームを海水浴場の階段で夜通ししてたんだが.........気づかれなかったのか。いや気づかれない方がいいかもしれない——————背の高い男性が海岸沿いで夜通しでスマホいじりなんて不審者確定じゃねぇか。
だから声高には主張しないでおこう—————
そう決意を固めた矢先、魁が海からこちらの砂浜の方へと駆け寄ってきた。
「才、そんな所でタラタラやってないで行くぞ。」
「あ?」
「淡島まで水泳対決だって言ってんだ。積年の決着ここでつけてやる。」
「お、いいけど.......また煽られて終わりじゃねぇか?」
「今年こそは........絶対に勝つ!お前に勝って————俺は水泳の王になる!!」
「仕様がないが.......やってやるよ。でも水泳の王は無理じゃね?」
「え?」
「だって竜介先生が見えないところまで泳いで行ったからな。もう富士川あたりかな..........?」
「(チーン)」
竜介先生の持っている腕時計型のGPSが差しているからな。ここから富士川は道のり30キロは離れている———————つまり駿河湾を横断してたどり着いているということだ。
化け物じみた体力と肉体力はあの筋肉を見ればわかるが......しかし、そこまでたどり着く精神力もえげつないものだ。
「まぁ.....競争はまた今度でいいや。」
「おう........そういやダイヤ、結局練習はどうするんだ?」
「ま、まぁ、練習は後からやるとして今は楽しみましょう?」
まぁ.......そうなるわな。最終的には————
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「おや?その海の家というのはですの?」
「「「————————」」」
「ここにそのような施設は見当たりませんが..........」
「ダイヤ————」
「現実を見るずら。」
「うぐっ...........」
「ボロボロだよ........」
ルビィの言う通り、とてもじゃないがこれが海の家とは名乗ってはいけない—————潮騒の廃屋。そう呼ぶにふさわしいボロ家。
しかしこれは自治会の責任じゃないか?俺たちピッチピチの学生————特にAqoursの美男・美少女を放り込んで、一儲けしようという算段じゃないだろうな?
「全く安直な考えだ。JKの色目を使おうとするとは、オジ様たちの養殖場か?自治会は.............」
「何言ってるの才?」
「そういう発言はやめた方がいいんじゃ————」
果南と梨子が困り眉で俺を諭す。
ところでみんなは海の家の隣へと視線が誘導される。開口一番に躍り出たのは曜だった。
「それに比べて隣は..........人がいっぱい—————」
「都会ずら〜!」
「あれでは勝ち目がありませんわ......!」
これを見てまぁ〜隣に勝てると思う奴は............しかしその予想とは裏腹に、鞠莉はアツさ全開で皆を鼓舞する。
「トカイの軍門に下るのデースか?私たちはラブライブの決勝を目指しているんでしょう!?あんなチャラチャラした店に負けるわけにはいかないわ!!」
「鞠莉さん—————あなたの言う通りですわ!!!!!」
「あれ?でもあそこって同じ自治会の運営じゃなかったっけ.....?」
「—————てへぺろ(๑˃̵ᴗ˂̵)」
「「えぇ............」」
果南の言葉はダイヤには聞こえなかったが...........だったらあっち側を海の家にしてこっちを潰せよ—————とみんな思っているだろう。俺もそう思っている。
強いて利点を言うならば一点集中による混雑を避けること————しかし今の時点でそれが起こっているのだから、やっぱり存在意義ないような気もするが..........仕方ない。
ここは乗せられてやるか。飲食店系ゲームで鍛えた経営と料理の腕見せてやる———————!
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